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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
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一戦目(リーナ) 107


 三人が地下へと続く階段を下って行くと、地下には控室にいた大勢の選手が予選の開始を今か今かと待ち望んでいた。


 地下には複数の戦闘場が用意されており、その上ではタキシードを着たジャッジが手にしている紙を見つめていた。ヒイロは真っ先にそちらの方へと向かっていく。その動きに合わせて周囲の選手は控室の時と同様にヒイロから距離を取る。


「リーナさん、アムリテさん。先に予選抜けが確定した選手は本選までの間に決闘場を出ることができるんですけど、どうしますか?」


「どうするって?対戦相手を選ぶのは運営なんでしょ?」


 対戦相手が運営によってきめられているのなら大まかな時間も決められているはずだ。ならば、外に出たいからという理由で早く始める事などできないように思えた。


「本選はさすがに無理ですけど、予選は数も多すぎますし、三勝さえしてしまえばいいので頼めば早く始めさせてくれるんです。運営も連戦になって疲れが溜まるから有になるわけではないってことで、認めてくれるんですよ」


「へぇー。なら、あたしはお願いするわ。杖に似た武器じゃないとどうせ負けだし、早く出れるなら一秒でも早く外の空気を吸いたいわ」


「アムリテがそうするなら、私もそうしようかな?ジャッジの人に言えばいいの?」


「あ、私が言ってきますよ。二人は戦う準備でもしておいてください」


 ヒイロは二人の意志を確認すると、ジャッジがいる戦闘場の上に上ってジャッジと話をしだした。ヒイロの話を理解したのかジャッジは頭を頷けると、ヒイロはリーナ達の元へと戻ってきた。


「では、一戦目はリーナさんからなので、そのつもりで。今から予選の相手が発表されますよ」


 ヒイロがそう言うのと同時のタイミングでジャッジがマイクの電源を付けて、テスト音声を流し始めた。


「では、これよりトーナメント予選を開始いたします。各選手は名前の呼ばれた戦闘場に上り、ジャッジが提示するくじから一枚を引いてください。その紙に書かれた武器を持って再び戦闘場に上がれば、ジャッジが開始を告げますのでそこからは決闘の始まりです。なお、決闘の時間は一試合十分までとさせていただきます。ではまず、第一戦闘場───」


 マイクで話すジャッジから次々と戦闘場の番号と対戦者の名前が呼ばれ、選手達は各々の戦闘場へと向かう。


「第六戦闘場、リーナ選手対レガロア選手」


 リーナの名前が呼ばれて、リーナは第六と書かれた戦闘場に向かう。


「リーナ、油断するんじゃないわよ。あんたなら勝てるんだから!」


「リーナさん、頑張ってください!応援してます!」


「二人ともありがとう!全力で戦ってくるよ!」


 二人の激励を受けてリーナの体に自然と力が入る。リーナが戦闘場に上がると、レガロア、対戦相手も戦闘場へと上がってきた。


 その体には鍛え抜かれた筋肉がついており、身長の頭三つ分くらいの差があった。


「では、このくじを引いてください。武器はこの部屋の壁にありますので、そこからお取り下さい」


 ジャッジがくじを二人の前へ差し出す。リーナは相手に遠慮してくじを引かないでいると、相手もくじを引く様子がなかった。


「えっと、どっちから引きます?」


「あなたからお願い。私、何でも後に動く方が得意なの」


 リーナはレガロアの見た目からは想像の付きにくい丁寧な言葉遣いに驚きながらも、くじの中に手を入れて一枚を引き抜いた。


 レガロアもその後に紙を一枚引き抜くと、書かれた武器を確認して武器が置かれている壁へと向かった。


 二人はそれぞれが指定された武器をもって戦闘場に戻ると、お互いの武器を視認した。


「この勝負、悪いけど私が貰ったわ。なんたって、槍は私の得意武器の一つなの」


 レガロアが引いた武器は当人の身長ほどもある長い槍だった。リーナはあの武器を見た瞬間、自分が引かなくてよかったと安堵した。


 そのリーナが引いたのはミサキが使っていたような、長剣だった。リーナはミサキが使っていた風景を思い出し、何とか形として使えるのではと思っていた。


「では、トーナメント予選を開始いたします。始め!」


 ジャッジが告げる開始の合図。


 リーナは槍の動きが分からないため様子を見ようと思ってやみくもに動かないことを選択したが、相手も動く気配はなかった。


「あっちも私の様子を伺ってる…?けど、向こうは槍が得意って言ってたし…」


 お互いが動かないという拮抗状態が早くも生まれるが、両者には心理面での大きな違いがあった。


 それは、開始前にレガロアが言っていた槍が得意という発言が原因だ。槍が得意、ならば動かない理由はただ相手の様子を伺っているリーナとは違って、何かの狙いがあるはずだ。


「このまま睨み合ってても時間が過ぎるだけだしね」


 リーナは相手を伺うことをやめて、一気に距離を詰めて範囲に入ったレガロアの胴体に向けて横一線の攻撃を放った。


 その攻撃をレガロアは槍を地面に突き立てて、槍の柄で受る。レガロアは槍を突き立てた反動を利用して、槍を重心として体を浮かせる。


「っな!?」


 レガロアの動きに警戒して力半分で攻撃を放っていたリーナは即座に長剣を引いて、レガロアから距離を取ろうとする。


 しかし、レガロアはその回避を許すことなく槍から飛ぶようにしてリーナへと飛び蹴りを放った。


 リーナは短剣を扱うようにして長剣の柄でその飛び蹴りを受けようとすると、目測を見誤ってしまい刀身で受けてしまった。


 その結果、レガロアの飛び蹴りの勢いを完全に殺しきることができずに戦闘場の床に背中を強打してしまう。


「リーナ選手、続行しますか?」


 倒れたリーナに向かってジャッジが駆け寄る。


「大丈夫です!」


 リーナはすぐに体を起こして立ち上がる。


「膝をつけばその時点で敗北。背中でも減点となりますので、お気をつけ下さい」


 ジャッジはそれだけを伝えると、素早く二人の間に戻って行った。リーナは手から離れていった長剣を握りなおすと、その長剣に違和感を感じた。


 あまりにも軽かったのだ。その原因はすぐにわかり、長剣の刀身が折れてしまっていたからだ。


「リーナ、だったけ?もう降参してくれないかしら?折れた剣では、何もできないでしょ?」


「……レガロアさん、ありがとうございます。これで戦いやすくなりました」


 リーナは長剣の柄を放り投げて、刀身のみになった刃を掴む。その手からは少量の血液が流れる。


「あなた、一週間くらい手が使えなくなるわよ?」


「全力でやるって言ってきちゃったので。行きます!」


 リーナは刃を握り締めると、レガロアに向かって低姿勢で走りだす。一方のレガロアは槍を握りなおして、範囲内に入ったリーナの脚部を狙って振りはらった。


「その剣で受けれるかしら!?」


「下手なのに受けようとしたから飛ばされた。力のない私ができるのは受け流すことだけ」


 リーナは自身に言い聞かせるようにつぶやくと、襲い掛かる槍に刃を沿わせて僅かな力を押し当てる。それだけで槍は狙いの脚部から逸れて行った。


「ここまで来れば終わりです」


 レガロアの懐に潜り込んだリーナは低姿勢から一気に体を起こして、レガロアの喉元に刃を持って行く。あわやレガロアの首がもげるかと思われたが、リーナは接触する直前で刃を止めた。


「勝者、リーナ選手!」


 ジャッジは素早く状況を見極めてリーナの勝利を確定させた。


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