束の間の
「じゃ、行ってきまーす。」
真は久しぶりの登校に胸を踊らせながら玄関を飛び出す。その背中を心配そうに見送る母親。
あの文化祭での戦いから、なんと2週間が経過していた。真は、気を失う経験も初めてだったがあそこまで怪我をした経験も初めてだった。その分、傷が治るまで時間がかかった。
「ま、まこっち…!!!」
真の背中越しに之の声が聞こえる。
「ゆ、之…。」
「ま、まこっち…。よかった…。みんなめっちゃ心配してたんだよ…。」
その言葉に、真の目から涙がこぼれ落ちる。
2週間程会っていないだけだが、心は正直だった。
とくに最近は、果たして生きて戦いを終えられるのかわからないほど厳しさが増してきた。
死を意識するほど、こうした日常が尊くなるものなのだろう。
久しぶりに教室へ着くと、親友の麟が駆け寄ってくる。
「ま、真…!!!! お前、焼きそば変わってやってからどこいってたんだよ…心配…したんだぞ…。」
「ごめんごめん…。まあ、こうして会えたし、それで俺は十分うれしいな…。それだけだ…。」
「…。だな…。」
お互いの存在を確認するように言葉を交わし、だんだんと普段の生活へ戻っていった。
「部活…顔出してみるか…。」
ふと部長の顔を思い出し、真は部活へ行ってみる。
床を蹴る足音が聞こえる。
(あれ…まだ部活始まる時間じゃないのに…。)
恐る恐る中を覗くと、ほとんどの部員が早出して自主練を行っていた。
そのメンバーには進もいた。
「兄ちゃん…?」
さすが弟、兄の存在に誰よりも早く気付いて近付いてくる。
「これって…。」
「ああ、これ? みんなで早出して練習しとこうって誘ったんだよ。部長に顔向けできないしね。」
部長が練習で使っていた胴や面がどこにも見当たらない。親族の方が引き取ったそうだ。
あのときを思い返すと、どうしても悔やまれる。あの距離なら助けることもできたかもしれない。だが、できなかった。
「進、きっと部長も喜んでるよ…。」
「…。ありがとう、兄ちゃん…。」
じゃあ、俺も訓練行ってくる。そう言い残し、真は部活を後にした。
被害の爪痕が残される。これ以上の被害はなんとしても避けたい…。拳に力が入る。
博物館へ着くと、なつかしい声が聞こえてきた。
「あーもー…。」
「なんでー…。」
「んー…。」
「…。」
ドアを開けると、4人と目が合う。
「おおー!! 真!!! 復活??」
「まこっち! 今日から来るの? 大丈夫??」
「大丈夫大丈夫!」
その場で軽くジャンプし、元通りだとアピールする。小野寺がその姿を見て、真に近づく。
「ほんと、よかった。あのときは大変だったんだぞ…?」
そう言うと、小野寺はあの日のことを話し始めた。
真はぴくりとも動かず、傷だらけの姿で爆睡していたそうだ。その間に協力して手当てをし、寝かせていたという。
「すみません、ご迷惑おかけして…。」
「いいんだ。生きてさえいれば、いいんだ。」
小野寺は全員の顔を見ると静かに目を閉じる。
「決めた。今日は訓練中止。親睦会でもやろう。」
お堅いイメージの小野寺から出されたまさかの提案に4人は驚きを隠せない。
この日は真おかえりというのも兼ねた親睦会を行うこととなった。
「買ってきたよー!!」
之とかよが買い出しから戻ってくる。訓練のせいもあり、だれも調理をしようとはならなかった。
テーブルを5人で囲み、親睦会が始まった。
「なんか、こういうの、新鮮ですね…。」
「だな。私たちが初めて会ってからはとくに訓練続きだったからな。」
「まあ、こういうのもたまにはいいんじゃないかなと!」
適当に買ったご飯を食べ、だらだらと喋る。真はこの景色に心が和やかになった。笑い合いながら喋るみんな。戦いはまだ終わっていないのだが、束の間のこの時間がとても癒しに感じた。
「そういえば、能力者って6人なんですよね? あと1人はどこ…?」
「たしかに…。」
「それは私も知らないな。能力もよくわからない。武器を保管している場所を見てもらえれば分かると思うんだが、武器がもうないんだ。」
「手がかり無しですね…。」
真たちはもうすでに7体、あるいは8体の妖を倒してきた。ここまで来て全員揃わないのは不思議だが、きっといつか現れるのだろうと5人は考えていた。
「あと2体…?」
「たぶんな。3体かもしれない。」
小野寺は仮説を立てていた。前回の小学生の姉弟は2人倒して初めて消えた。実は核は2人で1つだったなんていうこともあると考えているようだ。
「そういえば、2週間経ったけどみんなは訓練どう?」
「あー、前と全然変わってない…笑」
「そういえば、前の戦いで刀使ったら本物に慣れてたせいなのか使いやすく感じたけど。」
「あーそれはたしかにあったかも。」
訓練で本物を扱うまでには及んでいないが、どうやらコピーの扱いは上達しているようだ。重いものを持ったあとに持ったものが軽く感じるような感じだろう。
久しぶりの5人、まさかの親睦会に真は心が満たされた。
よし、明日からまた訓練がんばるぞ…。そう心に決め、その日は解散した。
(いやー、まこっち元気になってよかった…。)
之は心配のたねがひとつ無くなり、機嫌よく自宅へと向かっていた。コンビニで何か買って帰ろう。そう思い立ち、少し離れているがコンビニへ向かう。
「ジュースでも買って帰ろ。」
お気に入りのジュースを手に、お金を払ってコンビニを後にする。
夕方。そとはあまり人影も見当たらない。少し先におじいさんが立っている。
(認知症…?)
之は、話しかけられるとめんどくさいと思い、その老人をあまり見ないようにしながら横を通り過ぎる。
「お嬢さん…あんた…能力者だよねぇ…?」
之の足が止まる。ポケットの中にしまっている“便利なボタン”を押す。
これは小野寺が作った簡単な機械で、ボタンを押すことでその場所が他の4人に知らされる装置だ。スマホを操作するのは手間だということで作ったらしい。
之は無言のまま老人の顔を見る。
「だったら…なんでしょうか…。」
老人はにたにたと笑っている。
「いやぁ、だったらいいなぁ…なんてねぇ…。」
「じゃあ、よかったですね…。」
之は両手に計6本のくないを発現させ、構える。
「先に言っておこうお嬢さん。わしらは妖の3本指と言われ、同類の中であがめられておった。まあ、今までは運がよかったんじゃろう。その運もここまで…。」
(こいつは、ヤバイ、、誰か…早く…)
本能が危険を感じ、之の手が震えていたー
3番指…。トップ3みたいな意味合いです。




