この世界からの卒業 その6
イヤだよ…、茜と別れたくないよ…!!」
「うん…うん。そうだね…。茜もだよ。」
あの時、私達は別れを泣いて惜しんでいた。
永遠じゃないとしても毎日合っていた茜と会えなくなるなんて考えただけでゾッとしていた、そして現実になると今まで貯まっていたものが涙となって噴水のように吹き出す。
「でもね、出会いがあれば別れもある、そうやって人は成長していくんだよ。」
「でも…でも…!!」
「都会の大学行くって静が決めたんでしょ?そうしないと夢は叶えられないってそうあなたが決めたんでしょ?ダメだよ今さらそれをないがしろにしちゃ。」
「うん…。」
「私達はこれを機会に成長するんだ、別れはそのための一歩。ちゃんと受け入れようよ?」
「うん…。」
「まあでもこれが永遠の別れじゃないし、毎日会ってたのがたまに会えるってことに変わっただけだもん。もっと気楽に好意的に考えようよ。」
「そうだね、でも茜、これだけは言わせて。」
私は自分から茜の胸から離れた。そして涙を拭い笑顔で彼女に一言言う。
今までの全ての感謝を込めて
「茜、卒業おめでとう。」
君は心からそう思ってるのかな?
私達の最後になるかもしれない二人だけの空間に割り込むように可愛らしい声が耳に伝わる。
私と茜はその声の方向に振り向くと麦わら帽子を被った白いワンピースの女の子がにこりと笑い立っていた。
「あなた、誰なの?」
「私はイソネ、ねえ静ちゃん、あなたは本当にそう思ってるのかな?」
「!?」
イソネと名乗る少女は1回まばたきをいた一瞬のうちに手を動かせばすぐに触れる位置にまで移動をしていた。
「静、よく分からないけどこの子ヤバい!早く離れて!」
茜はそう私に叫んだ。そんなこと私だって分かってる、だけど。
「ダメ、茜!足動かそうとしても全然動かない!!」
「えっ、あっ!」
茜も自分の体を動かそうと試みるがいくらやっても石のように動かない、彼女もその時自分も身動きができないことに気づく。
怯える私をよそにイソネはすぐ目の前で微笑む。
そして自分が被っていた麦わら帽子を私の頭にポンッと乗せた。
「な…なんのマネよ…?」
私は声を震わせながら言った。
「なんか静ちゃん泣きそうだから私の帽子貸してあげるよ。ほら人間、特に君達くらいの歳の女の子は「これで涙を隠しなよ。」って言われるのが好きって聞いてさ。」
私は言葉を失った。この子はいったい何を言ってるんだろう、何を考えてるんだろう。そんなことが頭の中をグルグル駆け回る。
だけど回れば回るほど彼女が得体のしれない不気味な何かに思えてくる。
「まあそんなことはどうでもいいんだけど、あのね静ちゃんもう一度聞くよ、君は本当に思ってるのかな?」
「な…なにを…?」
「だから静ちゃんは本当にあの子に卒業しておめでとうって思ってるのなって聞いてるんだよ。」