放つ
「おらああああぁぁぁああ!」
真が妖へ斬り込む。
妖の爪は、3本をぴったりと合わせることでこれまでの敵よりも強固な武器となっていた。真の斬り込みが払いのけられる。
「…っ!」
思った以上に力も強い。
「…お前さぁ…。」
妖がぼそぼそと何か喋り始めた。
「お、お前さぁ…お、俺の仲間…何人も…殺しといて……この1人ぐらいでごちゃごちゃ言うなよなぁ…!!」
「うるせぇ…! 殺されて嫌ならお前が守れよ…!!!」
妖は顔をしかめる。
「お、お前ら人間は、く、腐るほどいるだろ…、だが俺らはそんなにいねぇ…わかるか」
「ああ、知ってるよ。それがどうしたんだ…」
「よ、よく何も罪悪感もなしに…い、生きられるよなぁ…??」
真は何の話をしているのかわからない。
「もぉ、お前! めんどくせぇな! そういう理屈とか並べても何も変わらねえだろ! 俺たちはお前ら妖が人を殺すから守るために戦う、それだけだ!」
「お、お、お前…、なんにも…わかってないなぁ…、これ以上話しても、無駄か…」
そういうと妖は、両手の束ねた爪をさらに一点に集め、突進してきた。
「まじか…!?」
間一髪回避したもののその威力は凄まじく、学校の塀に大きな穴を空けた。
「ちっ…、お、お前、びびりか…? 避けずに戦えよ…」
真は勝つためにどうするべきか、必死に考える。
(あの穴…、相当あの攻撃ヤバいぞ…。だが、両手が一点に集まってるから攻撃範囲は狭い…隙が大きい…!!)
再び妖が真に、同じ構えで突っ込んでくる。
「てことは、俺がやるべきは…!!」
真はギリギリで突進を避けながら妖の体を斬りつけた。威力は当然落ちるが、浅く斬ることはできる。
「か、体狙ってくる…まあ、そうか…。いつまで避けられるかな…」
再び妖は同じ構えをする。
(来る…!)
同じ要領で避けながら再び斬る。妖の服に大きく穴を開けた。真の目的は、妖の核を見つけておくことだったのだ。
「あれ…、正面にない…?」
そのパターンは初めてだった。妖の体の、だいたい胸元にあるのが今までのパターンだったが、そもそも正面に確認できない。
「あー…、も、もしかして…核探してるのか…なるほど、がんばってね…。あと、大丈夫…? き、君、怪我してるけど…」
慌てて確認すると、右太ももから血が出ていた。戦いに夢中で気がついていなかった。途端に痛みが走る。
「…っ…!! 避けたのに…」
「まあ、が、がんばってとしか…」
再び同じ攻撃を仕掛けてくる。
傷の痛みを我慢し、横に避ける。右足の靴が吹き飛ばされる。
「っぶねぇ…」
遠くに2つに斬られた靴が転がる。
「お、惜しい…」
(こいつ、楽しんでる…)
そして真は気付いていた。先ほどから攻撃の速度が徐々増している。
「まこっちー!!!」
(之…!!)
ようやく之が駆けつけた。真はなんとか耐え抜いた。
「之! あいつ、攻撃は単調だが威力と速さが凄まじい。之じゃないと速さは追いつけなくなると思う…」
そう言いつつ、真は足の怪我をアピールした。
「その怪我だと尚更厳しそうだね…。とりあえずその出血止めて! とりあえず私に任せて。」
「ありがとう…少し頼む…!」
「任せてー! 速さは得意分野だから」
そう言った瞬間、之の目の前まで妖の突進が迫っていた。
「きゃっ!!」
之は反射的にくないを両手に発現させて受け止めながら、その勢いを使って回避する。
「あぶな…笑」
くないはどちらもヒビが入り、割れた。まともに全ての力をくないで受けたら、くないごと亡きものにされていただろう。
「まこっちー! 核の位置は分かってるの?」
「いや、それが正面には見当たらないんだ。多分背面だ」
「めんどくさいからとりあえず前みたいに…」
之が妖の周りからくないを投射しようとするが、構わず突進してきて攻撃できない。
「やばい、最低2人いないとだめだ。」
「かよは来ないのか…?」
「わからない、でも能力の酷使は結構スタミナ使うから。とくにかよは、体の再生だし余計にキツいかも。」
(そういえば体調悪そうだったかもな…。)
真はとりあえず、簡単な止血を行った。
「之! とりあえず止血した! 核の位置を突き止めて、その一点だけくないで狙えば集中力も少なくて済むか?」
「一点だけならすぐできると思う!」
真は之の元へ向かった。
「俺を抱えて攻撃避けられるか?」
之は少し驚いた。
「まあ、たぶんできると思う。」
「ありがとう。避けた後、背中に核がないか確認する。」
妖が突進してくる。
「まこっち、行くよ!」
之の速さは真の想定を遥かに上回るものだった。
(これなら…!!)
