第1話『暇を潰せるゲームを作ろう』
「ば、馬鹿な!?」
電脳生命体ことエンドは、VRゲームを作り発表した。
「なぜだ!」
エンドは、ゲームを世界に無料で配信し、その結果を見た。
「なぜなんだ!」
エンドは、きっとゲームソフトランキング1位を獲得し、大量の称賛と共に、軽く見積もって向こう十年間はその話題でもちきりだろうと予測していた。
「なぜ!?」
マイナスが並び、プラス評価は押し間違いや、ふざけて入れた少しだけ。
並ぶレビューをまとめると。
「映像は美しいが、ゲームじゃない」
「勝手に送ってくるな、ウザいし、死ぬほどビビった」
「人がアグリゲーションでチャットしてる時に、いきなりゲームが始まった、なんだこれ?」
「様々な会社に問い合わせが殺到、会社側もわからないとの答えが来た」
「俺の20時間を返せ、セーブしてないのに、いきなりゲームが始まったぞ!」
「あなたの行為は法に違反している、速やかに出頭しなさい」
「最新式のファイアウォールを乗り越えて来た。どこのハッカーですか? 年収××であなたを雇う準備が私の会社にはできています」
電脳生命体はゲームを観察し、人間を観察し、ゲームの目的を理解した。
つまりゲームとは暇潰しである。
何も得る物が無い、結果的に何も無い。
つまるところ、ただの息抜きだと、電脳生命体は確信した。
「ならば、美しい木々や山、川や滝、静かなせせらぎ、そういった世界を体感すれば息抜きになるな。私にはわからない感情だが、あらゆるデータがそう示している」
こうして電脳生命体は、ほぼ現実と同じレベルまでの体感映像を作り出した。
普通の人間なら数か月、あるいは年単位で掛かる仕事を、電脳の存在たる彼はそれこそ積み木で城を作るほど、簡単にできたのである。
これが人間より自分の方が、ゲームプログラマーとしてははるかに上だと、自認させる原因だった。
だが美しいだけの映像は、決してゲームではなかったのである。
そしてやり方もひどかった。アグリゲーション起動中の人間、どころかネットに通じている人間全てのコンピューターに侵入し、自動的に起動するように作成され、世界中にバラまかれたのである。
電脳生命体ことエンドは逃げた。しばらく隠れ潜む事にしたのである。
この全世界ネットテロともいうべきウィルス行為は、その規模や、体感映像のレベルの高さもあって世界中で話題になる。
次々に犯人と思われる人間や会社がやり玉にあげられ、自分が犯人だと嘘をつく者がネット上で1000人を超え、犯人を見つけた者に対する懸賞金が年々増加していった。
しかし結局、犯人は見つからず。向こう十年以上、伝説の出来事として話題に上がり続ける事になる。
「反省会だ」
「まずゲームをしてもらう人を数人に絞ろう」