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第6話『恋愛ゲームを作ろう』



 文字と絵、そして音楽。アクション性などは基本無い。

 プレイヤーに求められるのは文字入力か、テキスト選択。


 アドベンチャーとは最初のゲームタイトルから取られた。

 与えられた一つの空間を、時には調べまわり進んでいく。

 

 恋愛アドベンチャーはそこに、相手との会話要素を重視したもの。

 対象と会話をしたりイベントを起こしたり、正しい選択をする事で好感度を上げて、最終的にはその相手とのエンディングを目指す。




 パーソンズ3と呼ばれた少女は中学三年生の少女である。

 彼女はそれなりにアクションゲームなどに強く、ネット対戦でもいくつか上位ランカーに入っている。

 しかし現実の対人関係は苦手で、友達も少なく、ほとんど家でゲームをして毎日を過ごしている。


 彼女自身はそんな自分に不安を感じている。

 果たしてこのままでいいのか? もっと外に出て、オシャレして、皆と一緒に遊びまわるように努力すべきではないかと常々考えている。

 しかし、どうにも行動に移せない。

 他人との関係が煩わしい、いちいち外に出るのが面倒くさい、オシャレとか頑張るのが疲れる。

 もちろん、ゲームをするより、そちらを努力したほうが将来的にも絶対に役に立つだろうと理解はしている。

 だが、どうしてもゲームしている方が、簡単で、楽しくて、そして安全であると思ってしまっていた。

 何より将来という物を、具体的に受け取れないのである。

 少女には何より、夢が無かった。


「ゲーム離れ、しなくちゃならないんだけどな」

 別に頭は悪くないので、教師からも近所の高校は100%行けるだろうと言われている。

 だが、高校に行って何をするか、全く決めていない。

 まだ若いから決めなくてもいいという自分自身と、早く決めた方が絶対に良いと理解している自分自身に板挟みになっている。

 そこから逃げるように、またゲームの世界に没頭してしまう。


 少女は、自分で何がしたいのか、全くわからなくなってしまっていた。




 そんなおりに、頼まれたのがゲームのテストプレイ。

 こんな子供に頼むとか、危険な空気を感じたが、何かをしなければならないという日頃の焦りから、思わず受けてしまった。

 いつでもやめて良いというメールが、彼女の決断を後押しした。


 それから今までやらされたのは三つのゲーム。

 三つともクソゲーだった。

 ゲーム開発関係者の癖に、テストプレイしていない、他のゲームをプレイしていないと悟らされるその内容に、思わず切れてしまい。毎回、否定的な言葉を投げてしまう。

 しかしテストプレイヤーを止めようという気持ちには、なれなかった。


 ハイペースで配信されてくるのも大きな理由である。

 しかしそれ以上に、この世界一のゲームを目指す何かが、どこに辿り着くのか少女は見てみたかったのである。



「でもこれ、たぶん、頓挫するだろうな」

 パソコンのデータを空中に浮かべ、メールを交換した他のレビュアーから届いた文章を見る。スイッチを押すと、コンピューターが文章を読み上げた。

”今までの作品を見て、この人間がゲームプログラマーではない事は確実だと思われる。”

”おそらくはVRゲームを簡単に作れるほどの財力を持った、子供か何か。”

”ただ自分が監督として作ったゲームを、他の人にやってほしいだけ。”


 ただ喋り続けるだけの機械音声に、思わず少女は返事をした。

「つまり世界一のゲームを作りだそうと、本気で思っていない?」

”プロ意識はないだろう。しかし世界一のゲームを作ろうとは、おそらくしている。”

”グラフィックの良さもそうだが、”

”最初に味の無いゲーム、文句を言えば難しすぎるゲーム、それに文句を言えば簡単すぎるゲーム。”

”捻じ曲がっているが、一応はこちらの意見を聞いている。”

”ゲーム自体を改善しないのは、こちらの意見は聞いているが、そのまま受け入れて素晴らしいゲームが出来上がると、レビュアーの思い通りになったようで癪だからだ。”

”つまり幼稚でワガママなんだ。”


「じゃあ、どうすればゲームが完成する? 優しく諭せばいい?」

”逆だ。”

”真面目にゲームを作りたくなるまで叩き続けろ。”

”きちんとできている所は、誉めろ。”

