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宿る闇2

「だから私は人の夢をつぶすときが、他人の不幸を見る時が


一番楽しい。」



小川はそれこそどんな時より楽してく仕方ないといった恍惚とした


表情で笑った。楠田はこんな恐ろしく吐き気のする笑い顔はないと思った。


「それ以上の楽しみがこの世にあると思いますかな?クックック。


どれだけ考えてもでてこないでしょう?」


と笑いを抑えるのに精いっぱいといった様子をみせた。



「苦悩に満ち苦しみと後悔と絶望に歪んだ顔ほど面白いものはない。


他人の不幸ほど世間は喜びますからな。正義をふりかざしていようと


どんなに誠実なふりをしても自分より幸福な者が転落をしていくさま


を見ることが世の中の一番の楽しみではないですか?」



それこそ楽しくて仕方ないという顔をして笑い、


「そうでなければ政治家の汚職を追い詰め続け、国会で国政の話し合いをせず


足を引っ張ったのに、私たちのせいではないですよ?汚職した人間がいるから


悪いのです。といって困窮する政治家をみるのが


世間の皆様は楽しいのでしょう?視聴率が取れてしまうからテレビも放送を


やめないですしな。あげく政治家が自殺したら何事もなかったかのように


別の事件を追いかける。壊れたおもちゃに興味はないのですよね?」


新人の江口は小川の聞くに堪えない発言を聞いて胸がムカムカして


気分が悪くなるくらいだった。



「いやいや世間の皆様はとても分かりやすい性格をしておいでで


私と仲良くなれそうじゃありませんか。私と親友になれるのではないかと


思ってしまいます。」


と小川は真顔で語る。


「この政治家が死んだのは誰が悪いんですかね?追い詰めた政治家たち?


面白がって騒ぎ立てたマスコミ?それを黙ってみていた世間の皆様?


それとも汚職をしたことを追及され、それに耐えらえれず死んでしまった


政治家自身なんでしょうかね?フフフ。」


面白くて仕方ないといった様子で小川は話し続ける。



「死んだら反応がなくなって楽しみが終わってしまいますからな。


こんなつまらないことはない。相手が死なない程度に、反撃してくる


気力がない程度に痛めつけないと意味がない。世間の皆様はそこらへんが


良く分かってらっしゃるようで私など足元にも及ばないでしょうからな。


そういう嗜好の持ち主とは私は仲良くなれそうですな。」


と笑いをこらえるのが大変そうな小川。



「政治家がテレビで追及され自殺したのは誰が悪いのか?


みんな私にはそんなつもりはなかったというでしょう。追及した政治家も


正義のために不正は許さないと追い詰めたマスコミも、それを見て


政治家の事務所に苦情の電話かけた世間の皆様も、


テレビを見ていただけの世間の皆様も。


誰にも責任がないというのであれば日本国民全員が共犯でしょう!


自殺は誰かがいじめられていても自分には関係ないというある種の無責任が


引き起こした殺人だと私も思いますからな。」


小川は言いたいことを言い反論が楠田からなくなったことに気をよくしていた。



「だから世間の皆々様と同じようにお金より名誉より命を取るより


他人の人生の夢や希望を奪うこと。すなわち他人の不幸を見ることこそが


私の至上の喜びなのですよ。」


一通り話し終えた小川はふぅと深呼吸した。世間に認められなかった画家が


絶望に飲み込まれ抗えず死んでいった。その悲劇の縮図がここにあった。



その話を聞きながら楠田はこう反論した。


「最悪の人生を生きてきたということが他人の人生を無茶苦茶にしていい理由に


なんて絶対にならない。あんたの父親が自殺したからといって


政治家の自殺の話を持ち出してあんたの犯罪が許される話になる訳じゃない。


罪は罪だ。そもそもあんたの復讐の相手が違うだろう。あんた父親の自殺の原因は


贋作をしていたあんたの父親の手を痛めつけた連中だ。


ほんとに復讐するというならその犯人を裁判にかけ罪を償わせるというのが筋だろう。


あんたの嗜好を正当化するのにたまたま政治家の自殺の話が当てはまった。


それだけのことだろう。むしろご家族にとってはあんたの話は失礼だ。」


楠田はそう言い切った。絶対に忘れてはならないことがある。



「お年寄りを騙して贋作を売りさばき多額の利益を得たこと。


薬漬けにして若者の人生をボロボロにしたこと、その若者たちを使って贋作を


作らせて画家としても未来を失わせたこと、なによりたくさんの若者の未来の


可能性をつぶしたこと。


 これらはあなたが最優先で償わなければならない罪だ。


早坂君やその他の若者の未来や可能性、そしてささやかな、


けれども暖かい家庭のある若者たちの普通の幸せな人生に


あんたは嫉妬したんだ。」



「早坂君には頭が重いからなんとかならないかと言っていたので頭がスッとして


体がシャキッとするよと言って一回薬を渡しただけ。そのあとは早坂君の


方から薬を売ってくれと言ってきたから売っただけだ。」


小川は楠田の反論に何も言い返せなかったことと


早坂に嫉妬という言葉が気に入らなかったのか薬物の話を肯定した。



楠田はこの話が真実かどうか裏をとらなくてはとおもった。


薬物ルートの摘発とバイヤーの摘発。楠田はやらなくてはいけないことは


いよいよ増えてきたと思った。取調室で激論をかわす二人に圧倒され


ただ見ていただけの江口は「いくぞ」という楠田の後に続いて取調室を


でていった。





読んで頂きましてありがとうございました。


面白い!


続きが読みたい!


これからどうなるんだろう?


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作品を読んで何か心に残るものがあったなら幸いです。


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