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3限目

ここはいじめの場面があります。苦手な方は次の話に飛んでください。


早坂瞬という人物を筆頭に取り巻きの加賀下と佐久間に正樹はいじめられた。


これだけ把握してもらっていればそれほどストーリー展開に支障はないと思います。

 授業は3限目からで107号教室でデッサンの時間だった。


107号教室は石膏を中心に木製イーゼルが円になるように配置されている。


各々が目測し遠近感を確かめつつ前回の続きの場所に木製イーゼルを


移動させていく。


 正樹も木製イーゼルを移動させて前回のデッサンした場所を探し


キャンパスを固定させ、指で四角を作ってそこから覗いて構図を確かめた。



そこへ早坂瞬がやってきた。


早坂は指をカツカツと壁にぶつけている。髪の毛はワックスでかため


眼鏡は黒縁。黒いシャツに黒いズボンという黒ずくめの男だった。


早坂がきたことで正樹はちょっと顔に強張りがでる。



「よう、さっそく描いてるのか?相変わらずデッサンも構図も


たいしたことないのな。」


ニヤニヤしながら煽りにくる。後ろについてくる2人の男は汗をだらだら流し


袖でふきまくっている太った佐久間忠と


ゴボウのようにひょろっとした加賀下洋馬。


どちらも早坂の仲間だった。



「こんな絵を描いてて君はどうするのさ。


デッサンができない素人でパースも狂ってるし遠近感もオカシイ。


なぁ、この絵はおかしいよなぁ?」


「オ、オレもそう思うよ。基礎サボってるんじゃないかね。」


と佐久間は早坂に調子を合わせた。



「この線はオカシイよなぁ。いっちょ、俺が描いてやるよ。


と、早坂はちょちょいと線を勝手に描いてしまう。当然


「何をするんだ!」


と反論する正樹。だが、


「今、早坂さんが描いた線の方が構図がすっきりしていいよな。」


と加賀下はひょろひょろしながら早坂が描いた線を評価する。


「正樹、お前デッサンすらまともに描けないのに画家なんか


目指してんじゃねーよ。才能ないんだから早く諦めた方が人生無駄に


しなくてすむと思うよ?」


と早坂は正樹が描いた絵を指さして笑うのであった。



だが悔しいことにその早坂が描いた線の方が確かに綺麗に描けていると


いうのは事実だった。自分の線よりも強弱のバランスのきいた生きた線。


早坂はそういう線を描けてしまうのだった。



「さ、さすが美術賞とった早坂さんの線は違うね。」


と佐久間は汗を拭きながら同調しはやし立てる。正樹と早坂達は同級生で


大学3年生。大学1年生でいきなり美術賞をとり注目されていたのが早坂だった。



「僕だっていつか描けるようになるさ。いつか有名な画家になるんだ。」


と強がってみるが声は徐々に小さくなっていき自信は失われていった。



 正樹は早坂と同じ美術賞に応募して落選しているから実力は悔しいけど


早坂の方が上だと分かっていた。だが、だからといって自分の絵に他人が線を


勝手に描くのは許せなかった。



「僕は僕の好きなように描く。ほっといてくれ。」


と早くここからいなくなってくれることを願って叫んだが早坂は


正樹を蛇のように追い詰める。


「描きたいように描いた結果できあがった売れない絵に何の価値が?」


と正樹の絵をコンコンコンと人差し指で弾いた。正樹は何も言えなかった。


心に突き刺さる言葉だった。



 そこへ木崎明美が教室に入ってきて異様な雰囲気になっているのを感じ取る。


またなのと思いつつ正樹と早坂のところにやってきて


「田之島教授くるから席に戻って。」と注意する。


その言葉を聞いて早坂達3人は正樹の場所から離れていき各自の席に着く。


しかし正樹は描きこまれた数本の線をみて拳を握りしめ、消しゴムで


跡形もなくなるまで線を消し続けた。














読んで頂きましてありがとうございました。


面白い!


続きが読みたい!


これからどうなるんだろう?


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作品を読んで何か心に残るものがあったなら幸いです。


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