私流のまちづくり②
その日の夜、私はボルダンさん達の歓迎パーティーを開いていた。会場は私の屋敷になっている場所で二階に生活スペースで一階は大広間になっていて内装はグレアムさんが見繕った調度品が置かれていて洗練された空間になっている。そんな中みんな私の選んだ料理を食べてもらっている。
「ボルダンさん、へレーナさん楽しんでいただけてますか?」
「あ、サラお嬢様此度は仕事をくださっただけでなくこのようなパーティーに御招待いただきありがとうございます」
ボルタんさん夫婦は、かしこまった態度で挨拶される。ほんとならこんなかしこまった態度はしない人じゃないから調子狂っちゃうな
「別にかしこまる必要ありませんよ。私は正直尊敬されるような人格者じゃ無いですしもっと気軽に接してください」
へレーナさんは、ポカンとした顔になったけどボルタンさんは笑い出した。
「はっはっは、サラお嬢様申し訳ございません、あなたのことを誤解しておりました。聞いていた噂とは全く違いますな」
その噂は多分あまりよろしくないものだとは思うけど改善しようとも今はおもはないかな。その後もいろんな人に挨拶周りをしたりしてパーティーも終盤になって終わりが見えてきて私はみんなから見える振り分け階段の真ん中に立って大きく息を吸う。
「皆さん、今日はこのようなパーティーに御参加いただきありがとうございます」
私がスピーチをするのを察してみんなは私のほうを見て私の言葉を待つ。
「私には目的があります。しかし、それを達成するためには時間も人でも足りません。でも、その技術を生かせて切れてないあなた達に会うことが出来ました。ここで会ったのも何かの縁、活かしきれなかったその才能を私が生かせる場所を作ります。だから、その技術を私のために使ってくれませんか?」
これは紛れもない私の本心。こんな言い方をすれば信用されないかもしれない、私は怖くなって目をつぶってしまう。罵倒が飛んでくるかもしれない、怒って暴動が起こるかもしれない、そんなことを思っているとパチパチと手をたたく音が聞こえてきた。
少し涙目になった顔を上げる。すると、みんなは笑顔で私を見ていた。その中のボルダンさんが私の前に出る。
「えっと……」
「サラお嬢様、私たち共は今まで蔑まれて生きてきたので、その人が本心を言っているかが聞いているとわかってしまうのです。しかし、昼、そして今おっしゃったあなたの言葉には裏がない。私らに適切な役割、適切な報酬を出してくれると言ってくださった。ならば私らはあなたに協力しましょう、むしろそういった下心があった方があって安心しましたよ。」
ボルダンさんが言うとみんな笑顔で頷いて同意を示してくれている。
「ありがとう、ありがとう」
私は、泣きそうになるのを何とか堪える。その後は、パーティーも終わって参加者は自分たちの部屋に帰っていった。そして遠くで鳥の鳴き声が聞こえるほかには何も聞こえない町の中。私は、自分の屋敷の外に設置されたティーテーブルので一人夜風に当たりながらお茶を飲んでいた。すると、一人近づいてくる人に気付く。そして、テーブルのランタンの灯りで近づいてくる人の顔が照らされる。
「グレアムさん?こんな夜更けにどうなさったんですか?」
そう言って見上げたグレアムさんの顔は明らかに起こっていて思わず顔が引きつる。
「お嬢さまこそ夜更かしは感心いたしませんな」
「あはは、じゃ、じゃあ おやすみなさい!」
「お嬢さま、少しお待ちください」
怒られると思ってひきつった顔で振り向くとグレアムさんはフワリと片膝をついた。頭の中が???状態の私に言葉を続ける。
「お嬢さま、あなたは今日から新たな町の領主となりました。そして、奴隷の者たちにも職を与え決して蔑まれませんでした。これはささやかなお祝いです。夜更かしもほどほどにでは……」
そう言ってグレアムさんは私に小さな袋を手渡して屋敷の中に戻っていってしまった。一人置いてかれた私は貰った袋をのぞいて中を見ると中には赤く光っている宝石が入っていた。
「わぁ、きれい」
さっそく宝石を手に取ってみると、ほんのりと温かいぬくもりを感じる。
「あったかい」
貰ったのは火の加護が付いた真っ赤な宝石で確か炎で身を守ってくれる守護アイテムだったような、、明日お礼を言おうと思いながら屋敷の中に帰ろうとすると門のほうから門番の人と誰かがもめている声が聞こえて気になって寄ってみる。
「だから、俺はあのお嬢ちゃんに用事があるんだよ!」
「なら、日を改めて出直してください」
門の方をのぞいてみると門番さんと誰かがが言い争っていた。
「だいたい、こんな夜更けにお嬢さまがお会いになるわけがないだろう。かえれかえれ」
「待って」
私は声をかけて門のほうに寄ってグイードさんの前に立つ。
「こんばんわ、私に御用ですか?」
「お嬢さま!?」
「この人は私のお客さんです。グイードさん立ち話もなんですのでこちらへ」
私はグイードさんをさっきまでお茶をしていたテーブルまで案内する。
「こちらにどうぞ」
グイードさんは案内した椅子に座って私は反対側に座る。
「こんばんわ。とりあえずお茶飲みます?」
「いや、いい。単刀直入にあんたの剣術の指南役を受けることにした」
「え、え、ほんとにほんとに!?」
私は嬉しくて身を乗り出して確認する。
「あ、あぁ」
グイードさんは困ったように頷く。そこからは明日からの指導の方向の話し合いをしていた。
「じゃあ、お嬢ちゃんとは明日からそんな感じで頑張ろうか」
「はい!あと、先生って呼んでいいですか?」
グイードさんは少し得意げな顔を浮かべている。
「あぁ、なんとでも呼びたまえ」
(チョロいね)
「先生、よろしくお願いします!」
私とグイードさんは固く握手した。その後は、時間が遅いのもあって先生が帰るので門まで送ることにした。
「そういえば先生」
「ん、なんだ」
「なんでこの時間に先生来たんです?」
「む、いや、家族でなさっきまで話していてな。結論、お嬢ちゃんの申出を受けることになって」
「ん?先生謝ってくれましたっけ」
私がニヤニヤしながら首をかしげると困ったように目を背ける。そんなこんなで門の前まで帰ってくると顔を青くした門番さんの一人が私に近づいてくる。
「あの、あちらの御婦人がお嬢様にご挨拶したいとのことです」
門番さんの指差した方向を見ると、、娘のアイナちゃんの手を引くエマさんが顔を朱色に染めて立っていた。
「エ、エマ何でここに」
顔を青くした先生に詰め寄って微笑む。
「あ・な・た、今日は遅いから明日サラお嬢様のところに行きましょって言いましたよね。」
「パパー帰ろー」
「そうだな。帰ろうか。じゃあお嬢ちゃんまた明日な」
その後は、エマさんは夜更けに来たことをを詫びて先生の首根っこを掴んで帰っていった。
その後は、別荘の私の部屋に戻って初めての業務につかれて体がどっしりとした疲労感に侵される。明日からしばらくはここで生活することになるだろうけどようやく私の計画がしっかりと一歩踏み出したのを確信した。
「明日からがんばろ」
そう言って心地よい静かな眠りに落ちていった。