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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
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いざこざ 106

 

 決闘場入り口でトーナメントの出場登録を済ませたリーナとアムリテは、決闘場の中にある選手控室という部屋でトーナメントの開始を待っていた。


「それにしてもすごい人数ね…。この部屋だけでも百人はいるんじゃない?」


 案内された控室は決して狭い物ではなく、むしろ広いとさえ思う部屋だったがその後に続々と選手が入ってき、今では息苦しいと思うほどだ。


「これ全員が冒険者や決闘場の選手だったりするのかしら?」


「出場費が無料ならみんな面白半分で出る人もいると思うよ?実際、私達もできたらいいなー程度の気持ちだしね」


 二人が話しているうちにも控室には続々と選手が入ってきて、部屋の隅で肩身を寄せ合わなければいけなくなるほどだった。


「ちょっと!足!足踏んでるんだけど!?」


「うっさいね!狭いんだから我慢しな!嫌なら今からでも辞退することだね!」


 身動きができなくなるほど詰まり始めた室内では、そこら中から罵声や暴言が飛び交い始めた。


 リーナとアムリテは幸いにも部屋の角にいたので未だに言い争いには巻き込まれていないが、いつ火花が降り注いでもおかしくないほどに室内の空気は悪くなっていく。


「いつ始めるのかしら…?このままじゃトーナメントどころじゃなくなるわよ」


 室内の壁に設置された時計が指す時刻はトーナメントの受付時間をすでに超えており、もう始まってもおかしくない時間だった。


「あんたら、もうちょっと詰めれないの?こっちはもう狭いんだけど?」


 部屋の隅で固まっていたリーナとアムリテに対し、大柄な選手の一人が声を掛けてきた。


「すみません…。私達も精一杯詰めてはいるんですけど…」


「はぁ!?もっと詰めれるでしょうが!?ほらほら!」


 大柄な選手はリーナに自身の体を押し当てて、無理矢理奥へ行こうとする。リーナは押し寄せるその体と壁に挟まってしまう。


「ちょっと、あんた────」


 アムリテがリーナを押す選手に向かって言葉を発しようとしたときに、室内がざわめきを起こした。それは控室に入ってきたある選手によるものだ。


 ざわめきは次第にリーナ達の方へと近づいてくる。


「あ、あんた…」


「あの、その方に用事があるのでどいてもらえませんか?」


 大柄な選手に押しつぶされそうになっているリーナには姿こそ見えないが、声だけでその人物が誰か理解できた。


「あぁ!?あんたみたいな乳臭い子どもに命令される覚えはないよ!ここは遊び場じゃないんだから、さっさと何処かに行かないと痛い目見るよ!?」


 大柄な選手はその外見を見て、脅せば消えると思ったのだろうかその人物へ腕を伸ばす。


「うっわ!?」


 声の主は伸ばされた腕を掴むと、自身の方へと引っ張った。そのおかげで、リーナは生まれた間から抜け出すことに成功する。


「リーナさん、アムリテさん私の後ろに」


 リーナとアムリテは指示に従い、助けてくれた人物の後ろへと下がる。


「この、小娘が!大人しく帰っておけば、って後悔させてやるよ!」


 大柄な選手は完全に頭に血が上った様子で、正面にいる声の主へと襲い掛かる。


「トーナメントで禁止されてるのは殺害だけなので、気を付けてくださいね」


 大柄な選手が正面から襲い掛かってきているにも関わらず、声の主は平然とした様子で注意を呼び掛ける。その後、声の主は大柄な選手の懐にもぐりこむとその体に手を当てた。


「私じゃなかったら、一生歩けない姿にされてもおかしくありませんので」


 声の主は人息を吐くと、当てた手のひらに力を込めた。それだけで大柄な選手は部屋の壁に激突し、体を痙攣させてその場に倒れた。


「リーナさん、ご無事でしたか?」


「ありがとう!ヒイロ!助かったよ!」


 リーナを助けたのは鮮やかな赤髪をした少女、ヒイロだった。


「いえ、私もお二人が登録したら迎えに行くつもりだったんですが、いつ来るのか聞きそびれてまして…。でも、参加してくれたみたいで良かったです!」


「携帯式ログハウスなんて物をゲットするチャンスなんてそうそう無いからね。誘ってくれたヒイロには感謝してるわ」


「それにしても、ヒイロって本当に何者…?皆、ヒイロから距離を取ってるし…」


 気づけば控室の中はヒイロから少しでも離れようと、選手による輪っかが作られていた。


「あ、そうでした。すみませんが、少しだけ付いてきて下さい。トーナメントが始まるまでゆっくりできる部屋があるので」


 

 ヒイロの案内で決闘場の中を歩く二人はある一室の前で足を止めた。


「ここです。中に入って下さい」


 ヒイロがドアを開けると、その部屋からは決闘場の戦闘場が一望でき、机の上には豪華なたくさんの果物が用意されていた。


「ここ、私達が入っていいの?」


「はい。私に、って用意された部屋なんですけど一人では広すぎるし、果物も食べきれませんので好きなだけ食べて下さいね」


「やったー!もうあの空間に戻らなくていいのね!」


 アムリテは部屋を見るや否や、設置されているソファに飛び乗って見るからに冷えている水をコップに移して飲み干した。


「あれでも一応、男女で分けて三つずつ部屋を用意しているんですけどね…。あ、それよりもそろそろトーナメントのルール説明が始まるみたいですよ」


 ヒイロが指さす戦闘場の上にはタキシードを着た男性が、マイク片手に立っていた。


「本日はトーナメントにお集まりいただき誠にありがとうございます!まず、広告に書かれていなかったルールを説明いたします」


 男性が話すルールは簡単に言うと、トーナメントの流れについてだった。


 まず、集まった選手の中から男女に別れて数試合を行う。そこで三勝をしたものが予選を抜けて本選へと出場できる。


 その後、男女を問わずに無作為に選ばれた選手が戦闘場の上で決闘をするというものだ。


 そして、決闘を勝ち進んだ二人で決勝戦を行い、優勝者を決めると言うものだそうだ。


「それでは、選手の方も観客の皆様も心行くまで決闘をお楽しみください」


 タキシードの男性は仰々しく頭を下げて戦闘場から退出していった。


「では、私達も予選会場に行きましょうか?」


「え?あそこでするんじゃないの?」


「戦闘場は本選だけで使うんですよ。予選は地下で行うんです。そこにも観客は来るので、アピールしておけばトーナメント終了後、チップとしてお金をもらえる時もありますよ」


「アピールって…。ま、お金がもらえるなら手くらい振っておこうかしら」



 


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