トーナメントルール 105
トーナメントルール
参加資格:不問
参加費用:無料
参加人数:無制限
ルール
出場者は決闘開始直前にジャッジが差し出す箱の中から紙を一枚取る。出場選手はその紙を公開し、紙に書かれている武器を使って決闘を行う。
指定される武器は全て決闘場が用意している物を使用し、個人が持ち込んだ武器の使用は禁止とする。なお、魔法の行使は武器や決闘場、場内にあるものを使う分には可能とする。
勝利条件は相手に負けを認めさせるか、相手の膝を地面に着かせるの二通りとする。
禁止行為
:個人での武器の持ち込み、及び使用。確認され次第当該選手の当トーナメントへの出場資格のはく奪、及び三か月間の決闘場への出入りを禁止。
:故意による対戦相手への殺害。対戦相手の死亡が確認された場合はその決闘を担当したジャッジと運営による審議を行い、必要性を認められた場合は衛兵への差し出し。
:決闘場外での出場選手への危険行為。確認され次第関係者を拘束ののち、衛兵への差し出し。その後、決闘場への出入りを禁止。
:出場者同士での八百長、及び一般観客同士での賭博行為。発見、報告され次第関係者を拘束ののち以降の決闘場への出入りを禁止。
その他 緊急事態が発生し、必要性を感じられた場合にはジャッジが主体となり、審議を行う。勝敗に関しても基本はジャッジの判定を優先するものとする。
値段の張る宿に泊まったリーナとアムリテはヒイロから渡された紙を見ていた。
二人はアムリテの強い要望により、優勝賞品である携帯式ログハウスを目当てに出場することにしていた。
「んー、これを見る限りじゃ、アムリテは相当厳しいよね?」
「そうね。使慣れてる杖はもとより、使えるのが杖じゃない可能性の方が高いし、水も持ち込んじゃダメって言われると、水矢ですら五本くらいが限界」
身体能力が比較的高いリーナは剣や盾ならば無難に扱うことができるだろうし、もしも扱い方が分からない武器を指定されたとしても最悪は素手で戦える。
しかし、魔法使いのアムリテはそうもいかない。戦いのかなめとなる杖や水が封じられてしまえば、後に残るのは毛の生えた程度しか使えない身体強化だけだった。
「でも、殺すのは禁止だし、くじで杖を引く可能性もゼロじゃないから参加はするわよ。なによりも参加だけならタダだしね」
「そうだね。もし、優勝した時の賞品はこの携帯式ログハウスっていうのでいいの?魔導車も相当高いんでしょ?」
リーナは王国で聞いていた話の中で魔導車が出ていたのを思い出す。彼らは中型の魔物を狩ることのできるほどの腕だったが、魔導車は買えないといっていた。ならば、この中で一番高価なのは魔導車だろう。
「魔導車を売って携帯式ログハウスを買うって言うのはどうなの?」
「確かに値段で言うなら魔導車だし、他の剣や盾、杖とかも一生使っても壊れないくらいいいやつなんでしょうけど、携帯式ログハウスはお金じゃ買えないのよ」
「それって、どういう事?」
「携帯式ログハウスは携帯ハウスシリーズって言われてる物の一種でね。普段はポケットに入る大きさなんだけど、ボタンを一つ押すと一軒屋並みの大きさになって中で住めるの」
リーナはアムリテの話を頭の中で想像する。
携帯式ログハウスがあれば野宿が多いリーナ達の旅はいつでもログハウスで寝泊まりすることのできる快適な旅になるだろう。
「すごいね!それがあればもう虫に刺されることも見張りを交代する必要もなくなるじゃん!」
「えぇ。すごいのよ。冒険者だけでなく、商人や旅好きの貴族なんかも喉から手が出るほど欲しがってるわ」
「貴族もなんだ?でも、魔導車よりは安いんだよね?」
「安いって言うより、値段がつけられないのよ。市場に出回らないから、お金じゃ買えないの」
「どうして?そんな便利ならいっぱい作っていっぱい売ればいいのに…」
「唯一作ることのできた制作者が寿命で死んだからよ。だから、携帯ハウスシリーズは今世界にある分でだけしかないの」
物の価格というものは需要と供給で決まる。需要が高ければ高いほど価格は高まって行き、その需要に答えようと供給すればするほど価格は下がって行く。こうして市場という者は成り立っているのだ。しかし、その供給が途絶えれば需要だけが増していき、値段は跳ね上がって行く。携帯ハウスシリーズもその一つだった。
「ま、ダメもとで頑張りましょ?リーナには期待してるけど」
「頑張れるだけ頑張ってみるよ。野宿も好きだけど、虫に刺されるのは嫌だからね」
そうして二人は寝心地の良いベッドで眠りにつき、朝食を食べてから会場となる決闘場へと向かった。