さ、パーティータイムだ
入り口からは重低音がリズムよく漏れており、周辺には軟派な雰囲気の若い男達がたむろしている。
二人が近づくと、彼らは物珍しそうに視線を送ってきた。タツの顔が熱くなる。
「ずいぶん騒がしいパーティーね」
「俺は騒がしくないパーティーが知りたいぜ……」
タツは苦笑いしながら彼女を連れて入った。
ステッカーや落書きだらけの受付には若い男が一人いる。
「チケット、男女、当日で」
タツはなれた調子で、事前に李から少し受け取っていた現金を出した。
「はい。ありがとうございます」
男は代金を受け取り、チケットを差し出した。袖からドクロ柄のタトゥーがチラリと覗く。
二人はチケットを受け取り受付の奥にある階段を降りた。
重低音のリズムが二人の胸を強く打つ。明蘭は階段を降りながら耳を塞いだ。
降りたすぐ先にホールがあり、ストロボやミラーボールの下で肩やへそを露わにした若い女達が集団になって踊っている。端っこのステージでは、女性が一人でDJをしていた。
女性率の高さにタツは胸をなで下ろした。男もわらわらいるが、港にいる野良猫の様な目で片隅から踊る女の子達を眺めているだけだ。
曲は展開し、甲高くも透き通るような女性ヴォーカルが流れる。
「アリアナ=グランデだ」
誰かが声を上げ、踊る女の子達の活気が一段と高まる。
「ど、どうだい」
タツは明蘭の様子をうかがう。彼女は目を見開いて立ちすくんでいた。
しばらくして、踊っていた女の子達が明蘭に気がついた。
「え、すごーい、かわいい。お人形さんだぁ」
彼女らはそう言いながら明蘭を囲み、そのまま集団の中へさらっていってしまった。
フロアで身体を揺する女達は、はしゃぎながら明蘭に酒を注ぎ、彼女を取り囲んで記念撮影をしていた。悪い気はしなかったのか、路上の時とは違い明蘭も乗り気だ。
すっかり人気者になった彼女はそのまま、女達に混ざり込んで踊り始めた。タツの思惑通りだ。
とりあえず安心した彼は、喉を潤わそうと別室になっているバーカウンターへ入った。




