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ゼアプロディジー  作者: つんく
ー妖との戦いー
3/26

出会い、遭遇

 真はあの日以来、妖に対してアンテナを張って生活してきた。いつ如何なるときに妖と遭遇するか分からない。すぐに戦えるように。



 だが、何も起こらなかった。いつも通りの日常が3度繰り返されただけだった。


 あのときの戦いが嘘に感じるほど真の体力も回復し、傷も治りつつあった。



 今日は週末だ。真は、週末は気分転換に出かけようと考えていた。



 「あ、そういや制服破れたから新しいの買いに行っとけって言われてたなぁ…笑」



 言われていたことを思い出し、街の中心部に出かけることにした。



 電車を乗り継いでの移動。ふとあの戦いを思い出し、辺りを気にする。


 幅広い年代の人々が席に散らばって座っている。少し警戒しつつ、真は中心部へと移動していった。





 中心部には大きな商店街がある。年配の人向けのお店が多い古きよき商店街とは異なり、若者向けのお店が多くを占めている。



 週末だということもあって、若者が多いように感じる。



 (相変わらず平和な町だなあここは…笑)



 父親から聞いたことが本当にあったとは思えないほど平和だ。



 (とりあえず制服…)



 制服の専門店がこの商店街にはある。この町に住む学生はだいたいここを使っているといっていいほど馴染みのあるお店だ。とりあえず店に入る。



 「いらっしゃいませ。」



 (えーっと、うちの高校は…と…)



 たくさんの制服が整然と並べられ、とくにデザインや人気の高い学校の制服はマネキンに着せて展示してある。うちのは女子の制服だけ展示してある。男子のは、ほんと、普通だ。



 「たしか2階だったかな…」



 広くもない店内の奥にある階段から2階へ上がる。自分の高校名を見つけた。



 (えっと、サイズはこっちだったな、てか制服結構高いな…次から気をつけよう…)



 制服を手に取り1階へ向かおうとした時、背の低い女の子が制服を取ろうとしていた。だが届いていない。



 (こういうことってほんとにあるのか笑。ま、ドラマみたいな運命とかないから、期待せずお助けしてあげよう。)



 真はその女の子のもとへ近づき、話しかけた。



 「すみません、取りましょうか?」



 「え、あ、すみません笑。めっちゃ恥ずかしい笑。」



 その子は俺の手元に高校の制服が握られていることに気付くと改まった様子で



 「あ、年上の方なんですね、すみません…」



と、謝罪した。



 「ああ、全然いいよ。というか、そういう堅苦しいの嫌いだからさっきみたいなのでいいよ。」



 「分かります! あ、それわかる…!笑」



 「うん笑。どの制服?」



 「あ、制服だった笑。えーと、あの白いシャツ3つで。」



 「3つでいいの? (み、3つ…!? 結構買うなぁ笑)」



 「うん。3つで大丈夫。」



 真は指定されたシャツを3つ引っ張り出し、女の子へ手渡す。そのとき僅かに手が触れ合った。すると、真が能力を使うときと同じように電気のような光が、お互いの手と手を一瞬だけ結んだ。



 「「えっ…!?」」



 2人は突然のことに驚き、思わず制服を落としてしまった。



 (もしかしてこの子、同じ…)



