3話 ハジマリ 3
「こんにちは。結城遼平くん、サクヤさん!私が、2-Bの担任を務めます、湯浅恵美です!これからよろしくお願いします!」
校長室から出ると、待っていたのは茶髪を短く切り揃えた20代ほどの女性だった。
「「よろしくお願いします!」」
因みに、挨拶がサクヤと被ったのは全く意図していない。
「もう、クラスの子には転入生が来ると話してあります。なので、緊張とかそんなものはいりませんよ!」
先生、ガッチガチ笑顔で言われても困りますよ。華煉高は転入生とかほぼ無いし、転入生の対応とか慣れてないんだろうな。それが神のキャラ保持者で隠さなきゃならない秘密も多いとなると大変そうだし。と他人事に俺は思った。
校長室は1階にあり、3階の2-Bに行くまでに湯浅先生は、廊下で7回、階段で4回躓いた。
「ごめんなさい!あの、私結構ドジなんですよ。えへへ...」
「大丈夫ですか...?」
サクヤが不安そうに聞く。
「大丈夫です!私のこういうところは、2-Bならすぐ慣れます!」
「いや、そういう意味ではないと思うのですが。」
一応ツッコミを入れておくが、当の本人には聞き流され先生は教室の前で立ち止まった。
「じゃあ行きますよ!おーぷん・ざ・どあーーー☆」
色々とおかしい。キャラもブレてる。どうしてこんな人が教師なんだろう。辞めちまえ。
「遼平くん。今なんか失礼なこと考えませんでした?」
「い、いえ。別に...」
心まで読むのか!!
「まあ、ここで固まってんのもあれだから、さあ入った入った!」
半ば無理やり押しこまれるようにして俺らは教室に入れられた。そこには、ざっと30人ほどの...
「遼平!26人もいるよ!」
(ぼそっとつぶやくサクヤの情報が正しければ)26人の生徒が、俺らが言葉を発するのを今か今かと目を輝かせながら待っていた。
「みんな、お待ちかねの転校生を紹介するよ!」
湯浅先生が前の黒板に俺らの名前を書く。結構字を書くの早いな。
結城サクヤ。結城良平...
「漢字違いますよ。」
「...あっ」
少しして俺らの名前が書き終わるのを確認してから、俺は口を開く。
「始めまして、結城遼平です。親の所為で高校に入るのが遅れました。精一ぴゃ...杯、クラスに馴染むようにします。よろしくお願いします。」
...噛んだ。噛んでしまった。お願いだから、クラスの人よりも笑わないで、サクヤ。他の人が笑うのよりもっと恥ずかしいから。サクヤは笑いを精一杯堪えながらも俺に引き続き自己紹介をする。
「始めまして、結城サクヤです!遼平と同じ理由で転校してきました!よろしくお願いします!」
威勢がいいな、コイツ。見習おうかな。
俺らが話し終えたのを確認すると湯浅先生が言った。
「じゃあ〜、皆さんお待ちかねの質問ターイム!」
一斉にクラスの人がバッと手を上げる。それを先生が一人一人当てていった。
「サクヤさんと、遼平さんは兄弟ですか?」
「俺が捨て子だ。あんまりこの話はしたくないから止めてくれると嬉しい。」
俺が少しぶっきらぼうに言ったがそれも気にせず質問が続く。
「二人の適性属性はなんですか?」
適性属性とは、簡単に言ってしまえば、自分の使いやすい属性である。体内に段々と蓄積される六属性のカレンには、溜まりムラがあり、それが人によって違う。火が溜まりやすく、水が溜まりにくいという人もいれば、風が溜まりやすく、光と闇が溜まりにくいという人もいる。このように、自分が一番溜まりやすい属性の事を適性属性という。
「私が闇で、遼平が光かな。」
あちこちから、見た目と違うという声が漏れてくる。どういう意味だ。
「二人のライセンスを見せてください!」
ライセンスとは、自分のカレンについての情報が乗ったカードだ。自分がどのキャラを持っているか。体内のカレンがどのくらいあるかなどの数値、ランクがどこまで解放できるか。というのが書いてある。ランクについては後に説明する。(面倒臭いし)
とりあえず、ライセンスを見せると神のキャラが使えるということがばれてしまうため、見せるのを拒否しておく。
この後も、好きな食べ物や、好きな音楽、趣味や恋人の有無まで聞かれた。(ちなみに恋人は二人とも勿論いない。)
ある程度時間が過ぎてから、先生が提案した。
「折角なので、この二人の実力を見るために模擬戦をしましょうか。」
え?模擬戦?
すいません。前回の説明で、「受諾キャラの説明についての一言を入れ忘れたので、訂正しておきます。
まあ、説明するのは、まだまだ先になりそうですが(笑)