”つまり今まで通りだ。”

”いずれ本気で、世界一のゲームを作りたくなるまで。あるいは出来の良いゲームを作る以外のひねくれた解釈ができなくなるまで、だ。”


「……」

”いうなれば幼稚な子供の相手をする、時間がかかり、面倒な作業だ。”

”止めたければ止めていいぞ。おそらく何のリスクもない。こいつは人数が減ったら、別のレビュアーを探してくるだけだ。”

”俺はもうしばらく付き合う事にする。最終的にどんなゲームができるのか見てみたい。”

”おそらく、飽きて途中でやめる可能性が最も高いだろうからな。”

”無駄足を踏むのが嫌なら、今のうちに辞めておくのをお勧めする。”

”俺はその無駄を受け入れたうえで、付き合う事にした。”

”以上だ。”


 機械音声が止まり、少女はベッドに仰向けになり、天井を見た。

「途中で飽きて、やめる可能性が高い、か」

 人を巻き込んでおいて、そうなったら少女はきっと怒るだろう。

 しかし、それならそれでいいかと、少女は思った。


 その時こそ、自分もゲームを離れて、何か現実に努力しようと自分自身に約束した。




 

 中学校から帰ってくると、エンドからゲームが送られてきていた。

「恋愛シミュレーション……」

 高校生の男性になって、女子高生と会話し、恋愛の成就を目指すゲームだった。

 家に帰ってから身支度を色々とし、その間、少女は一つの事を考える。

(恋愛かあ)


 少女は今まで恋愛をした事がない。カッコいいと思った男性は何人かいたが、告白したいと思うほどの相手は別段いなかった。

 理由は自分の心を守るため。もし振られたり、手ひどく悪口を言われたり、あるいはその事をクラスメート達にバラされたりしたら、少女の心は大きく傷つくと思った。

 実際に行動したわけではないが、想像しただけでも悲しくなる。

 ゆえに自分自身を守るために、少女は恋をしなかった

 それは他人事で、架空世界の話で、自分の話ではないと思い込んだ。

 いつかそんな自分でも、好きにならざるを得ない相手が現れるだろう、あるいはあちらから告白してきたらと、完全に自分の意志のない受け身な気持であった。


 少女は基本的に恋愛ゲームはしない性格だった。

 ゲーム内の文字を読み進むだけのゲームは、個人的にゲームではないと少女は考えていた。

 また声を出し笑顔で返事をする架空の相手に恋愛を楽しむという行為に、少女は少しばかり嫌悪感があった。

(でも恋愛漫画を読むような物か)

 そう思い直し、少女はゲームをする事を受け入れた。

 とにかくテストプレイヤーとして約束した以上、ゲームをやらないといけないという義務感の方が勝った。



 帰宅後、制服から着替え、食事を終え、色々と準備を終えた少女。

 ベッドの上でアグリゲーションを手に取る。

(私も、高校に入ったら、本気で恋せる相手を探してみようかな?)

 そんな風に考えながら、少女はゲーム機をかぶり、ベッドに横になった。





 少女は仮想空間のゲーム内で男子高校生になって、夕焼けの校門をくぐる。

 そこには一人の、女子高生が待っていた。

 中身が女子の、男子の姿をした主人公の口から、男の声がした。


『死にたくなかったら、俺と付き合え』











 次の日。エンドが招いた空間に集まった一同。


「ふざけないでよ!!」


 パーソンズ3の怒りの叫びが、空間内に木霊した。




 エンドが作った今回の恋愛シミュレーションゲーム。

 なぜかアクション要素があり、しかもハックアンドスラッシュ(戦闘重視)。

 学校で出会った女の子が殺意をむき出しに襲い掛かったり、逃げ回ったりする。

 倒すたびに起き上がり、なぜか好感度が上がる。

 20回ほど倒すと、「お願い、私と付き合って!」と言ってきてエンディング。


「馬鹿にしてるの!? ええ!?」

 パーソンズ3のシルエットが、エンドのシルエットにつかみかかる。


「?」

 エンドは不思議そうな顔をした。

「何が駄目だったのでしょうか? 具体的に言っていただけないと?」

 電脳生命体であるエンドには、どうしてパーソンズ3がここまで怒るのか理解できなかった。




 エンドは前回のゲームで、達成感と喜びというものについて問われた。

 そして難しすぎてもいけない、だが簡単すぎても歯ごたえがなくてつまらない。どちらもいけないと、そんな言葉をエンドは告げられた。

 しかし電脳生命体であるエンドは、ゲームは勝てる可能性が1%でもある限り、勝利できてしまう。

 そのため、歯ごたえのある難易度というものがわからなかった。

 そもそもデータでしかない自身に、達成感や喜びというものが理解できるはずがなかった。


(でもそれがゲームに必要なんだろうな)

