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ツバサさんの横に並んで歩く僕は、都会に飛び出してきた田舎者のように、辺りをキョロキョロと見回していた。僕たちは海岸を後にし、森林の街道を歩く。
ウイングアイランドは、意外と何の変哲もない普通の島だと思っていたが、少し歩くとそう思わなくなった。ここはまるで、おとぎ話の世界だ。
まず、ふと見た木の上に赤、黄、青の鳥がとまっているのを見た。信号のようだ。
次に、中世のお城のような家を発見した。僕が目を奪われていると、ツバサさんが
「あそこは、島一番の金持ち、アリーヌ家の家じゃよ。娘さんのアリアちゃんが可愛いのよお」
と言っていた。
一番僕が衝撃を受けたのは、熊の顔をした獣人とすれ違った事だ。ツバサさんはその獣人に軽く会釈し、挨拶していた。獣人はそのまま、海岸の方へと消えて行った。僕は驚いて腰を抜かしていた。ツバサさんは「大丈夫かい?」と僕に声をかけ、手を差し伸べてくれた。僕は獣人について訊いてみる。
「今の奴はこの島のマスコットキャラクターか何かか?」
「ますかっときゃらくたー? なんじゃねそれは。今のハンサムはロイドさんじゃよ。町で雑貨屋をやっているんだ」
僕はその返答でさらに驚いた。どうやら獣人が当然の世界らしい。
様々な衝撃を乗り越えて、ようやくツバサさんの家にたどり着いた。ツバサさんの家は木々に囲まれていて、のどかな場所にあった。洗濯物が干してあり、生活感が滲み出ている。
「ここじゃここじゃ」
「一人で住んでいるのか?」
「うんにゃ。私と私の孫、ソラと二人暮らしさ。今から朝ごはん作るから、ソラと話でもして待っていておくれ」
そう言うとツバサさんは玄関に近寄り、扉を静かに開いた。僕は、我が家に入るツバサさんの後ろをついていく。ツバサさんの家はいい匂いがした。甘くて心地のよい爽やかな花の匂いだった。
「ただいま」
ツバサさんの声に応えるように、おかえりという声が家の奥から聞こえてきた。するとすぐに、部屋の奥から女の子が顔を見せた。
「あら。お客さん?」
その女の子を見た瞬間、僕は少し驚いた。なぜなら、あまり見たことがないような、奇抜な格好をしていたからだ。
服はごく普通のワンピース。白を基調にしたそれは、とても華やかだった。容姿は目がぱっちりしていて可愛らしい。頭には、ヤシの木が生えていた。
「この子はカナタエイ君じゃ。海で倒れてたんだよ。行く当ても無さそうだったから連れてきたんじゃ」
「え、海に? 君、もしかして漂流者? 」
女の子は心配そうな表情で、頭のヤシの木を見せつけてくる。恐らくこの子がツバサさんの孫、ソラだろう。
「大変だったんですね。私、ソラって言います。ばあちゃんの孫で、一緒に暮らしているの。よろしくね、カナタエイ君」
「よ、よろしく」
緊張していたため、少しどもってしまった。ソラは満面の笑みで、僕の方を見ていた。
玄関を抜けた先には、木の家具で揃えられているリビングになっていた。真ん中に丸いテーブルがあり、椅子が三つ置かれてあった。また、大きな本棚がある。そこの本はどれも、見たことのないような字が記されている。
「じゃあ、朝食の準備してくるから、そこに座ってくつろいどってくれ」
僕は言われた通り椅子に座り込む。
「私も手伝うわ」
ソラがそう志願すると、
「大丈夫じゃよ。ソラもエイ君とお喋りしながら、待ってな。面白い話聞けるかもしれんよ」
と、ツバサさんが言った。
ツバサさんが奥のキッチンに行った後、ソラは僕の正面の席に座り込んだ。最初は気まずい雰囲気になるかと思った。しかし、ソラは初対面の僕に対して、緊張の緊の字も見せない。
「私もエイ君って呼んでいい?」
「ああ」
「やった! エイ君、どこからきたの?」
「日本って国からだ」
「ニホン? 聞いたことないわね」
案の定、ソラはツバサさんと同じ反応を見せた。
「僕だって、ウイングアイランドとか、フラワ王国とか聞いたことないぞ」
「え~? 嘘だ~」
ソラは、僕が冗談を言ってると思っているようだ。
「それが本当なんだ。僕は多分、この世界の人間じゃないんだよ。僕の住んでいた世界に、竜とか妖精とか存在しないし」
「この島の伝説は知ってるじゃない」
ソラは笑いながらそういった。僕には興味深い一言だった。
「伝説?」
「竜と妖精の伝説の話をしたんじゃないの?」
「なんだそれ。詳しく教えてくれ」
「おかしな人ね。竜と妖精の事は知ってるのに、伝説の事は知らないなんて! まあいいわ。教えてあげる」
一瞬沈黙した時、壁にかかっている時計のカチカチという音が部屋を支配していた。次第にソラは目を閉じ、語り始めた。
こんにちは、クマ公です。
小説家になろうは携帯で書けるので、めっちゃ嬉しいです。