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ゼアプロディジー  作者: つんく
ー妖との戦いー
6/26

3人目

少しグロいかもしれないです。たぶん。

 週末はあっという間に過ぎ去り、平日が始まった。



 真は相変わらず眠そうに目をこすりながら朝食を食べ、学校へ向かった。



 真がついこの前負った傷は、少し痕は分かるがほとんど治っていた。傷の治りが早いのも能力に関係しているらしい。





 何事もなく授業も終わり、真は早めに部活に向かった。最近は本気で刀を振る機会があるからだろうか、竹刀を振る力加減が難しい。



 (とりあえず木刀振ってみるか…)



 そう思い、真は木刀を振る。

この前の公園での戦いを思い出す。



 (刀でもあの早さで刃こぼれする…しかもまだ8体いる…。之は自分の戦うスタイルを持ってたな。俺の戦うスタイルはやっぱり近距離で斬りつけることかな…? んー、刀を切り替えるタイミング、戦い方、いろいろ考えてみないと…これほんとに死ぬかも…。)



 気付くと木刀の持ち手が砕け、刀身部分が転がっていた。つい力が入ってしまったようだ。ヤバい、部長に殺される…。


 散らばった欠片を集め、捨てに行く。



 (早めに、部活来ててよかった…。)



 ゴミ置き場で欠片の処理をしていると、誰かに話しかけられた。部長だ。



 「あれ、真何してんの?」



 「あ、いや、べつに…」



 「なんも用ないのに来ないだろ…。てか、腕どうした…?」



 「ああ、えっと、ころんで」



 「ころんでもそこまでならんだろ笑。まあ、いいわ。今日部活は?」



 「もちろん行きますよ。」



 「今日はやめとけって。そんな傷じゃパフォーマンスも落ちる。ちゃんと治してからでいい。焦っても仕方ないだろ。」



 (え、部長こんなに優しいんだ…笑)



 「あ、はい、じゃあそうします。ありがとうございます。」



 「いいよ。俺も昔怪我したけど、そのまま意地でも部活行ってたんだ。そのせいで怪我の治りが遅くなったし、とくに練習で剣道が上達したわけでもなかった。ま、無理してもなんもいいことないよ。」



 「そんな過去が…。ご心配ありがとうございます。」





 真は大人しく帰ることにした。


 途中で進とばったり会い、今日は先に帰ることを伝えた。



 「だいぶ治ってると思うんだけどな…。なんか時間できたな…。」



 ふと、之に制服を買う約束をしていたことを思い出した。忘れても悪いし、先に買っとくか。そう思い、真は商店街へ向かった。





 まだ明るい商店街。ついこの前も行った制服屋さんに入る。之と出会った場所へ向かうと、見覚えのある制服があのときと変わらず並べられていた。



 (たしか4つとか言っちゃったな…笑)



 手を伸ばし、制服を4つ手に取ると会計を済ませた。女性物で店員に少し変な目で見られたが、真は耐え抜いた。



 (あー、キツかった…まあこれでもう大丈夫。)



 この時間は学校帰りの学生も多くいる。そこら辺の店で飲み物を買ったり、ショッピングを楽しんでいる。



 (ちょっと暇だし、散歩してみるか。)



 真はせっかく商店街まで来たついでに、普段はあまり行かない商店街の奥の方まで行ってみることにした。



 この町の商店街はよくあるアーケードで、そこを抜けるとちょっとした広場がある。休日の午後はよく人が座って休んでいるが、平日のこの日は人影がなかった。



 (ちっちゃい頃遊んでたっけ…)



 久しぶりに訪れたこともあり、真はぽつんと広場に座り、ぼーっと景色を眺める。


 ここ最近、いろいろあってばたばたしていた。こういう時間も必要だったのだろう。



 人の気配を感じ、ふと前を見ると女子高生が1人いた。



 (1人か、珍しいな。)



 女子高生は小学生の男の子に話しかけられている。弟なのだろうか、何かを話しているようだ。



 (そういや進ともよく2人で遊んでたなあ…)



 そんなことを思いながら2人の姿を見ていると、男の子の手に何かが見えた。爪だ。真はもう2度も妖と戦っている。その男の子は妖だとすぐに分かった。



 (まじか、あの男の子、妖…!? 女の子が危ない…!)



