ロリィタのポリシーかい
「メイ、洋楽のパーティーなんて初めて」
はしゃぐ彼女にタツは聞いた。
「友達に誘われなかったのか」
「誘われていたけど、夜中の外出はパパに禁止されていたから」
「案外厳しいな。大丈夫、楽しい夜になる」
会場のある繁華街はそう遠くは無い。出発してから十分くらいで、会場の最寄りにある駐車場に到着した。
タツは先に降り、明蘭側のドアに手を掛ける。
駐車場前の道では人、人、人が道を譲り合いながら行き交っていた。その中でも特に近くを通る人達は、ほとんどがタツの姿を二度見して行く。
「大道芸人か俺は」
彼がそう呟いた時だ。ふと遠くで、中年男性と一緒に歩く一人の女性が目に入った。
長いブロンドヘアー、細くスッキリした輪郭、モデルのような長い足……。どこを取っても見覚えある。
その女性は、ピンク色の際どいドレスをひらひらさせながら人混みの中へ消えていった。
「あいつ、確か……」
タツが目を凝らしていると、明蘭が待ちきれずに自分で出てきた。
「ねぇ、どうしたの」
「あ……いや、何でもない」
彼女と突っ立っていると、若い女性三人がスマホ片手にヒソヒソ言いながら近寄ってきた。
「すみません、一緒に写メ良いですか」
タツは言葉を詰まらせた。初めての経験だったから。双拳の龍として崇められていた頃でもこんな事は無かったのだ。
執事も案外悪くない。彼はヒッソリ思った。
だが、明蘭の顔は険しい。
彼女は三人に手のひらを向けてキッパリ告げた。
「ロリィタは見せ物じゃ無いです。やめてください」
「ロリィタ……」
タツも三人組も固まる。
しばらくして、彼女らは気まずそうに去っていった。それを見送るタツも気まずそう。
「さ、行くよ」
明蘭はマンションを出た時と同じようにタツに鞄を持たせた。タツは何も言わずに受け取る。
彼は歩きながら考え事をしていた。さっき、男と一緒に歩いて行った女の事を。
「まぁいいか」
「何がいいの」
独り言に明蘭が反応する。
「いや、別に。それよりほら、ついたぞ」
そこには真新しい白いビルが立っていた。




