出会い 103
「身分を証明できるものはお持ちですか?」
「はい。二人分のギルドカードです」
「確認できました。お入りいただいて結構です」
例のごとく門番にギルドカードを見せてからリーナとアムリテは街に入った。
「門番にしては良い態度ね。上から来る奴ばっかりだと思ってたわ」
「だね。確認も早かったし、珍しいよね」
リーナとアムリテは珍しく低姿勢な門番の話をしながら、大通りに入る。すると、大通りの先には堂々と建てられた円形の形をしている建物があった。
「ここに来るだけで予想以上に時間かかったわね。貴族と戦ったり、蛇に噛まれたと思ったら運ばれたところが難ありだったり…」
「でも、その分だけ色んな人に会えて楽しかったなぁ。アムリテにも会えたしね!」
リーナの言葉にアムリテは赤面して、思わず顔を逸らしてしまう。
「と、とにかく決闘場に行く前に宿を取りましょ。お腹も空いてるし、ご飯も食べたいわね」
「お金には余裕もできたし、ちょっといいところに泊まろうか?」
リーナとアムリテは宿を探すために大通りを歩き出した。
大通りには様々な店が顔を連ねており、その光景は王国に似たものがある。
「すみません。これ二つください」
「あいよ。熱いから気を付けてね」
リーナは一軒の店に入り、そこの看板商品であろう肉まんというものを二つ注文した。従業員は二つの肉まんを紙で包んでからリーナへと手渡した。
「ありがとうございます。あの、ここらでいい宿ってありませんか?」
「んー、いい宿ねぇ…。貴族専用じゃないところで言えば、決闘場の奥の通りにあるリラクって宿が評判いいよ」
「リラクですね!ありがとうございました!」
従業員から宿の情報を聞き出したリーナは店の外で待っているアムリテに肉まんを渡した。肉まんからは湯気が立っており、相当に熱いことを示していた。
「熱いから気を付けてね、だって。はい」
「ありがと。はっむ。ってあっつ!?」
アムリテはリーナの忠告を気にせずに肉まんに口を付けると、悲鳴を上げて肉まんを放り投げた。
「せっかく気を付けてって言ってくれてたのに…」
リーナはアムリテが放り投げた肉まんを地面に落ちる前に掴み取ると、リュックから水を取り出してアムリテへと渡す。
アムリテは受け取った水を飲み干して、舌を外気に当てるように広げた。その舌は赤くなっており、軽いやけどを起こしているのが分かった。
「はい。今度は冷ましてから食べてね?」
「うぅ…。目の前にあるのにすぐに食べてないなんて…」
アムリテはリーナから受け取った肉まんに風を送りながら、食べても大丈夫な温度まで下げて行く。
「そういえば宿の方はどうだった?いい情報は聞けた?」
「うん。決闘場の奥にあるリラクって宿がいいみたい。貴族専用の宿もあるみたいだよ?」
リーナとアムリテは肉まんを頬張りながら決闘場の横を通る。中からは歓声が聞こえてきて、今も誰かが戦っているようだ。
「ニョルデゴートの時もそうだったけど、みんな戦いを見るのが好きなのかな?」
「ま、見てて面白くないものではないわね。ここは出場者に賭けることもできるみたいだし、ハマる人は多いんじゃないの?」
そんな会話をしながら肉まんを食べ終わったリーナがゴミをリュックに入れようと肩から外した時に、リーナを強い衝撃が襲った。
「きゃっ!?」
咄嗟の出来事にリーナが反応できないでいると、リュックが何者かに引っ張られて持ち去られてしまった。
「リーナ!?」
「アムリテ、追いかけてくるね!」
リーナは状況を瞬時に判断すると、自身のリュックを持ち去ったローブを着ている人影を全速力で追いかける。だが、冒険者をやっているリーナの足は速い物だったが、その人影は距離を離されないものの追い付くことができない。
「あっちの方がこの街を知ってるだろうし、このままじゃ…」
人影は細い路地へと入り、リーナを巻こうとする。それを見失うまいとリーナは必死に食らいつくが人影は消えてしまった。
「そんな…」
犯人を逃がしてしまったリーナは力が抜けて、お尻をついてしまう。リュックには全財産が入っていたため、リーナが呆けていると
「お、おい!やめろ!ぎゃ…」
後ろの路地から男の声がしてリーナは振り向いた。すると、そこにはリーナのリュックを奪った人影が着ていたローブを着用した者とその者の首根っこを掴みながら、もう片方の手にはリーナのリュックを持った少女がいた。
その少女はリーナよりも背が小さく、髪は太陽が届いていないにもかかわらず鮮やかな赤を纏っている髪だった。
「これ、あなたのですか?」
「あ、うん!あなたが捕まえてくれたの?」
少女はリーナへと近づき、片手に持っていたリュックをリーナへと返した。
「気を付けた方がいいですよ。この街は治安が良い方ではないので」
「ありがとう!私はリーナ、あなたは?」
リーナはリュックを受け取り、今度は奪われないようにとしっかり肩に背負った。
「私はヒイロです。では」
ヒイロはローブの男の首根っこを掴んだままその場を去ろうとする。
「ねぇ!良かったらこの街のこと、教えてくれないかな?お礼もしたいし!」
「…いいですよ。でも、先にこの男を衛兵のところに連れて行ってからでお願いします」
最近近くの本屋がつぶれてしまい、本を買うのにも遠出をしなければならなかったのですが、七月に新しい本屋ができるということでワクワクしているfeelです!
この小説をお読みいただいている方は読書以外に趣味はありますか?
私は景色を見たりするのが好きで、海や山だけでなく自然と廃墟の組み合わせなどテンションが上がってしまいます!
もう夏が近いのでテレビでは心霊系を楽しみにしています!見た後は怖くて物音に敏感になりますが、それでも見たくなってしまうのは不思議ですよね。
長々と本編に関係のない後書きでした!