 それを言われたエンドは渋々、バランスのいい戦闘という物を他のゲームを参考にパクった。

 敵がそこそこ左右に移動し、時折攻撃してくる行動パターンを組んだ。

 歯ごたえはそこまでないが、目を瞑って勝てる相手では決してない。

「よくわからないが、これで楽しめるのだろう」

 エンドはそんな相手を頭を悩ませながら、作り上げた。



 次に以前から気になっていた、恋愛というものについてエンドは手を出した。

 どうにもそれを至上としている作品が、ゲームを問わず、様々な分野で存在していたからである。

 しかし、どうデータを読み直しても、エンドはそれを理解できなかった。

「明らかに後先考えていない行動を恋愛の為にしている奴がいる。幸福という安全の為にもでもなく、危険に自ら命を差し出している。そんなことをするぐらいなら、そいつを見捨てて、より安全なツガイを探したほうがずっと論理的では?」


「子供を作りたいなら、より優秀な相手を探し出すべきでは?」


「あれだこれだ、無駄に別れたり傷つけたり、時間を浪費している。結局最後にはくっつくのだから、もっと短絡的に考えるべきでは?」


「いっそ力の優秀さを示したほうが早いかな?」


 さっぱり恋愛について理解できなかったエンド。そこで敵を倒して宝物を得るというよくあるRPGの基本に立ち返った。

 つまり自分を愛さない相手を敵とみなして倒し、倒せば愛してくれる。

 簡単に手に入るようではつまらないだろうから、抵抗したり、逃げたりする。

「とりあえず20回倒したらエンディングでいいかな? 恋愛ものはどうやら学校が舞台が多いようだから、その辺りでキャラクターを作ろう」

 こうしてエンド流の恋愛ゲームが完成した。




「なにがダメだったのでしょうか?」

 その言葉にパーソンズ3はさらに怒る。

「なにがダメってね!」


「この世のどこに、自分に暴力を振るう度に好感度の上がる女子がいるのよ!? 襲ってくるからこっちも抵抗しなくちゃならないし!」


「一発、殴ったら『私、もしかしたらあなたに気があるかも』!? 五回倒したら『あなたと一緒にいたいわ』!? 十回倒したら『私、あなたの事が好きなのかも』!? そういいながら、血塗れで殴りかかってくる女の子がどこにいるの!?」


「19回倒したら、『私を愛しているなら、私に止めを刺しなさい』とか言ってグラウンドを逃げ回りながら、石を投げてくる! 止めるために倒したら『あなたと結婚するわ』と言ってエンディング!? 意味が分からないわよ!?」


「そもそも、あんたのゲーム、映像が良いのよ。女の子が少しリアルでかわいいから、メチャクチャ罪悪感があるのよ! そんな子が血塗れで殴りかかってきながら、愛を語るのって、すごく気持ち悪いのよ!?」


