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ミキタビ始めました!  作者: feel
3章 もう一つの小さな世界
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後悔と新しい道、そして生命 101


「……リーナ、カミヤたちが呼んでるわよ」


 巨大ロボットが大爆発を起こしたのちに涙を流していたリーナはアムリテ達によって発見され、転移ゲートを通ってアナザーの外へと出た。


 アナザーの周辺には木も草もないただ広大な枯れた大地が広がっており、アナザーはその大地に黒い半球体として存在していた。


「……アムリテ、これで本当に良かったのかな?」


 リーナとアムリテはカミヤ達から離れた場所におり、二人きりで話をしていた。


「ライラはカミネート、お父さんと一緒に眠ることを選んで、アイカは最初から最後まで誰かのためを考えて消えて行った…。アイカが自分のために動いたのはナオキと一緒にいたいっていう事だけだったんだ」


 二人の最後と住民の歓喜を目にしたリーナには、アイカの犠牲が正しいものだったのか分からなくなっていた。


「カミネートは多くの魂を使って、多くの人を不幸にした。それに手を貸した人たちも罪を受けるのは仕方のないことだと思うわ」


「けど、アイカとライラはカミネートに命令されて…。それに、カミネートが言っていた人を救うためって言うのも嘘じゃなかったと思うんだ」


「そうかも知れないわね。でも、だからって捕まった人たちにカミネートを笑って許せというの?中には家族が連れ去られて戻ってこなかったって人もいたのよ?」


 リーナにもアムリテの言っていることは理解できた。実際、アイカはその責任を果たすために最後まで巨大ロボットと一緒にいたのだから。


「あたしは他人のために動けるほど余裕があるわけじゃないけど、あんたが傷つけられたら傷つけたやつをそれ以上に後悔させないと許せないわ。リーナはどうなの?あたしが傷つけられた時、相手を笑って許すの?」


 今回、カミネートに害を及ぼされたのはリーナだった。だが、それがアムリテだったならばリーナはカミネート側の事情を察せるほど冷静でいただろうか。


「…無理だよ。許せないよ」


「そう。なら──────」


「───けど、それを理由にして相手を同じ目に合わせたら相手のことを大切に思っていた人は私を恨んで、結局同じことが何度も何度も繰り返されるよね?」


 思い返せば、アイカはその復讐の連鎖を断ち切るために自己犠牲という選択をしたのだ。


「その時はその時よ。失敗しない人間なんていないし、後悔しない人なんてもっといない。考えて考えて、考え抜いた末に後悔をする」


 草木の見えない大地に風が吹き、砂埃を上げて空を曇らせる。


「でもね。人間はその後悔から何かを学んで同じ失敗をしないようにと成長するの。だから、自分って言うのが見つかるまで後悔し続けなさい。あんたが悩むってことは後悔が足りないの。後悔しない生き方なんて死ぬまでに見つかればいいんだから」


 砂埃を纏っていた風は過ぎ去り、再び太陽が二人を照らす。その光にリーナは目を細めた。


「……後悔が足りない、か。うん。そうだね」


 リーナは目に入った砂埃を出すために出た涙を人差し指でそっとぬぐう。


「ありがとねアムリテ!」


「いいわよ。お姉ちゃんの受け売りだし」


「カミヤさんが呼んでるんだよね?早く行かないと怒られちゃうかも!」




 リーナとアムリテはカミヤ達の元へと駆けて行った。


「あんた達には迷惑をかけたね。すまなかった」


 カミヤは開口一番で二人に頭を下げた。その様子に二人は驚きをあげた。


「俺からも悪かったな。知らなかったとはいえ、カミネートの好きにさせていたのには責任がある。すまない」


 カミヤに続くようにしてミネトラまでもが頭を下げる。貧血が治ったわけではないのか、ミネトラの上半身はいまだにふらついていた。


「そんな!カミヤさんには助けてもらってばっかりだったし、ミネトラさんは私達を治してくれたじゃないですか!謝らないで下さい!」


「そうね。あたし達が今無事でいられるのはあんた達のおかげだわ」


 巻き込まれたとはいえ、アナザーに来たのにはその理由があったからだ。リーナとアムリテは二人に謝られる筋は無いと思った。


「そう言ってくれると助かる。お前たちはこれからどうするつもりなんだ?」


「どうって…?」


「あぁ、俺とカミヤナオキ、それと数体のロボットは近くの小さな村に行って診療所を開くつもりなんだ。もう能力は使わずに一から勉強してちゃんとした診療所をな」


 ミネトが能力を使わないようにするのは、今後ミネトラの能力を悪用する者が現れないようにするためだろう。能力を使わないで診療所を経営するには相当な努力が必要になる。


「良かったら、お前たちも来ないか?忙しくなるかどうかは分からないが、助手をしてくれると助かる」


 ミネトラの申し出にリーナは迷うことなく首を振った。


「私は最初の目標通り、メルモっていう街を目指して旅をします。診療所、頑張ってくださいね」


「あたしはリーナに付いて行くわ。お姉ちゃんに借金を返して、認めてもらえるようになるまでは魔法をもっと練習しないと」


 リーナとアムリテは荷物を担ぐ。


「そうか。怪我と病気には気を付けろよ」


「リーナ、あんたはもっと自信を持ちな。それだけであんたはもっと強くなれる。アムリテは先のことを考えるようにしな。少なくともポーションのがぶ飲みを避けることだね」


「あー、リーナ。アイカのこと、ありがとな。最後に会えなかったのは残念だったけど、一人で消えたわけじゃないならちょっとだけ安心した」


「リーナ、様!アムリテ、様!お元気デ!」


 カミヤ、ミネトラ、ナオキ、四千六百三十五番、その他の数体のロボットたちがリーナ達へと手を振る。


「あんた達も元気でね!落ち着いたらまた会いに来るわ!」


「カミヤさん!ミネトラさん!ナオキさん!えっと、四千六百三十五番さん!ありがとう!皆に出会えてよかった!またね!」


 リーナとアムリテも振られた手に返すようにして大きく手を振る。


 そうしてそれぞれがそれぞれの道へと歩き出し、草木の見えない大地に足跡が生まれて行った。


「…………」


 リーナ達のいなくなった大地にある人影が立ち尽くし、足跡を見つめる。その人影はおもむろにポケットから何かを取り出して足跡でへこんだ大地へとそれを埋めた。


「…………」


 その後、その人影はアナザーの転移ゲートをくぐって消えて行った。この大地が有名な森に代わるのは数百年後の話だ。


 これにて第三章 もう一つの小さな世界完結です!

 最後に何かを埋めた人影は一体!?

 次回からは新章が始まりますので、お付き合いいただければ幸いです!!

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