コンビネーション
街はパニックになっていた。
それも仕方ない、今までと違い人が多い。
「え、あれ何…?」
「刀…? 本物か? コスプレかなんかか?笑」
この緊迫した状況を見慣れていないからだろう、そこにいる人はパニックでその場から逃げる人、ショーかなにかだと思い込んでスマホで撮影する人でごった返していた。
「みなさん! 危ないから離れて!!」
真は必死に伝えるが、野次馬は去ろうとしない。
(これはやばい、ほんとにやばい…誰が死んでもおかしくない…)
そう思った瞬間、進が叫んだ。
「兄ちゃん! 危ない!!」
真は妖の方を見る。十分に距離をとっている。だが、目の前にその妖の爪が迫っていた。
(くっ…!)
ぎりぎりでその突きを刀で反らした。そのとき、刀身の側面で受けたことで刀が真っ二つに折れた。周りにいた野次馬がパニックになる。
「これはショーでもなんでもない! リアルだ! 死にたくなかったらさっさと逃げろ!!」
真はその野次馬に叫び、避難を促した。妖の方へ向き直る。
(こいつの爪、伸びるのか…)
「君、なかなか強いのかな? それともたまたま今まで勝ってきたのかな?」
妖が真に話しかけてきた。
「俺は強い、だから勝った、ただそれだけだ。」
「…の割には一発くらっただけで武器壊れてるけど…大丈夫?」
「大丈夫、わざとだから。お前を油断させてぼこぼこにするためにやったから」
「ああ、そうなんだ…。うっざ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
妖の表情が険しくなる。両手に爪を発現させ、真に向かって突きを繰り出す。
真は折れた刀を捨て、再び刀を発現させながら上に跳んで避ける。
「ばーか笑」
妖はもう片方の爪を空中にいる真に向かって伸ばす。
「っ! おっら…!」
空中で体を捻りながら3本のうち1本の爪を弾き、爪を踏むと、そのまま妖の元へ飛び込む。
「出すのもしまうのも早いんだよ?」
そう言うと妖はすぐに爪を元のサイズに戻し、振りかぶって飛び込む真に向かって伸ばした。
「くっそ…!!」
近くに行くほど到達まで時間が短くなるその爪をかわすが、腕と腹をかする。
「惜っしいー!」
妖が残念そうに真を見る。真は地面に着地するとすぐに距離をとり、お互いに睨み合った。
(厄介だ…。前回から接近戦に不利な戦いばかりだぞ…。)
すると、妖の周りに光が見えた。
その直後、妖に向かってくないが放たれる。
「まこっちー! ごめん、ちょっと遅かった?」
之だ。今回は之が頼りだ。
「之! 助かった、ありがとう!」
「んじゃ、もういっちょ…」
そう言い、之が2撃目を加えようとしたとき妖はその場から逃れる。
「おいおいおい! 2対1とか卑怯だなお前ら」
「それだけお前が強いって評価してあげてるってことだよ」
「まこっち、心にもないこと言ってぇ…笑」
「おい嬢ちゃん、それはどういう意味だ?」
「え、べつに?笑」
「之、怒らせるなよ。あいつ、爪が伸びて厄介だぞ。」
「大丈夫! 私に任しとけぃっ!」
之はそう言うと先ほどと同じように空中からくないを発現させ、放つ。
「それもう見たよー!!!!!」
妖は光に囲まれた場所から跳び、逃れる。
「こいつ、すばしっこいなあ、めんどくさ…」
妖は跳び、空中から突きを狙う。
真はすかさず刀では弾く。刀身の側面を滑らせ、軌道を反らす。
「君、やるなぁ」
「そんなもんかお前…」
真は強がったがぎりぎりの戦いを迫られていた。
(スピードについて行くのも厳しい…。)
「まこっち、私は遠距離でまこっちは近距離が得意だから、上手く組み合わせて戦えばきっと勝てる。」
「そうだな…お互いの得意分野で…! よし、行くぞ…!」
真は妖の元へ爪の突きに注意しつつ突撃する。後方で之が集中力を高め、妖へくないによる攻撃を行う。
妖は真に攻撃しようとするも、之の攻撃により阻まれる。その隙をついて真は妖に斬り込む。これで爪を伸ばす暇を与えない。
「あの女、厄介な…」
「おい妖! 自慢の伸びる爪が使えてないぞ?」
「お前…!!」
妖が爪を真っ直ぐに向け、伸ばす。
真はとっさにそれを避けた。
(っぶねぇ…あっ!!)
その爪は真を狙ったものではなかった。真っ直ぐ之を狙う。
「之ー!!」
すると之が何者かに突き飛ばされ、爪はその人を貫く。
「…!? かよ!!」
そこにはかよがいた。
「之、大丈夫…?」
「かよ! ありがとう、助かったよ」
不死身だとわかってはいるが、その姿は痛々しい。かよの胸に刺さった爪が抜かれると血が吹き出す。
「…っ!」
かよは痛みをこらえ、しゃがむ。ゆっくりと傷が治る。
「かよ! 大丈夫??」
「大丈夫。之、私おとりになるから2人であいつ倒して…!」
そこに駆けつけた真もその案を聞く。
「かよ、お前は大丈夫なのか?」
「大丈夫、死なないから。」
「たしかに、私たち2人でやっても今みたいに狙われたら戦いに集中できないから3人がいいかも…」
「仕方ない、やるしかない…。かよ、頼む…。」
「うん。任せて。」
そう言い残すと、かよと真は妖の元へ向かっていく。真の後ろにかよが並ぶ形で接近する。之は真の攻撃に合わせ、胸元を集中的に攻めるため集中力を高める。
妖が真の姿を確認すると、爪を伸ばし突いてくる。
「かよ!!」
そう言うと、かよは真の前に進み、その攻撃を体で受ける。
「くっ…!」
そのまま、かよは妖の爪を両手で掴み、抜けなくする。
すかさず真が刀を向け、妖へ突っ込む。
妖はもう片方の爪を振るう。
「片手の攻撃とかもう慣れてんだよ!!」
真は斬撃を斬って払いのけ、その刀を捨てると再び刀を発現させ、振りかぶる。
「おらあああああぁああぁぁぁああ!!!」
真が妖に斬り込むのと同時に、之も妖へくないを飛ばす。
妖の右腕か切り落とされ、胸元にいくつものくないが突き刺さる。
間を開けず真が服の裂け目から見えた核に向かって刀を振るう。
「いっけえええええええええええ!!!!」
真の振るった刀は核を貫き、見事に破壊した。
「くそ…」
妖はばらばらと塵となって消えていく。
もう街には人の姿はなかった。警告がきいたのだろうか。
「かよ! 大丈夫か…」
「大丈夫だって、私死なないから。そろそろ覚えて?」
「慣れねぇ…」
お互いの無事を確かめ合い、それぞれの家へと向かう。3人とも疲れ果てていた。ここまでぎりぎりの戦いは初めてだった。
進は3人の戦いを見て確信した。全員で協力すれば、きっと全ての妖を倒しきれると…。
SNSには、妖と真の姿が映された動画が出回っていた。
暗い部屋の中、1人の少年がパソコンに向かい、SNSを確認する。
「あ、へー、妖ってこんな感じなのか。胸に核があるな…。この子刀使ってるじゃん。へー、戦ってんだなぁ…。」
そんなひとりごとをぼそぼそと呟きながら、その少年はゲームを始めた。
「よくやるよ、ほんと…。」
初めて3人で協力して戦いましたね。
かよの捨て身な感じ、なかなか肝が据わってるというか…。
最後に誰か出てきましたね。今後の登場お楽しみに。