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ゼアプロディジー  作者: つんく
ー妖との戦いー
16/26

頭と力

 (な、なんでこんなときに…!!)



 真は少しイラつきながら生徒会長に向かって言葉を発する。



 「会長!! 説明してる暇ないです! とにかくここから逃げて!!」



 生徒会長の小野寺雄二(おのでらゆうじ)は、真をちらっと見たあと、妖の姿を見る。


 すると、妖が真の頭上を飛び越え、生徒会長へ飛びかかろうとする。



 「…!!」



 とっさに真は刀を発現させ、妖の体に突き立て、斬ろうとするがかすり傷程度しか与えられない。若干の血が真にかかった。



 「会長!!!」



 妖が空中で腕を引き、殴りかかる。背中には矢が数本刺さっている。(とおる)も阻止しようとしたのだろう。



 「ぎゃああああぁあぁぁぁぁ!!!!!」



 奇声を発しながら殴る。直後、妖が繰り出した拳が逆方向に勢いよく押し戻される。



 「…え?」



 真は何が起こったのか分からなかった。妖が振り抜いたはずの拳が逆方向に弾かれている。


 妖が少し後方へさがる。生徒会長が拳を握りしめ、先ほどと同じ場所に立っていた。



 「か、会長…?」



 「私の名前は会長ではない。小野寺雄二(おのでらゆうじ)だ。そして私は、君たちの同類だ。」



 「え…」



 真は驚きを隠せず、言葉に出せない。



 「説明はこいつを(ほうむ)ってからにしよう。」



 真はやっとのことで小野寺へ言葉を発する。



 「先輩! あいつの核はみぞおち辺りにあります!!」



 「言葉に曖昧さはあるが、感謝する。」



 そう言い残すと、小野寺は妖の前に立った。



 「ふん、これが妖か…。初めて生で見た。やはりハイブリッド…両方の性質が…。」



 冷静に観察する小野寺に妖が拳を繰り出す。



 「それ、少し力任せが過ぎるな。」



 繰り出された右拳に、小野寺が同様に左拳を突き出す。



 「小野寺さん!」



 思わずかよが声をあげる。


 しかし、ぶつかり合った拳は想定外の軌道を描いた。


 妖の腕が逆方向に弾かれ、小野寺の腕が振り抜かれている。先ほども同じように(しの)いだのだろう。



 右拳を再び弾かれた妖がじっと小野寺を見る。



 「少し警戒をしていた私の気持ちをどうしてくれるんだ…妖。全くもって想定内。もはや期待外れだ。」



 「ぎりぎりギリギリギリギリ!!!」



 妖が歯ぎしりとともに不快な音を出す。



 「なんだ。音なら勝てると思ったのか…? 全くもって意味のない、エネルギーの無駄使いだな…。」



 「ぎゃああああぁあぁぁぁぁぎゃああああぁあぁぁぁぁぎゃああああぁあぁぁぁぁぎゃああああぁあぁぁぁぁ!!!!」



 妖が全身を震わせ、両手を交互に繰り出して拳を繰り出す。



 「そして頭も悪いようだ。」



 左右から来る攻撃を、小野寺は左拳のみで弾き返す。



 真はそのとき気が付いた。



 (もしかして、時間稼ぎ…? 俺たちを逃がすための…?)



 先ほどから妖の攻撃を弾いてはいるものの決定打とはなっていないことに真は気付いたのだ。



 (だけど…見捨てて逃げるなんてできない…

!!)



 そう(みずか)らに言い聞かせ、真は小野寺へ声をかける。



 「先輩! 俺も戦います!!」



 小野寺はその声に答える。



 「御堂…。その言葉には、なにか私に対して不安要素があったように感じるな」



 「否定はしません! ただ、これでは…」



 小野寺は少し笑みをこぼし、口を開く。



 「ああ、すまない。初めての戦闘だ。少し高揚しているところもある。大丈夫だ。ウォーミングアップはもうすぐ終わる。」



 「ウォーミングアップ…??」



 そう言うと小野寺が妖を睨む。



 「妖、私は準備ができた。お前はどうだ…?」



 「ぎ、ぎゃああああぁあぁ…」



 妖の奇声が小さくなる。



 「まあ良い。敵の強弱、新たな敵の出現まで考え、力を温存しておくのが普通だろう。それができないようでは、私には勝てない。」



 そう言い放つと、小野寺は深呼吸し拳を握る。



 「言い忘れていたが、私の利き腕は右だ。」



 右拳に電気のような光が現れる。



 「ぎゃああああぁあぁぁぁぁ!!」



 妖が再び小野寺に殴りかかる。それを左拳で弾き、右拳をみぞおちに向かって繰り出す。



 「戦いにも、頭は必要なんだよ。」



 小野寺の右拳が妖のみぞおちを完璧に捉え、そこに大きな穴が空く。


 遅れて周りに猛烈な衝撃が伝わり、砂が舞う。





 妖の体から吹き出た血で、海の一部が赤く染まる。妖はその場に倒れ、体が崩壊していく。



 他の能力者達はただそれを見守るしかできなかった。



 「ふう…。さて、どうしようか。」



 「ど、どうしようか…?」



 真が慌てて聞き返す。



 「まあ、やはり御堂くんは同類だったんだと確認できた。とりあえず今日は帰ろうか。続きは明日以降にでも。」



 小野寺は全員と連絡先を交換した。



 「君たち2人も能力者か。1人は中学生か。もう1人は同じ高校か。なんとも…呪われているな…。」



 「まあ、たしかにそうですね…。」



 小野寺は辺りを見渡し、他に誰もいないことを確認した。



 「こちらから連絡させてもらうよ。そのとき、皆で話をしておこう。」



 「はい。俺たちもそうしたいと思ってました。」



 「君たちに見せたいものもあるしね…。」



 小野寺は、うなずきながらそう(つぶや)いた。





夏休み初日、辺りは夕暮れから暗くなりつつあった。なんと長く、衝撃的な夏休み初日だろうか…。その場にいた全員がそう思っていた…。

「設定話」



ーどうして小野寺は真をすぐに同類と認めなかったかー



小野寺は生徒会長でとても頭がいい生徒です。常に色々なことを想定しています。


そのため、動画に残された記録だけですぐに決めつけなかったんです。俺は能力者だ!と明かすのはリスクが大きいと判断したんですね。下手すれば真が妖なんていう可能性もありますから。


ちなみに、妖と能力者、お互いを察知することはできません。透は頑張ればできますけど(前話の後書き参照)


ではなぜ、砂浜にいた妖はそこに残っていた人間を能力者だと想定し、しかも捨て身で攻撃してきたのでしょうか…。

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