 「自分で取ります…。」



 女の子は落とした制服を拾い上げ、レジへと向かった。



 「ちょ、ちょっと待って!」



 真も慌ててその子に続いてレジへと向かう。


 真は初めて、同じように能力を持った人間と出会った。





 その女の子の名は、中瀬之(なかせゆき)というらしい。近くの中学校に通っているらしい。


中瀬さんととりあえず、お互いのことについてカフェで話すことにした。人が多く、落ち着いて話せる場所がいいらしい。



 「ふぅ…さっきのびっくりしたな…」



 「だね…あんなふうになるんだね…初めて知ったけど、やっぱこれからは協力が必要だよね。」



 「ああ、ほんと、1人だと限界感じたよ。初めてズタボロになった笑。スタミナはまだまだあったけど、体がついていくのがやっとっていうか」



 「え、もしかして御堂さんだったの? あのボロボロの塀作ったの」



 「え、まあ、確かにあれは俺です…笑」



 「1体目ってことだよね…? やっぱ始まったんだ…あの現場、翌日見にいったけど、絶対そうなんだろうなって思ったよ…はぁ…仕方ないって分かってるけどさ…なんかね…」



 「だな…ま、俺はもう覚悟決めたよ。今後誰も同じように怯えずに暮らせるようになるなら、誰か頑張らないとなって」



 「いや、ポジティブ過ぎ笑。てか、妖は話にしか聞いたことないけど、実際どうだったの?」



 「めっちゃ早い。でも俺らは身体能力も上がってるから、動きは見えたし追いつけたよ。あとは、話に聞いたとおり胸元に弱点の核があった。なんか赤い玉みたいなやつ。」



 「やっぱ情報は正しいんだね。てことはあと9体いるってことだよね…」



 「だと思うよ。あと、見た目は人間だった。でもその核は体の表面に剥き出しになってた。そいつの服が破れて初めて確認できたんだ。」



 「なるほど…。で、御堂さん…もう真でもいい? もう友達どころか同じ運命背負ってる人だし。」



 「おう、いいよ。じゃあ俺も之って呼ぼうかな。」



 「んじゃ、それで。で、真はどうやって戦ったの?」



 「どうやってって、刀で」



 「刀!? くないじゃなくて!?」



 「くない? それって投げるあの小さい剣みたいなやつ?」



 「…ってことはやっぱ能力は6つでそれぞれ違ったものってことか…。あ、私のはこんな感じ。」



 そういうと之は、真の手元にくないを発現させた。真と同じように電気のような光をまといながらくないが現れた。



 「え、触れずに出せるのか…?」



 「出せるよ? 知らなかったの?? てか刀でできるのかは知らないけど。しかも私のくないは一度にたくさん出せるんだよ笑。触れずに投げれるし。」



 「えー! 強くないかそれ!笑。俺なんかくそ真面目に手に握って戦ってたぞ?」



 「どっちが強いのかはよく分からないね笑。まあ、くないは一つ一つが小さいから同じ場所に何個も突き立てたらかなり効くとは思うけど。一つ一つだと軽傷かな。」



 「なるほどな、それぞれの得意不得意みたいなのがあるってことかな…」





 こうして真は、初めて出会った同じ能力者の之と情報交換を行った。


とくにお互いの知識に差はなかったが、真は実際に妖と戦った唯一の人間として、之は武器を触れずに操れるという新たな情報を共有した。



 そして最後に、お互いの連絡先を交換して今日は帰ることにした。思ったより長く喋っていたらしく、辺りは夕日に照らされている。



 「じゃ、そろそろ帰るか。俺はこっちだけど之は?」



 「私も同じ方向だよ。」



 どうやら途中まで同じになりそうだ。しばらく電車に揺られ、乗り換える。乗り換えも同じらしい。



 乗り換える電車を待っていると、スーツ姿の男が線路を挟んでこちらを見ている。真はその男と目が会うと、あの日戦った妖と似た雰囲気を感じた。



 (こいつ、もしかして…)



 なんとなくその可能性を感じた真は、ここで戦うのは被害が出て危険だと判断し、之とともに一度駅を出ることにした。これで追ってくれば、妖に間違いないだろう。



 2人で駅を出て、物陰から駅の出入り口をしばらく見ていると、あの男が出てきた。



 こいつは、妖だろう。被害は最小限にしたい、そう考えた真は物陰から飛び出して妖に姿を見せると、人のいない木々に囲まれた公園へ誘導した。思った通り、妖は真を追いかけてくる。



 公園に着くと、妖は隠す様子もなく、あのときの妖と同様に爪を発現させた。妖だ。


 (さあ、来いよ。今回は制服破らせねえからな…!)

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