牢屋の中の光明
ニーナとの仲直りしてから数日後
時刻はお昼前になろうとしているころなのだがどうにもヒロインをハッピーエンドにするための方法が
思い浮かばず苦難していた。
一方で、あれからニーナとの関係は良好で今までにないぐらい甘えてきてくれて今では仲のいい姉妹になっている。昨日はニーナ付きの侍女さんたちが謝りに来たのだが、その際何故かニーナに植物の講師を頼まれてしまった。でも、ゲーム内で覚えてるのは毒草やレア素材だけで大した知識もなっかたので最初は断ったんだけどニーナにその知識の重要性を力説され最終的には上目遣で懇願されて陥落、引き受けてしまった。そして、ニーナは自分の友達もつれてきてもいいかと聞かれたのでOKを出して、さっきまで危険植物の講義をしていたのだけれど、そこで予想外のことが起きた。なんと、ニーナが講義の会場にしていた中庭には昨日いたニーナと数人の従者、だけじゃなくてニーナの通っている王立魔導士学院中等部の同級生ととその従者の総勢四十人の大所帯が待っていたのだ。学級の一クラス分を相手に講義を二時間、前世ではこういった大勢を相手にした講義とは無縁で人見知りだった私はてんぱってしまいグダグダな講義になってしまった。そんな多忙な午前中が過ぎて今は自分の部屋でお昼ごはんを待っているところだ。
「はぁぁ~、しんど~疲れた~」
朝っぱらから演説じみたことをさせら愚痴の一つや二つは言いたくもなる。
「ぷふっ」
「誰っ⁉」
誰もいないと思って大声で愚痴を吐いていたのだけどどの外まで聞こえていたようで恐る恐るドアを開けるとそこにいたのは笑いをこらえている顔でバケットを持っていたニーナが待っていた。
「お姉ちゃん、廊下まで聞こえてますよ」
そう言って手に持っていたバッケトを差し出す。中には、サンドイッチと果物が少し入っていた。
「午前中の講義ありがとうございました。あの、良ければ中庭でいっしょにお昼食べませんか?」
ニーナが持ってきてくれた昼食を二人で食べながら談笑していると一台の馬車が邸内に入ってくるのが見えた。
「ニーナ、今日って他にお客さんが来るの?」
ニーナは顔をしかめながら説明をしてくれる。
「お姉ちゃん、忘れてるんですか今日はお父様が売りさばく奴隷が検査しに来る日ですよ。」
思い出した。確かサラのお父さんは売りさばく奴隷出荷の適性検査を半年に一回この家でやってるんだった。その時ふと三十人ぐらいの中の短髪の筋肉質の中年男性に目がむく。
(あの人って確かゲームにも出てきてた……)
「……ちゃん、お姉ちゃん」
「えっ」
どうやら考え事に集中しすぎてニーナの呼びかけにも反応してなかったらしい。
「お姉ちゃん、どうしたんですかいきなり黙り込んじゃって」
「大丈夫よ。ちょっと思うところがあっただけ。でも、ありがとうあなたのおかげでやるべきことが決まったわ」
「えっと、、よくわからないけどお姉さまのお役に立てたのならうれしいです」
その日の夜遅く私はとある人が邸宅に帰ったっていう知らせを受けてその人の元へ向かっていた。
「グレアムさんいますか」
そう言ってその部屋の扉を開けるとその部屋の主は少し驚いた表情でこちらを見つめた後、綺麗なお辞儀をした。
「お嬢様、どうなさいました。こんな夜中にお部屋をお出になるなんて」
彼はこの家での私の専属執事のグレアムさんでサラは一か月前にバッドエンドの一つであるヒロインの誘拐殺人を起こす原因の一つヒロインが王太子との恋愛を王太子を狙っている公爵令嬢に告げ口。そして、半年後にヒロインはヒロインの事をよく思っていない公爵令嬢により誘拐され殺されそうになるのだ。もし、この時ヒロインが強くなっていればその場を脱出誘拐犯を倒して公爵令嬢を摘発すのだけどバッドエンドコースでは殺されて終わってしまう。つまり期限が半年しかない。自分がまいていた種とは言ってもめんどくさいことをしてくれたものだ。
「おかえりなさい、グレアムさん噂のほうは広まってますか?」
「はい、少しずつ広まっております。あと、半年もすれば学園内に広まるものだお思います」
グレアムさんはサラに忠実でサラの考えた嫌がらせの実行役なのだが、根は善人でこの誘拐事件がハッピーエンドではこの事件の後ヒロインにの下に今までの行いを懺悔しに行ってしまうのだけど、、
「戻ってきて直ぐに申し訳ないんだけど。頼みたいことがあるの」
「かしこまりました。このグレアムお嬢様の依頼ならば完ぺきにこなして見せます」
「ありがとう、頼みたいのはね……」
内容を聞いたグレアムさんは少し驚いた顔をしたけどすぐに深くお辞儀をして仕事にとりかかった。
あれから一週間後、、、
時刻は午後11時邸内みんなが寝静まった藍色の暗闇の中私は奴隷用の収容所にランタンとグレアムさんに頼んだ報告書を持って近づいていく。見張りの衛兵さんたちが警戒しながら近づいてくる。
「なんだそこの女」
私はランタンを顔に近づけて顔が分かるようにして妖艶な笑みを浮かべる。
「こ、これはサラお嬢様何故このような場所へ」
「こんばんわ、お忍びというやつです。少々中に入りたいのですがよろしいですか」
中にいた衛兵さん達も外に出してもらい薄暗い収容所の中に入っていく。そして、昼間に見た中年男性のいる牢に近づく中にいた男は私に気付いて顔を上げる。
「嬢ちゃん、こんな時間に何の用だ」
「単刀直入に言います。私に剣を教えていただきたいのです。元帝国騎士団長グイードさん」
「俺のことを知ってんのか、だがどうやって知ったかは知らんが俺は誰にも教える気はない、帰れ。」
断られることは大体わかっていた。だからこの時のために頼んでおいた手札を切る。
「知っていますよ、貴方はこの国に奥さんと娘さんの敵討ちするんですよね。貴方に肉体労働ツルハシ一つ持ただけで鬼に金棒ですからね」
「っ!!」
グイードさんは黙ったままだけどさっきまでとは違って明らかな敵意が向けられている。
「というか私はあなたを買いましたんで明後日には私の別荘行ですので今日はその後報告に参っただけです。今後のことはいろいろと働いてもらいますよ」
今はこれでいい、私は悪役令嬢らしい笑みを浮かべ立ち去ろうとする。
「それでは御機嫌よう、、ん?」
私を睨み付けるグイードさんを後にしようとした時隣の牢にも見覚えのある人を見つける。
(あれ、この人だけじゃないこの牢にもあの牢にもこれってもしかして)
ここの牢屋にいるほとんどの人がハッピーエンドではヒロインの支えになる重要人物ばかりだ。つまりこの人たちの力を借りればまだ間に合うのではないか。私は、行き詰まりだと思っていた眼前がほんのり灯りがともったように感じていた。