5話 模擬ノ戦 2
「えっ?」
「なんで?」
俺らが防護フィールドを展開させ、モニターに情報が映し出されたとき、あちこちから声が漏れる。見ると4人組も固まっていた。
「おいおい、ランクEってマジかよ。」
「しかも、固有キャラ〜。この人たち、只者じゃなさそうだね〜。舐めていたのは僕らの方だったかも〜。」
「えっ?」
その発言に驚いたのは俺らである。そしてすぐに自分達のミスに気がついた。モニターには、
風谷舞音 シルフ F
炎剛烈火 サラマンダー F
時水憂月 ウンディーネ F
土門悠斗 ノーム F
VS
結城遼平 ゲニウス E
結城サクヤ モルモー E
と、映し出されていた。
モニターの見方は、一度見たことがあるから分かる。左から順に、名前、使用キャラ、ランクとなっている。そして俺らのミスはキャラとランクの選択だ。
そもそも、使用キャラは、対戦前に決める事がほとんどだ。使うキャラが決まったら、華煉文字と呼ばれる特殊な文字で、脳内もしくは空気中に指でキャラの名前を書き、それが自分の使用できるキャラなら、そのキャラになることができる。そのため、使用前に相談などは一切せず戦闘になって初めて相手が何を使っているか分かる。
キャラのミスは単純だ。前も説明した通り、カレンについては高校から盛んになってくる。そのため、学校で配布される比較的扱いが簡単なものしか高校生の時点では持っていないのが殆どだ。しかし、キャラやカレンのことについてはしっかり学ぶので、ある程度のキャラの知識はつき、一目でこれが配布キャラではなく、固有キャラだということがばれてしまうのだ。
ランクについてはその大きさのミスだ。ランクとは簡単にいえばキャラの適正値である。キャラはただ使える様になっただけでは、そのキャラの実力は1%程しか出せない。本人のカレンとキャラを上手く馴染ませて初めて2%、3%と上がってくる。それを表したものがランクというものでランクは、HからSSSまであり、
Hランクは1%、
Gランクは2%、
Fランクは3%、
Eランクは10%、
Dランクは20%、
Cランクは30%、
Bランクは60%、
Aランクは80%、
Sランクは100%、
SSランクは200%、
SSSランクは400%となっており、
理論上存在するがまだ誰も見たことのない適正値1000%のランク、LGランクというものも存在する。
そして適正値はランク以外の値にはならず、3%から10%などは間の4〜9%を経由せずいきなり上がる。ただでさえランクを上げられるようになるのは大変なのに、その中でも特に難しいいきなり適正値の上がり幅が上がる3ランクごとは「3ランクの壁」と呼ばれ超えるのは困難を極める。その壁を破ってしまっていたのだからそれは驚くだろう。
(ちなみに、華煉高の入学切符取得の条件は、中学のうちにFランクに辿り着く事で、才能が開花しずらい中学生でFランクに辿り着くのはかなりの難題であると言える。)
俺はサクヤと顔を見合わせた。
「手加減、出来てなかったね。えへへ...」
「ああ。もう少し考えておけば良かったな。」
「まあ、過ぎちゃったことは仕方ないから、これで行こ〜!」
俺は流石に呆れる。
「楽天的だな、お前は。」
「遼平は難しく考えすぎなの。折角なんだから、楽しもうよ!」
「そうだな。」
俺らはあたふたしている4人組を見る。
「勝敗は、戦わなきゃわかんないよ!さあ、やろう!」
サクヤの一声で我に返ったのかこっちを見てくる。
「済まないな。少し僕らが君らを舐めていた。だが、負けない自信しかないぞ!」
憂月が叫び、空気に指を滑らせ始めた。
キャラによる技の使用方法は華煉文字による詠唱式である。詠唱と言っても「指詠唱」と「脳内詠唱」の2種類があり、指詠唱は空気中に指で文字を書き、脳内詠唱は脳内で文字をイメージして描く。
脳内の方が詠唱時間が早く詠唱の難易度が高いが、華煉文字が5〜6字程度の簡単な技ならすぐにできるようになる。しかし強い技になってくると、華煉文字の数が多くなり、脳内では処理できない量になってくる。そのため、多少時間はかかるものの指詠唱が使うようになる。つまり、敵が指詠唱をした場合は強攻撃がくることが殆どだ。
憂月が指詠唱をやり出したため、無防備な憂月を守り、詠唱を完成させるためか3人がこちらに飛んでくる。
「よろしくね、遼平!」
その動きが読めていた俺らは、笑みを浮かべた。そして鮮やかなバックステップでサクヤが後退したのを確認してから、俺は右手を突き出し脳内詠唱を行った。
「ホーリーシールド!」