呼び出し
いつもの4人で今日も元気に登校。
教室に着き、真は机に伏せた。
「まーことー!」
「…あ…?」
「最近疲れてんなあ…笑」
「そうだよ…これで元気とか言っても説得力ねぇだろ…笑」
このクラスメイトは乙幡麟という。中学校で友達になってからずっと親友だ。
高校も同じでクラスも一緒というなんとも絆が強いやつらしい。
麟という名前だが男なので、昔からよくからかわれている。
「そういや、今日全校集会あるらしいな」
「え、そうなの…? めんどくせぇー」
「学校でなんかあったらしいじゃん? その説明かなんかじゃない?」
「なるほどなー。まあ、次の日来たら壁にあんな大穴空いてたらなぁ笑」
「ほんとそれ笑。近道として学生が使う始末笑。」
ぞろぞろと全校生徒が講堂に集まる。見知った顔ぶれもちらほらいた。
麟と隣同士で座った。
「あの穴どうやって空けたんだろうな…」
麟が真に聞いてくる。
「んー、まあ人じゃムリだろうから重機とか…?」
「放課後に重機あそこまで持って行って、やったのが穴開けって笑」
「まあ…謎だな…笑。」
「それか、案外生徒の誰かが近道したくて穴空けたとか?笑」
「結局今は通れないけどな笑。」
あの大穴が空けられた場所は今、安全面を考えて柵が置かれ、通れなくなっていた。
警察が調べ、その後修復作業が行われるらしい。
「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。それでは全校集会を始めます。」
生徒会長の言葉に、全校生徒の私語が小さくなっていった。
「私は生徒会長の小野寺雄二です。本日は、本校にて起こった事件について情報をお伝えしたく、皆さんに集まっていただきました。」
生徒たちが耳を傾ける。
「警察の調査も一応行いましたが、何によって塀が破壊されたのかよくわからないようです。そして、先生が1人亡くなられたことから命の危険も考えられます。遅くまで学校に残らないようお願いします。残る場合は1人で帰らないようにしてください。」
生徒たちがぼそぼそと喋りだした。
「てことは、とくに進展なし…?」
「命の危険…。なんか実感ねえわ。」
生徒会長が再び話し出す。
「つまり、一般的な事件ではないのでは?ということです。なにか違った方法とか、少し違った事件だと推測できます。そこに進展があると言えます。」
生徒会長は続ける。
「イレギュラーだからこそ、普段より高い危機意識を持って身を守ってください。私からは以上です。」
講堂がざわつく。
「続いては先生からのお話です…。」
事件の情報に進展は特になく、いつもの全校集会が始まった。
集会の最後、生徒会長が再びマイクを握った。
「最後に、御堂真くん、生徒会室で話したいことがあります。放課後お越しください。」
(そういえば先生言ってたな…生徒会長が呼んでるって…。)
集会が終わり、生徒たちが教室へ戻っていった。
授業が終わり、真は言われたように生徒会室へ向かった。
ーコンコンー
「失礼します。」
「御堂真くんだね。どうぞ入って。」
そこには生徒会長の小野寺先輩がいた。
「まあ、そんなに緊張せずにとりあえず座って。」
「はあ…。失礼します…。」
真は示されたソファに座った。小野寺先輩が紅茶を用意し、持ってきてくれた。
「ありがとうございます。」
「いえ、呼び出したのはこちらだ、これくらいのもてなしは当たり前だろう。」
小野寺先輩と真が机を挟んで向かい合って座る。初めてこんなに近くで生徒会長を見たため、真は緊張していた。
「あの、用事というのは…。」
「そうだね、用事。」
そう言うと小野寺先輩がスマホを取り出し、画面をこちらに見せた。
「こんな動画が拡散されていてね、これはどういうことか説明して欲しかったんだ。」
スマホには以前先生に注意されたものと同じ動画が流れていた。
「これですか…。まあ、ちょっとした稽古というか、そういう感じです。」
「ふむ…稽古ねぇ…。この刀はどこで…?」
「えーと、昔どっかで買ったお土産の刀です。もちろん木製のやつ。」
生徒会長をちらっと見ると、真の目をじっと見ている。面と向かって嘘をついても暴いてやる、そんな目をしていた。
「なるほど。まあ、この動画もすこし不可思議な点が多くある。ただ、この動画の話を先生とした日に先生は亡くなっている。」
(…!! もしかして、俺が疑われてる…!?)
生徒会長は続ける。
「今朝も話したが、今イレギュラーなことが起こり、今後また人の命が危険にさらされるかもしれない。君と睨み合ってるこの男は誰だ…?」
生徒会長は動画を止め、真と向かい合っている男を指した。その男は妖だ。
「んー、なんというか、ティッシュ配りの人…?」
「ふむ…。そんな善良そうな方と睨み合ってるのか…。そしてその人に刀を向けたと…。初めてあったのに…。ふむ…。」
(あ、この人とずっと喋ってるとバレる…。)
真はそう察し、なんとか部屋を出ようとする。
「会長、今日ちょっと用事があって早く帰りたいんですが…。」
生徒会長が真をちらっと見る。
「…。そうか。では最後に聞きたいんだが、その刀はどこで…?」
(…、え、えっと…。)
真は少し考え、答える。
「家に昔からあるやつで、どこのかはよく分からないです、すみません…。」
「そうか…。さっきはどこかのお土産屋さんで買ったと言ってたから君が買ったのかと…。まあいい、手間を取らせたね。今日はありがとう。」
(あ…。まあ、言ってしまったものはしょうがない…。)
「いえいえ、紅茶ごちそうさまでした。」
真が退室した部屋で生徒会長は残りの紅茶をすすりながら、部屋の一点を見つめながらなにか考え込んでいた…。
(彼は…。)
そう思いながら、再び動画を再生する。刀を握った真が男と睨み合っている、ただそれだけの動画。
(この刀…。あるよな…。てことはやっぱり…。)
生徒会室に動画の音が響く。何度も何度も数十秒のその動画を見ながら、生徒会長はぼそぼそ呟いていた。