 真は荷物をその場に置き走り出そうとした、その時だった。


 妖は一瞬で女の子を斬りつけた。彼女もとっさに回避したのだろう、真っ二つという最悪の状況は逃れたようだ。



 「おい!大丈夫か…!!」



 真はそう叫びながら、女の子を抱えて後ろに跳ぶ。幸い今、この辺りに人は見当たらない。



 十分な距離をとると、彼女に話しかけた。



 「君、大丈夫か!?」



 「うん、大丈夫、かすっただけ。」



 「よかった。じゃあとりあえずここで安静に…」



 言葉を続けた瞬間、彼女はその場に倒れた。



 「おい! しっかりしろ!」



 顔を見てみると、なにか様子が変だ。とっさに息を確認すると、止まっている。脈を確認してみる。



 (え…? 死んでる…?)



 彼女の傷は左腕にかすり傷があるだけだ。制服もとくにどこか破れているわけではないらしい。



 (なんだ、なんでだ…? もしかして、かすっただけでも死ぬ…??)



 これは接近戦をする真にとってはあまりにも厳しい。原因が分からないままではむやみに接近もしにくい。真はスマホを取り出し、之に電話する。


 だが、之は出ない。真はとりあえずメッセージを残し、男の子の居場所を確認する。



 男の子はゆっくりとこちらに向かってきていた。この女の子は死んでいる…だが、傷つけさせるわけにはいかない。



 真は男の子を誘導するように、物陰から勢いよく飛び出し、刀を手に取る。


 手の汗を感じる。こいつ、怖い…。だが行くしかない。



 真は決心し、男の子のもとへ駆け出した。


 だが、いきなり接近するのは危険だと判断し、駆け出した勢いのまま刀を投げつける。



 男の子は飛んできた刀を掴み、投げ捨てる。



 (やっぱ飛び道具にはならないか…くそ…)



 いつもがむしゃらに戦う真にとって、一度も傷を負うことなく戦うのは至難の業だ。


 だが、やるしかない。すると男の子が真に話しかけてきた。



 「お兄ちゃん、刀使うんだね。もしかして僕の仲間倒したのお兄ちゃん?」



 驚き、真は一瞬止まる。その問いに強気で答える。



 「ああ、俺だよ。俺の方が強かったんだよ。」



 「そっか。今日死んでもらうから。でもお兄ちゃん勘が鋭いのかな、近付こうとしないね。その刀だと近付かないと。」



 「お前、何か小細工してるだろ。あの女の子になにしたんだ。」



 「僕の爪、毒があるんだよ。少しでもかすったら終わり。でもお兄ちゃんは近付かないと戦えないでしょ? ほら、早く来なよ。ま、今日は能力者を1人倒したから機嫌がいいんだ。だからお兄ちゃんにお願いしてあげてる。」



 「そういうことか…。ん…? 能力者を1人倒した…? 誰だよ、その能力者って…」



 真の脳裏に之の顔が浮かぶ。まだ之しか認知できていないが、誰であれ1人仲間を失うのは心が痛む…。男の子は口を開いた。



 「さっきの女の子。」



 「え…?あの子…能力者なのか…?」



 「へえ、気付いてなかったんだ。ま、残念だったね。話はここまで。さ、戦おうよお兄ちゃん。」



 (やばい…。なぜ気づかなかったんだ…。協力してたら勝てたかもしれないのに…)



 「お兄ちゃん、早くー! 来ないならこっちから行くよ??」



 そう言うと男の子が一瞬で目の前に来る。



 (やっば…!!)



