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この世界からの卒業 その2

桜咲く暖かな春、私、早乙女静は市立桜ヶ丘高校に入学した。

高校生になれば何かが変わるかと思ったけどそんなの幻想、なんにも変わらない。

どこの学校に行っても校長先生のありがたいほど長い話は変わらない。私の高校生活は早くも退屈に染まっている。

私は今そう思ってる。だけどこの気持ち、この感情に少し違和感を感じている。

違和感というか既視感というのが正しいんだろうか?属にいうデジャヴってやつ。

初めて体験したことなのに既に体験したような気持ちになるアレ。

私は今まさにそのデジャヴってやつになってるらしい。

そんなことを考えていると左隣の子がとんとんと私の肩を叩く。


「どうしたの茜?」


私はそれに対して呼吸をするように自然にそう返した。


「おぉ~、初対面でいきなり名前呼び捨てとはやりますね~。」


「う…うん…?」


この状況に一番困惑しているのは間違いなく私。


この子の言った通り彼女とは正真正銘初対面、もちろん話したことなんてないのに私は普通に「茜」と言ってしまったかさっぱり分からない。

仮にデジャヴだとしてもそんなことあり得るのか?

私は思わず滑った口をこわばせる。


「ねえ、なんであなたが驚いてるてるの?」


そんな私に向かって不思議そうにその子は聞いてくる。


「だって…そりゃ…。」


そりゃなんかデジャヴを感じててその影響で思わず言っちゃったなんて恥ずかしくて口が裂けても言えないよ。思い出しても恥ずかしくなる…。


「まあ別に驚くことないか、名簿書いてあるし。」


そういいその子はスカートから折り畳んだ紙を出し開いて私に見せる。

そこにはクラス全員の名前が番号順に書かれていた。


「あなたもこれを見た、だから私の名前を知ってる。そうでしょ?早乙女静ちゃん。」


「う…うん…。」


私は苦し紛れにこう答える。


(そういえばそんな物渡されたって…?机の上に色んな書類が置いてあったのは知ってるけど一通り目を通した後カバンに突っ込んだから…、そういえばあったような…。

まあそんなことより今は彼女のちゃんとした名前を確かめよう。流石に「茜」なんて適当な名前を言ったままなのは良くないしちゃんと謝ろう。

左隣にいるってことは私の番号よりひとつ上っと…。)


私は名簿に書かれていた自分の名前を上に書かれた名前を確かめると目を疑う。

そこに書かれていた名前は斎藤茜…、デジャヴのせいで言ってしまった名前が彼女の名前だった…。


「お~い、どうしたの~!」


茜が再び私の肩を叩く。


「う…ううん。なんでもない。」


「静もしかして緊張 してる?初対面の私にいきなり呼び捨てで呼ぶ度胸あるのに?

あっ!静が私もこと呼び捨てで呼んだから私も静って呼ぶからね!いいでしょ?」


「う…うん…。」


彼女の勢いに押しきられ私は二つ返事で答える。


「それじゃあよろしくね、静!


「うん、よろしく茜…。」


そんな奇妙な出来事によって私に高校初めての友達ができた。





「暑い…。」


季節は少し飛んでいつもより暑い夏の日、太陽ギラギラ灼熱の日差しが容赦なくアスファルトの道を歩いている私達を襲ってくる。

吹いても吹いてもだらだらと流れくる汗が不快指数をさらに上げている。


「ねぇ~静~、制服脱いでいい~?」


「いやダメしょ、仮にも私達女の子だよ?てか女の子以前そんなことしたら痴女だよ、犯罪者だよ。」


「でもさ~、汗でブラウスが体に張りつくし、身体中ベタベタするし~。」


「しょうがないでしょ、これが夏なんだから。」


「じゃあせめてリボン外すのは?」


「それもダメ。」


「えー、なんで~。」


「うちの学校無駄に校則厳しいの知ってるでしょ?少しでも制服着崩してるのバレたらら校門前で接近よ?エアコンが効いてる教室への道がまた遠くなるわよ。」


「うん、それはイヤだ!」


「じゃあつべこべ言わずさっさと学校行こう?」


「了解です、静さん!」


入学式の出来事から私の茜は友達になった。何をやる時もどこにいるのにもずっと一緒。

まだ出会ってから数ヶ月しか経ってないのに何故かずっと、何年も前から一緒にいたようなそんな気分だ。

だからなのか彼女といる時私はずっとデジャヴを、入学式の時と同じ感覚を感じている。

今この時も。

そんなこと迷信と思って過ごしているけど多分私はこれから起こることをしってる。

私が何をすればいいかしってる、そんな気がする。



「あっ、そういえば一時間体育じゃん!」


「そうだった~!また汗かくじゃん!なんでうちの学校プールやんないのかな~?」


「そりゃ学校にプールないからじゃない?」


「そうだよ!そうなんだよ!なんで今プールがない高校なんてありますか?」


そういい杏は私の前に回り込みムッと見つめる。

彼女の顔は暑さで赤くなっていて私と同じく額から流れた汗は首筋をたどりブラウスに吸収されていく。


「それはそうと凄い汗だよ、ほら吹いてあげるから。」


私は胸ポケットからハンカチを取り出し彼女の顔に近づけようとするけど「ちょっ…ちょっと!」といい戸惑いながら手を弾く。


「なに驚いてるのよ、せっかく汗吹いてあげようとしたのに!」


「べ…別にいいよ、自分でやるから。」


いつもとは違うちょっと弱気な茜の態度に私の中の下心が刺激される。こんな彼女今逃したら次いつくるか分からない、こんな貴重な瞬間見逃ざるものかと!好奇心が沸き立てる。


「ほらほらいいからいいから~。」


私はぐいぐいと手を伸ばす。


「もうしつこいってば~!」


当然茜はその度に手を払いのける。


「なんでよ、ちょっとくらいいいでしょ?なんでそんなに嫌がるのよ~?」


「だって私沢山汗かいてるし、ちょっと臭うし…。」


「茜は全然臭くない、いい匂いだよ?だから、ね?」


「それでも嫌なの!私の数少ない女の子の心がそういうの~!」


「まあまあいいから!」


「あっ!」


そんな言い合いと小競り合いをしてるしてると茜のスカートはポケットからスマホがポロリと転げ落ちるのを私の視界がキャッチした。

その瞬間体が反射的に動いた私は一度もやったことのないスライディングするように地面にダイブする。茜のスマホは私の汗で湿ったブラウスのうまく着地をし少なくともアスファルトの地面に激突することだけは免れた。


「おお、ナイス…キャッチ?」


「いいからスマホ早く取ってくんない?ステーキみたいにこんがり焼ける前にさ…。」


「ねえ、静。」


「うん、何よ?」


「下着、透けてるよ。」


「知ってる、だから早くして。」






私は熱々のアスファルトから起き上がりパンパンと制服を叩く。

こんなこと私がやる柄じゃないのにな~と思ったけどやってしまったもんはしょうがないと素直に開き直りといきますか。


「それにしてもほんとナイスタイミングだったよ、あと少し静が遅れてたらスマホが大変なことになってたよ。ありがとね!」



「へいへい、ようこざいましたよ。おかげで私は熱々ステーキになるとこだったよ。」


「まあまあいいじゃんいいじゃん!スマホが無事だったわけだし!ほら早くしないと学校遅れるよ!」



「…。」


「あれ?どうしたの静? 」


その場で足を止めふさぎこんだように黙った私に気づき茜は心配そうに聞いてくる。


「あのさ茜、今から変なことを聞くけどいい?」



「うん…いいよ?」


「私達、前にもこんなことあったよね?」

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