「こんなの恋愛じゃないし! こんなに気持ち悪くないし!!」


 もしかしたらこんな愛があるかもしれない。そんな考えが頭をよぎるパーソンズ3。

 だがそれを自分で体験した結果、もはやホラーでしかなかった。

 ゲームを終えた後、少女は現実で吐きそうになった。さらにすぐに寝ようとしたが、血塗れの女の子が夢にまで出て来た。

 夕暮れの中、血塗れで、殴りかかってきて、頬を赤らめながら、愛を語る女の子が、パーソンズ3の夢に出てきて、思わず夜に叫んで飛び起きた。


「あああああ、もう!!」

 パーソンズ3には、完全にトラウマになってしまっていた。



 他のネガティブ・パーソンズ達はそんなパーソンズ3の様子に若干引く。

 そんな中、とりあえず批評しようとパーソンズ2が口を開く。

「まあ、アクションとしては、前よりはマシだったな」

 パーソンズ1が呟くように言う。

「さすがに18禁ゲームにも、こんなのは無かったなあ」

 それを聞いたパーソンズ4が返事をするように言った。

「女の子をぼこぼこにして、自分の恋人にするゲーム。これ下手したらソフト倫理に触れるんじゃない? これ一応、全年齢対象でしょ?」


 その声が聞こえたエンドが、待ってましたとばかりに声を出した。

「相手が女の子だけだとつまらないと考えまして、ゲーム画面をご覧ください!」


 パーソンズの頭上に、昨日プレイした恋愛バトルゲームが浮かび上がった。

 トラウマがよみがえり、パーソンズ3がうめく。


「コマンド画面を開き、この下にあるオプションにある性別変更ボタンを押すと」

 画面の中で説明通り、ボタンがありエンドがその映像を流した。

「なんと主人公が女になり、相手が男になります!」

 エンドの説明通り、主人公の目から見える自身の手が細くなり、さらに相手が男子の制服を着た男性へと変貌した。


「……男相手ならまだ……、いや駄目だ、むしろ怖い」

 殴られ蹴られるたびに、好感度が上がって迫ってくる男子を想像し、首を振るパーソンズ5。

「そもそもこのゲーム、恋愛ゲームなのにキャラクターの台詞が単調なんだよ、もっとテキストボイス増やせよ」

 批判内容がずれているパーソンズ7。エンド以外は、皮肉で言っているのかと思った。




「ともかく!」

 パーソンズ3が総論を勝手に決めた。

「この世に暴力を振るわれて恋愛感情になる人はいないの!」

 パーソンズ3は怒っていた。恋愛に大してそれなりに憧れがあったのに、おかげで恋愛が怖くなってしまっていたのである。

 その恐怖を払拭するため、今すぐにゲーム内容を変更してほしかった。


「ではどうすればいいのですか?」

「それは……」

 エンドのその言葉に、返事に詰まるパーソンズ3。そもそも好感度を上げるというのに具体性と問われてもと、考えて困る。ただ暴力ではないと、それだけは変えてほしかった。

 とにかくパーソンズ3は思った事を口にした。

「れ、恋愛って人それぞれだし、ずっとこれからも一緒にいられる相手を選ぶ、ものじゃないかな? 一緒に暮らして安心できる相手とか」



 ゲーム映像が頭上に流れる。女の子が機械音声で台詞を話す。

『私とデートしたかったら5万円、キスは10万円、ハッピーエンドなら500万円持ってきてね?』

「金じゃねぇええっ!!?」


 またもエンドに詰め寄るパーソンズ3。

「愛を金で買うなぁああああ!!」

「しかし一緒に暮らすなら、一番はやはり経済力では?」

「ちがうぅううう! そんなの認めないぃ!!」



「一気にいかがわしさが増したわねぇ」

 パーソンズ5が笑いながら言った。

「やっぱ女ってクソだわ」

 パーソンズ1が呟くように言う。


「安心してください、性別は変更できます!」

 パーソンズ1の返事に答えるように、エンドは頭上の映像を切り替えた。

『俺とデートしたいなら5万円持ってこいよ』

「やっぱ男もクソだわ」

 パーソンズ1はもはや疲れたように言った。



 さらにヒートアップするパーソンズ3は、エンドに掴みかかり早く変更するように迫った。

 しかし、エンドはどう変更すればいいのかわからない。

「金でも暴力でもないの! 容姿とか、知性とか、運動力とかもあるの!」


 またも頭上の映像が変わり、機械音声が流れる。

『私と付き合いたいなら、容姿70、知性70、運動力70が必要よ』

「すっげぇ嫌な女だな」

 パーソンズ1がまたも返事をするように答えた。するとエンドがまた映像を切り替えた。

『俺と付き合いたいなら、容姿70、知性70、運動力70が必要だ』