 真は、(おとこのこ)が振りかざした斬撃をぎりぎりで受ける。



 「おー! やるね! ちょっと楽しめるかも」



 「楽しませねえよ…!!」



 すでに2回妖と遭遇しているからだろうか、体が少しスピードについていけるようになっていた。だが、それでもぎりぎりだった。



 「じゃあスピード上げるね? 頑張ってよ??」



 妖はそう言うと、片手に発現している爪を両腕に発現させた。その大きさは今までの妖と比べ、半分ほどの大きさだ。


 サイズが小さい分、すばしっこく、爪を刀で防ぐのに苦労する。



 (っぶねえ…。これ、斬られてても不思議じゃないくらい早い…、防ぐので精一杯だ…)



 かすり傷も許されない接近戦に、真は決定打を出せず、防御に徹していた。



 一旦その場から後ろに跳び、距離をとると刀を確認する。前の戦いよりも刃こぼれはしていない。やはり破壊力はないらしい。



 (ならこっちの破壊力で勝てるか…? どうするべきだ…?)



 「何か考え込んでるの?」



 妖が再び目の前に来ていた。真は思いっ切り斬りつける。妖は弾かれ、少し飛ばされた。


 着地すると、妖の目が怒りに満ちていた。



 「お前、こっちが優しく接してやってるのに…。こんな思いっ切りやって飛ばされたら楽しめないだろ? もっと早く、絶え間なく、斬りつけるのが楽しいだろ? なあ! そういう萎えること、すんなよ!!」



 妖は明らかに怒っている。



 (優しく? これ以上早くなったら…勝てるか分からない…。毒…、ふざけるな…)



 そのときだった。妖の周りに光が見えた。



 (…! 之か…!?)



 だが、その光の中から発現したのは真が知っているくないではなかった。丸くて大きな何かがいくつも現れた。



 「お前…! 何して…」



 妖がそう言ったのと同時に、その丸い何かが爆発した。真は慌てて距離をとる。



 (爆発した…? なんだ今の…。いや、てことは近くに能力者が)



 周りを見ると、死んだはずの女子高生が立っていた。



 妖は少しダメージを受けたようで、ふらついている。



 「お前…何しやがった!!!」



 妖は彼女に気づいていない。妖が真の方へ走り出した瞬間、その直線上に彼女が飛び入り、手を出す。先ほどと同じ光を右手にまとうと、さっきの丸い何かを右手に握りしめ、妖の胸元に押し付ける。



 「えっ…!? お前さっき…」



 「さよなら、妖くん。」



 そう言うと手の中の丸いものを爆発させた。先ほどよりもその爆発は凄まじく、妖は粉々に吹き飛ばされた。



 (やばい…なんだこの子…)



 ふと彼女を見ると、右手どころか右半身が吹き飛んでいた。辺りには肉片が散らばり、断面からは血がとてつもなく吹き出している。彼女はその場に座り込む。



 「おい…! 大丈夫か…!?」



 「あなた…能力者、だったんだね…。大丈夫だよ…。」



 そう言うと、血が吹き出す傷口がみるみる塞がり、失ったはずの右半身が元に戻っていく。



 右半身が元に戻ると、彼女は何事もなかったように真の方を見る。真は口を開いた。



 「君の能力って…」



 「うん、私不死身なんだ。不老不死ではないよ?歳はとるよ。ただ、不死身。あと、爆弾使います…。」



 「やっぱりあれは爆弾だったのか…! 素手で使えるのは君しかいないだろうね…笑。君にぴったりの武器笑」



 「かもね笑。君は刀?」



 「そう、俺は刀。だから戦うときは近付かないといけないんだ。」



 「今回は不利だったね…。助けられてよかった。私、洋野(ひろの)かよって言います。今後はきっと協力していかないとだめだよね…。よろしくね。」



 「ほんとにありがとう…。俺は御堂真(みどうまこと)って言います。こちらこそよろしく。」





 こうして、真は新たに能力者と出会った。お互いを名前で呼び合うことにした。

 

 かよというその女の子は、夜の商店街に1人で来るぐらい群れるのが好きではないらしいが、これは仕方ないと割り切っているようだ。



 そこへ遅れて之がやって来た。3人で情報を共有する。真は之へ新しく買った制服を渡す。真の制服は、珍しく破れていない。3人は揃ってその場を後にした。

前話の女子高生はこの子だったんですね。


あのときの男達はとても恐ろしい存在に見えたんでしょうね。あいつ、不死身なの…!?みたいな感じですかね。

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