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ブラック夏休み

私の夏休みも中盤に差し掛かった頃、私は別荘内の執務室で怒涛の勢いでまちづくり計画を立てている。


「お嬢様、民家エリアの建築が遅れているとの報告が」


「追加で日雇い労働者を雇って補充して、まだまだ此処に引っ越してくる人達がいるんだから今日で8割まで完成させて!」


「お嬢様、鍛冶場エリアの建築デザインをお持ちしました」


「えーと、うん。これで大体は大丈夫、あと、街灯は裏道にもちゃんと付けておいて」


「お嬢様、物見から東の森で野盗の集団を確認したとの報告が」


「はぁ~、、わかった。こっちで対処しとくから、それよりもう3時じゃん。今日の業務はここまで、みんなお疲れ」


「了解致しました!」


誰もいなくなった執務室で私の口から盛大なため息が出てくる。


「ハァ〜、もうやだ〜こんなしんどいなんて」


私は執務イスに体を預ける。この場所を開拓し始めて早一週間私はまちづくりを急ピッチで進めていた。その理由は簡単で私はあと一年半で居なくなってしまうからだ。私は、殺されてもどうでもいい。けど、ここにいるみんなは関係ない。だから、この町を私抜きでもしっかりやっていけるようにするのも私の仕事。生きてた時は、建築コンサルタントだったから大まかな指示はできるけど流石に細かいことはまだできないから万能なグレアムさんに教わりながらなんとかやれている。でも、


「3日間で1時間睡眠はやっぱりブラックよね〜」


流石に休みたい、と思う私の気持ちとは裏腹に執務室のドアが勢いよく開く。


「嬢ちゃん!今日の特訓始めるぞー!」


「了解です。先生!」


いつもの剣の特訓をするべく少し気だるい体を起こして先生と屋敷の修練場に行こうとした時、


「グイード様その事についてですが、少々お話が」


そう言って入って来たグレアムさん。なんだか厳しい顔で私の前まで来て話し始めた。


「お嬢様、突然ではありますが昨晩はいつ頃お休みになられましたか?」


(まずい、徹夜はしないってきつく言われてるのに、、どう考えてもバレるのは良くない)


「わ、わたし⁉︎えっと、じゅ、12時くらいかな」


(ほんとは、徹夜だけど)


私がそう答えると眉間にシワがよって更に厳しい表情になる。が、すぐにいつもの優しい表情に戻る。


「そうでございましたか、ならばお止めする事はありません。しっかりとお稽古に励んでください」


「う、うん。私は、大丈夫だからね」


(やった、乗り切った!)


徹夜がバレてない。そう思った時だった。


「そういえば、早朝、屋敷の使用人たちが執務室からコソコソと出てくるお嬢様を目撃しておりますが。よもや、夜通しでお仕事をしてはいませんよね」


(乗り切ってなかった……)


それからは、グレアムさん主導で話が進んで先生には今日の特訓は休ませてもらって、エレナ先生にも休むと連絡入れられて残っていた書類仕事はグレアムさん達がやってくれる事になって一時間説教されて解放された。そんなこんなで今日の仕事は無くなり一人自室でポケーとしてるけど、


「暇過ぎる……」


夕食もとって本来なら寝るところなんだろうけど、疲れているはずなのに眠れない。それなら自主練習でもしようと思い見つからないようにエレナ先生の住んでいる山の池まで行こうと準備を整えコッソリ屋敷を抜け出し山の中に入った時、異変に気付いた。突然立ってられないほどの頭痛に見舞われてしまい、


「あれ、おかしいな?目眩が、それに鼻血まで……」


そこまで言って私の意識は停電したように切れてしまった。





目元に冷たい感触、体にも何やらかけられている感触。意識がクリアになってボンヤリと意識をなくす前のことを思い出す。


(あれ、わたし倒れたんだっけ、、⁈ここ何処、私何で寝てるの)


必死に今の状況を確認しようと上にかかっていた布団を跳ね除けて周りを見渡す。知らないベットに知らない部屋。私はとりあえずベットから出ようとするものの、


「身体が、重い……」


私の身体は磁石で引っ付いたように動かないのだ。その後は、ずり落ちるようにベットを抜け出して這いながらなんとか扉の前まで来た時目の前の扉がゆっくりと開く。


「あらら、もう動けるのね。欲しい物あるなら持って行ってあげるから大人しく寝てなさい」


「エレナ、先生?」


「そうよ、ここは私の家。意識がハッキリしてるならまぁ大丈夫ね」


エレナ先生は私を抱き抱えてゆっくりベットに入れてくれた。


「サラ、何か食べる?」


「え、あっはい、じゃあ少しもらっても良いですか?」


先生はすぐに雑炊にカットフルーツを持ってきてくれた。


「どうぞ、召し上がれ」


「いただきます」


食べた雑炊は食べやすい大きさに切られたお肉や野菜味付けも丁度良くて......食べやすくにとても美味しいのだ。


「ご飯、美味しかった?」


「ふぁい、おいふぃいでふ」


「分かったから。もう少しゆっくり食べなさい」


そんなこんなでご飯も食べ終えて一息ついていると片付けを終えた先生が戻ってきてベッドに腰を下ろす。


「少しは楽になった?」


「はい、もう大丈夫なんで屋敷に戻りますね」


そう言ってベッドから出ようとした私を先生が押しとどめる。私が先生の顔に目をやると呆れたような眼をした先生は


「はぁ~まったく。寝ないで作業するのもいいけどさ、倒れたら元も子もないのよ。わかってるの?」


「……」


下を向いてだんまりを決め込んでいる私のおでこにデコピンが飛んでくる。


「イタッ!?」


顔を上げてみるとさっきとは違って明らかに起こっている表情の先生の顔があった。


「あんた何考えとん。なんぼ体力あったってそんな事してたら本当に死ぬよ」


ビクッ⁈


死ぬという単語で不意に私の体に悪寒が走り、前世の記憶が蘇る。


(そうだった、私って前世で跳ねられて死したんだった。。)


「うっぷ」


今になって倒れる前の感覚を思い出し気分が悪くなり、吐き気が込み上げてくる。前世と同じように死んでしまうのではないかという恐怖が身体中を包み込んでかる。身体中が寒くて震えが止まらない、、死んだ時の感覚がだんだんと大きく広がってくるのがわかる、寒い、苦しい、怖い、怖い怖い怖い…


ギュッ


不意に抱きしめられ相手の鼓動が聞こえてくるぐらい強く抱きしめられた。


「先、生?」


私はおそるおそる顔を上げてみるとさっきまでとは違い優しい表情の先生がいた。


「大丈夫、溜め込まないで吐き出しちゃいな。愚痴や弱音を言ってもいい、もっと泣いてもいい、生きてるんだから。無理しないで休みなさい。」


「うん……」


歯の隙間からは声が洩れ涙が出て止まらなかった。私は、身体中が暖かくなり心地よい安堵感に包まれていた。





「ん、ん〜」


目を開けると窓から木漏れ日のように淡い光が差し込み、外からは鳥のさえずりが聞こえ身体も軽くなり清々しい朝を迎えた。……あさ?


ガバッ


「ここって、、あれ⁈」


「おはよう、ぐっすりだったわね」


あの後、どうやら泣きつかれて寝てしまったらしい。時刻は、もう昼過ぎで私の仕事もキャンセルしてくれたらしい、


「あ、そうだ。言い忘れてたけど明日から私、あんたの補佐官になるからよろしくね~」


「・・・はぇ!?」


エレナ先生が私の秘書になりました。



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