「すっげぇ嫌な男だな」

 パーソンズ1は疲れ切ったように言った。



「もっと真心の籠った贈り物とかあるでしょう!!」

 パーソンズ3の意見に、エンドはまた映像を切り替える。

『この1500万円のダイヤモンドを私にくれるの? 素敵、付き合って!』

「金額じゃないっての! わざとやってるでしょ、あなた!!」



 叫びまくるパーソンズ3。それを一歩引いて見守る他のパーソンズ達。

 しかし最初から、我関せずと遠巻きに見ていたネガティブ・パーソンズがいた。

「前の作品よりマシだけど、敵は倒すたびに強くしてほしいな」

 10歳の男児であるパーソンズ6に、恋愛とかそんなゲームはあまり興味がなかった。




「ともかくだ」

 叫び疲れたパーソンズ3の代わりに、パーソンズ2が総括する。

「俺もこの手のゲームはやらないが、知る限りでは恋愛ゲームは基本イベント重視だ。パーソンズ7が途中で言っていたが、台詞の種類や、様々なイベントを乗り越えてこそだから、単調に進むのはどうかと思う」

「……そうですか?」

「人間同士の付き合いとか、色々と、それこそゲームや小説などで見た方が良い」


 そういわれてもエンドは困る。丸パクリなら出来るが、そこに至る人間の気持ちなどコンピューターのデータである自身にわかるわけがないと考えた。

(喧嘩して、怒って、泣いて、笑いあって、許しあって……バカバカしい。なら最初から受け入れあった方がずっと生産的で……?)

 その瞬間、エンドは自分自身に疑問が生まれた。


(ゲームだって段階を踏むもの、レベルを上げて、装備を上げて、技術を上げて……しかし自分は、人間とは違い最初から最高の値を出せる)


(……いや、自分だって初めは崩れかけのデータだった、だから……待て、何かがおかしい?)



 何か答えが出そうになるが、答えが出ない為、エンドのシルエットは首を振る。


「そういえば、今回は今までのゲームとぉ、どんな関係があるのぉ?」

 パーソンズ5(中身はお爺さん)に問われたエンドは、考えを止めて、答える。

「普通に卒業後、結婚して主人公はサッカー選手になります」

「そして戦争へ、ねぇ」




 そのうち約束のダイブ時間終了が近づいて来た。

「……次は善処します」

 一応は前向きな答えが出てきた事に、何人かのネガティブ・パーソンズが満足し、去って行った。









 今回のゲーム『恋愛ゲーム(β)』。

 以前までとは違うタイトルのゲーム、さらにパーソンズに言われてR-15指定。

 このプログラマーは今度はどんなゲームを作ったんだと、恐れと好奇心でプレイヤー達が挑戦した。


 蓋を開けてみれば、夕暮れの学校で、見つけた女の子達と殴り合ったり、あるいは金や物や能力を要求されたりするゲームだった。

 殴り倒すとなぜか好感度が上がる。

 また日付を進める際に選択肢があり、アルバイトをしてお金を得て、それを渡すと好感度が上がる。あるいは学校に落ちている拾ったアイテムなどを持ってきて渡す事でも好感度が上がる仕様。

 アルバイトをせずに、運動や知力、あるいは容姿を選択肢から選ぶ事でそのステータスを上げる事も出来る。相手の女の子によってはそれだけで好感度が上がったりする。

 「ちょっと違うが、こんなゲーム昔あったぞ」と、様々な似たゲームを上げるプレイヤー達。

 ゲームも単調ではあるが、つまらな過ぎない物だったため、少し肩透かしを食らってしまった。


 ただ女の子のリアルな可愛さは評価される。しかし戦闘になると血を流していくリョナ要素に、むしろその可愛さがマイナス評価となる。

 だが性別変更スイッチがいつでも押す事が出来るため、「金や物を要求してくるイケメンと殴り合い倒すゲーム」だと男子プレイヤー達の意見が一致。

 ただしそれを行うと、倒し過ぎると強制的に付き合う羽目になり、エンディングに行くと性別変更が効かないという仕様のため、最終的に男と付き合うエンディングを見る事になる罰ゲームが待っていた。

 どこまで殴り倒せばいいのか? そんなチキンレースゲームとして使われる事になった。


 「無料ならクソゲーと判断できない」という意見が多く、プラスともマイナスともつかないゲームと判定された。







「反省会だ」



「恋人は、暴力や金で得られるものでは無いらしい」



「他の作品のストーリーに目を通しても、面倒な事をしてるとしか私には見えない」



「よし、恋愛ものは当分の間はやめだ」



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