エリカただいま
二人がマンションに戻ったのは十六時頃だ。
受付にはエリカが立っていた。大きなあくびをしながら、艶々したブロンドの髪を手櫛で掻き分けている。
「エリカさん眠たそうだね。お疲れ様」
明蘭の声に、彼女は背筋を正した。
「お帰りなさい。またいっぱい買ってきたのですね」
彼女はそう言って、タツが抱える荷物の山を指差す。
「うん、新作も色々入っていたから。あとね、明後日にはお茶会もあるんだよ」
「それは楽しみですね」
そんなやり取りの後、明蘭はタツを残して先にエレベーターで上がっていった。車にはまだまだ荷物があり、タツはそれを降ろす必要があったのだ。
袋をまとめるタツにエリカが話しかける。
「明後日のお茶会にはあなたも行くのかな」
「おう……、行かなきゃいけないらしい」
タツがそう言うと、彼女は少し考え込んだ後にニヤリと口角を上げた。
「ふーん……、エリも行こうかな。ちょうど休みだし」
思いも寄らぬ返事にタツの手が止まる。
「何の気まぐれだよ、アンタみたいなギャルが。……そういえば、アンタ昨日の夜に繁華街にいなかったか」
その問いに、エリカは一瞬だけ目をそらした。
「見間違いでしょ」
「そうか。まぁいいけど」
その後、車から最後の荷物を取ってきたタツはエレベーターに乗り込んだ。
眺めていたエリカが、鋭い笑みを浮かべる。
「タツ……楽しみだね、ふふふ」
彼女はスワロフスキーでキラキラと飾られた携帯を取り出し、自分の耳にあてた。
「もしもし。聞いて、面白いこと思い付いたんだけど……」
電話の後、彼女はこらえきれずに高笑いをあげた。




