8話 真波 1
体育館の中央に俺と向かい合った真波が「そういえば」と呟く。
「気になってたんだけど、モルモーのコウモリの噛みつきは叫ぶほど痛くない筈だよね。もしかして遼平くんって痛みに弱い方?それなら技に痛撃緩和を付与するけど、どうする?」
付与には2種類ある。身体に直接影響を及ぼすものと、技に直接影響を及ぼすものだ。
身体に直接影響を及ぼすものは、憂月が使ったウォーターバリアなどのようなキャラの技によって、効果が切れるまで永続的に発動するものだ。勿論、相手に悪い効果も付与する技もある。これは使えるキャラと使えないキャラが存在する。
一方、技に直接影響を及ぼすものは、どんなキャラであろうが技術さえあれば詠唱によって技に付与できる。例えば、通常の詠唱に加え火炎を付与する詠唱を行えば、その技に火属性が与えられる。使い方によってはかなり強いが、技に付与させる詠唱は長い。そのため、いちいち技に付与を行っていると、攻撃速度が落ちる。
真波が俺を気遣って、ダメージ量は変わらないが傷みを和らげる痛撃緩和の付与(まあ、麻酔のようなもん)をいちいち詠唱していると、とてつもないハンデとなってしまう。しかも、俺は痛みに弱い訳ではない。だから慌てて弁解する。
「大丈夫だ。そもそも、サクヤが調子に乗って痛撃増幅Vの付与を噛み付く時にしたのがいけないんだ。」
「うわぁ...それはないわ...大丈夫?今更だけど。」
技の付与にはレベルというものがI〜Xまで存在する。付与レベルがあがるにつれ、付与の威力、詠唱時間、詠唱難度などが跳ね上がっていく。
因みに、ダメージ量は変えず痛みだけを大きくする、痛撃増幅Vの付与は、軽く叩くくらいの痛みがタンスの角に小指をぶつける位の痛みになる。結構地味に聞こえるが、実際そんな中で結構本気で吸血鬼に噛まれた俺の痛みは、たぶん当事者でないと分からないだろう。
「まあ、何はともあれ模擬戦をやろうよ。手は抜かないでね。そうしないと私が嘘つきになっちゃうから。」
手を抜いてわざと負けようとか思ってたが、先手を打たれたか。
「わかった。お前こそ嘘つきにならないように手を抜いたりすんなよ。」
「了解。ということで、神のキャラを使ってね。その人智を超えたキャラを使えることが由来でサクヤちゃんと遼平くんは、」
真波は一旦言葉を切って、周りの人に聞かれないように声のトーンを一段と下げた。
「『魔女の申し子』なんて言われているんでしょ?」
「っ!!」
『魔女の申し子』それは俺とサクヤにつけられた二つ名だ。と言っても褒め言葉ではない。他の奴が俺らを忌み嫌って貶すためにつけたものだ。そしてそれが原因で人々から大量の血が流れてしまった。誰が魔女の申し子かまでは知らないものの、そのことはほぼ全ての人間が知っていることだ。だから、もし他の人に聞かれた場合この学園生活はほぼ続行できなくなると言っても過言ではない。
「大丈夫、サクヤちゃんと遊んだ時に本人とお母さんから聞いただけ。私は特に詮索する気もないし、気にもしない。特に口外する気も無いしね。でも、これだけは知ってるよ。」
真波は一呼吸おいて言い放った。
「第五全区戦争で遼平くん達は招かれざる奇跡を起こした。いや、起こしてしまった。その副産物である人智を超えた神のキャラ『モイラ』を遼平くんは手にいれてしまったってことだけは。」
「ああ、その通りだ。でも口外は絶対にするな。全てを話すべき時は恐らくいつか来るはずだから。」
「それが絶対の運命ってこと?」
「馬鹿言え、俺の直感だ。」
運命の三女神『モイラ』の入手法は一部の限られた人だけが知っている。その神の力を得る方法は人間には入手不可能と呼ばれたものの一つ。『運命を紡ぐ』ということだった。
伏線整理や書き溜をするため、10月1日まで更新を控えさせていただきます。そこからは怒涛の連続更新といたしますよ〜!(たぶん)
自分の作品を読み返して見ましたが酷いですね。投稿前に読み返した方が良さそうです(笑)
全ておかしな所は書き直しておくので、読み返して見てください。