商店街の夜
ズタズタになった両腕をぶら下げ、真は帰宅した。その腕を見ると、真の両親はとても悲しげな顔をした。
「真…よかった…。とにかく無事で。」
「ほんとに……。でも、今回は1人じゃ無理だったと思う。」
「…てことは、誰かに会えたのか…?」
「うん。今回はその人と2人で戦った。最初は1人で戦ってて、その後にね。」
そう言いながら両腕を見せる。
「そうか…まあ、とにかくよかった。倒せたのか…?」
「うん。けど、結局その子が1人で倒したんだよ。俺、勝てるのかな…」
ほんの少し、沈黙がリビングを包む。
「お前1人だと難しいかもしれないな。だが、今回そうだったように仲間となら成し遂げられるんじゃないか? 真はその子が1人で倒したと言ったが、ほんとにそうだったか? きっと真もその子が妖を倒すとき、どこかで貢献してたんじゃないか?」
(たしかに、そうだ。之は俺がいたから安心して攻撃に集中できたと言っていたな…。)
「そして、まだ仲間はいるはずだ。だからきっと、遭遇する妖も強くなっていくだろうが、こちら側も同じようにチームとして強くなっていくはずなんだ。大丈夫、真なら成し遂げられるよ。」
「うん。なんか、それ聞いたら少し安心した。ありがとう父さん。」
ズタズタにされた傷の出血は止まっていた。これも能力によるものらしく、ある程度の傷であれば血も早く止まるらしい。
真の体が、まだやれる、戦えと言っている、そんな気がしたー。
この町にある商店街は、夜になると治安が悪くなる。昼間に老若男女が集い、賑わう商店街は、夜になると不気味な静けさとともにあちこちでケンカが始まる。
男達が群れ、他の団体とケンカをしている。縄張り争いのようなものだ。
そんな物騒な夜の商店街に、1人だけ場違いな女の子が歩いていた。服装は制服で、とぼとぼと商店街を歩いている。
男達がケンカをしていると、彼女の存在に気付いた。
彼らはケンカをやめ、彼女が通れるよう静かに道を空けた。
この女の子は、夜の商店街では有名な女の子だ。毎晩1人で夜の街を散策している。
彼女がここまで有名になったのは、過去に商店街で起きたある出来事の影響だ。
その日、初めて彼女は商店街に現れた。その時も学校の制服を着て夜の商店街を歩いていた。
相変わらずあちこちでケンカが起こっていたが、彼女に気付くと男達が寄ってきた。
「女の子1人でこんなとこ歩くとは度胸あるなぁ笑」
「別に、あなた達に会いに来たわけじゃない。放っておいて。」
「そう言われてもなあ、こっちとしてはあんた目障りなんだよな…」
その男は、先程までケンカをしていた2つの集団の一方を取り仕切っている男らしい。取り巻きに目配せすると、取り巻き達は彼女を脅しながら殴りかかる。
彼女はその場から走り出す。男達もその後を走って追いかけた。
彼女は路地へ逃げたがそこは行き止まりだった。
男達に取り囲まれ、彼女も抵抗する。だが数で勝てるはずもない。
男達は彼女を殴り、地面にうずくまった彼女をさらに容赦なく蹴り続けた。
彼女はその場でぴくりとも動かなくなった。
男達は路地から出ると、取り仕切っている男のもとへ歩み寄る。
「あの女、どうなったんだ…?」
「ちょっとやりすぎたかもしれないです。あいつ全然動かなくなって…。」
「は…? 死んだのか…?」
「そこまで確認してないですけど、男でもあそこまでされたら…俺はやめた方がいいかもって言おうとしたんですが、もう…。」
「…。まあ、仕方ない、とりあえず死んでるのか確認してそっから考え…」
男は、その路地からとぼとぼと歩いて出てくる彼女を目にし、言葉を失った。
「おい、あいつ、だよな…? お前らが話してるのは、あの女のことだよな…?」
取り巻き達も振り返る。男達には目もくれず、彼女は反対方向へ歩き出す。
「いや、有り得ない…有り得ないですよ、あんだけ殴って蹴って、もし生きてたとしても、あんな風に歩くの普通無理ですよ…!」
「あの女…やばい…。これ以上は関わらないほうがいい…。お前ら、さっさと戻るぞ。」
男達はそこから去っていった。彼女は何事もなかったかのように商店街を後にする。
「夜空キレイ…やっぱ夜の散歩ってめっちゃいいわ…」
そう呟きながら…。
設定というか裏話
今回は商店街のお話がメインでした。
女子高生が1人で歩き回ってる…なんとも不思議な感じですね
彼女は夜の雰囲気が好きな女子高生という設定です。彼女は何者なのでしょうか…近々登場していきますのでお楽しみに…