真は妖の背中に刀を振るう。
服がぼろぼろになり、上半身があらわになる。
(え…?)
核がどこにもない。
「び、びっくりするじゃん…。」
妖は堂々としたまま、こちらに振り向く。
(どこだ…??こいつの…核は…)
妖の核は上半身にあると教えられていた。全身に妖の力を行き渡らせるのに、地球には重力もあるため下半身だとエネルギーを巡らせるのに効率が悪いらしい。
「…って聞いてたのに…。ない…。」
「まこっち、どうする…?」
真は少し間を置いた。
「とりあえず粉々になるまで斬るしかないんじゃ…」
「まず近づけるの…? どうしよ…」
そのときだった。どこからか光の筋が妖へ向かい、貫いた。一瞬光ったくらいで何がどこから来たのか分からなかった。
妖も対応できなかったのか、その場で立ち止まっている。そして妖が塵となって消えていく。
「え…? 核が破壊された…?」
左肩がピンポイントで吹き飛ばされた妖が消えていく。
「誰だ…? 能力者…?」
辺りを見渡しても見当たらない。すると、妖が最初に空けた穴から1人の少年が出てきた。
「穴空いてたからショートカットできたわ…笑。ウケる笑」
真と之は顔を見合わせる。
その少年は部屋着のまま外に出てきたようだった。サンダルを履き、髪は少しぼさぼさになっていた。
そのまま少年は妖の近くまで近づいていった。
「おお、ちゃんと思ったとこに打ててるじゃん。よかったよかった。」
真と之は少年の元へ向かう。真の姿を見ると少年は話しかけた。
「ああ、君は知ってるよ。SNS載ってたよね。お友達だなーって思ったよ笑」
「てことは、君も…?」
「うん、そうそう、まあ、能力者だよ。新透って言う名前ね。新でも透でも好きな方で呼んで。」
「ありがとう透、さっきは助かったよ。」
透は少し照れながら答える。
「まあ、僕は遠距離専門っていうか」
「透の能力ってなに…?? てかどうやって核の場所突き止めたの??」
之が興味津々に聞く。
「ああ、僕の能力は、いわゆる千里眼ってやつ。遠くまで結構見れるし、見ようと思えば隠れてるものも見れるよ。」
「なるほど…。だから分かったんだ。」
「そゆこと。で、武器は弓矢。」
そう言うと透は2つの弓を発現させた。サイズが全く違い、片方はよく見るサイズのものでもう一方はやたらにでかい。
「それ何が違うの…?」
「さっき使ったのは普通のサイズで、こっちのでかいのはめちゃめちゃな威力らしいけど、両手足で引っ張らないと打てないぐらい弦がかたいんだよ…。」
「え…普通の弓でさっきの威力なのに…いつ使うのそれ…笑」
「ま、必要になったら使うかも…?笑」
胸を貫かれた先生はその後病院に運ばれたが、為す術もなく亡くなったそうだ。先生は一般人に初めて出た被害者となった。即死だったようで、苦しまず亡くなったことは幸いだった。
こうして出会った新しい能力者、新透。かよがそのときいなかったため、真は日を改めて4人で話をすることにしたのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
あらた(笑)な仲間が登場しましたね。
だんだんと妖もイレギュラーなやつが増えてきました。妖にとってもイレギュラーな能力者が増えてきましたね。
能力者はあと2人…!敵はあと…。




