僕の兄、あーにぃの話
僕は四人兄弟の末っ子です。
そんな僕の兄さんは、他の人と比べると普通じゃないようで。
そんな兄達の話をしたいと思います。
長男、朝陽。十七歳で双子です。あーにぃと呼んでいます。
次男、夜。十七歳で双子の弟の方です。よーにぃと呼んでます。
三男、夕緋。十五歳の受験生です。ゆうにぃと呼んでいます。
そして僕、浅川家の末っ子の月都です。今年、中学生になりました。みんなからは月ちゃん、と呼ばれてます。
今回は、そんな僕から見た、あーにぃのことを話したいと思います。
タイトルは「弟の僕から見たあーにぃの恋愛事情について」、です。
あーにぃはモテます。
女子に優しく、紳士的な態度で接することが出来る高校生です。
ですが、付き合うとなると、一ヶ月くらいで振られてしまうのです。
その理由としては、彼女よりも僕達兄弟を優先してしまうから。
そして、女子以上に女子力が高い、女装が好きな女装男子だからです。
しかも、あーにぃは女装をすると美人になりすぎちゃうから、余計に元カノ達は気に食わなかったのでしょう。
あーにぃの元カノ達は皆、自分の容姿に自信を持っている方が多かったから。
さすがに振られ続けるのは辛かったのか、あーにぃは中学二年生以降は彼女がいません。と言うか、それをよーにぃが阻止してるとも言えます。
よーにぃは、あーにぃのことが大好きです。でも、素直な性格じゃないから本人に好き好きアピールはしません。
きっと、よーにぃが別れてと言えば、あーにぃはその言葉を優先するのになと回りくどいことをするよーにぃは可愛くて好きですよ、僕。
だから、あえてその事実を教えてあげたりはしません。
よーにぃはわざわざ早起きをして、ラブレターをあーにぃより早く回収し、瓜二つな顔と、クオリティの高いあーにぃのモノマネをして、兄の代わりに告白を断り続けています。
なんて、一途なんでしょうね。
僕みたいにならないでね、なんてね?
「僕からお兄ちゃんを奪ったら、君のこと許さないから……」
依存しすぎて脅すようなこと、しちゃダメですからね?
僕の友人はわかってない。
異常なのはね、僕の方なんですよ?
なんたって、僕は……前世、殺人鬼だったんですから。
中二病? 違いますよ、これは事実。
僕の殺気に、トラウマにならない小娘はいないのだから。
「こんなところ友人君には見せられませんね? 僕、意外と友人君のことは好きですし、嫌われたくないですしね」
そう言った僕の陰は歪に笑った、僕だけに聞こえる声で。
前世の記憶のせいで、あの衝動に飢える感覚に襲われながら、僕は日々を生き抜く。
僕はね、誰も殺めずにお兄ちゃん達を守るよ。そう約束したから。
僕の愛した人に瓜二つな人に頼まれたから、涙を流して懇願されたから。
もう、あの時のような涙を流せさせないと決めたから、僕は堪えるよ。
あーにぃやよーにぃ、ゆうにぃが幸せになる時を見終わるまで。
だからね、あーにぃ。
君は一番目に幸せになってね。
あーにぃ。
あーにぃはね、きっと桜の咲く、桜の香りが強まる日。
その日に、あーにぃは本当の恋を知るような気がするの。
あーにぃは紳士的だよね。
だから、断れない。でもね、紳士ならちゃんと振ってあげないとダメだよ、女の子と向き合ってあげないと……。
……あーにぃ、ヤンデレとかに捕まっちゃうよ……?
ただでさえ、あーにぃはストーカーされてるのに……、まったくもう!
天然たらしはこれだから困っちゃうよ、まあ振り回されるのは満更でもないんだけどね。……あの衝動に駆られないし。
でも! でもですよ?
このままだとよーにぃがターゲットになっちゃうわけですよ。
よーにぃが全部、全部対処しているんだから、お兄ちゃんに被害が行く前に手を打っておかないと、ね?
今まで話したことを簡単にまとめちゃうとですよ?
あーにぃはね、紳士的な、天然チャラ男と言うことですね。
そんな恋愛運がない、天然たらしで、天然チャラ男なあーにぃだけど、僕はそんな兄が嫌いじゃない。