10話 真波 3
連続更新2話目!
3話いけるかな...?
◆は、視点変更を意味します。
幻想なる絶対の神器とは神のキャラの中で、恐らく禁忌のキャラクラスのような上位のキャラだけが使える装備品のようなもので、禁忌のキャラ同様存在自体殆ど知られていない物だ。そう考えると、真波が背負っている華煉高の校長の娘という肩書きは伊達じゃないらしい。
幻想なる絶対の神器と神聖なる均衡の武具の一番の違いはベースとなる物の違いだ。神聖なる均衡の武具は武器ベースなのに対し、幻想なる絶対の神器はこれといったベースは存在せず、幻想なる絶対の神器は身体を直接変化させるという特徴をもつ。あと、他の違いと言ったら、神聖なる均衡の武具よりも、幻想なる絶対の神器の方が技の威力が高いといったところか。どちらにせよ、神聖なる均衡の武具も幻想なる絶対の神器も神話級の破壊力を持つ武器だ。相手にしたら一筋縄でいかないのは確かだろう。
売り言葉に買い言葉とはいえかなり調子に乗りすぎた。今の状態では、俺の勝ち目はゼロだ。全く、何て事を言ってくれたんだ。サクヤは。
◆
なんか遼平がさっきから苦虫を噛み潰したような顔になってきてるのを確認し、「ゴメンね」と心の中でこっそり謝っていると、突然隣から声が掛けられる。
「えっと、サクヤちゃんでいいんですよね?えっと、早速で悪いんですけど、彼が使っているあのキャラは...なんですか?」
話しかけてきたのは長い黒髪を三つ編みにし大きな眼鏡をかけている、THE優等生という雰囲気の初対面の女の子だった。
「あっ、自己紹介がまだでした。私、学級委員長の南部香奈っていうんですけど、ええと、その、よろしくお願いします!」
少しつっかえながらも自己紹介をしてくれた香奈ちゃんは、「上手くコミュニケーションを取れたかな」と不安げな顔でこちらを見ている。それを払拭させるかのように、私は笑顔で答える。
「うん、よろしくね香奈ちゃん!えっと、知りたいのって遼平が使ってるキャラだよね?」
香奈ちゃんは、弾けたように笑顔になった。
「はい、そうです。あのキャラは何ですか?あの、腕に付いてる金色の奴とかも見たことがないんです。学校でも出てきたことありません。」
「そうだね〜。モニターを見てもキャラネームと属性とかしかでないし、『モイラ』っていうのが光属性っていうのしかわかんないよ〜。」
突然、特徴のあるのんびりした声が聞こえ、驚き辺りを見回すと、香奈の後ろに舞音がいた。身長が低すぎて気がつかなかったって言ったら怒るかな?言わない方が賢明だね。
「きゃっ!舞音くん、おどかさないで下さいよ!まったく、貴方はただでさえ小学生みたいに小さくて気が付きづらいんだから、一声かけてくださいよ。」
「ちっちゃくない!」
言った!この人言い切っちゃたよ!舞音めっちゃ顔膨らませておこってるよ。そんな行動とってるからちっちゃいって見くびられるんじゃないかな?
思ったのが顔に出てたか、舞音がこっちを見て「がるる」とでも言いたそうに威嚇する。でも、何というかそういう仕草も小動物だと思う。とりあえず怒ってる舞音をなだめて香奈ちゃんの質問に答えることにしよう。
「遼平が使ってるのは神のキャラだよ。神聖なる均衡の武具は分かるよね?モイラってキャラの神聖なる均衡の武具みたいなのがあの左腕のやつだよ。」
「遼平くんって神のキャラ保有者だったんですか!?じゃあ、真波ちゃんの口調的に、真波ちゃんのアルテミスより強いってことですよね?!」
香奈が驚いた様で、目を丸くしている。
「うん。キャラ的にも、実力的にも、アルテミスよりは確実に強いと思うよ。でも、今の遼平じゃ絶対に勝てない。」
「えっ?それってどういう......」
「見てればわかるから。」
香奈の疑問を遮って私は遼平達の方に指を指す。それは今まさに戦闘が始まろうとしていた。
突然、真波が弓を構える。それとほぼ同時に光の矢が現れ、弓にセットされた。
神聖なる均衡の武具は、それを使うだけで、無詠唱で技を打つことができる。さらに簡単な詠唱を行うことで超強力な技が打てたりもする。
そのため真波が弓の神聖なる均衡の武具を構えてから、技が発動するまで1秒とかからなかった。
「シャイニングボウ!」
真波が構えた弓から、先程の矢が、体育館の高い天井に向かって放たれる。それは天井スレスレで炸裂し、無数の小さい矢となって雨のように降り注ぐ。
「やっべ!」
遼平が叫び、左手を空に掲げ...
その瞬間、遼平の左手の幻想なる絶対の神器が光と共にかき消える。そのまま生身の左腕を突き出した姿の無防備な遼平に幾つもの光の矢が突き刺さる。
「えっ!?嘘でしょ?」
真波ちゃんがそう叫んだと同時に、戦いの終わりを宣言するかのように、防護フィールドがかき消え、唖然としている真波ちゃんと倒れている遼平の姿が取り残された。
「あー、流石に気絶までは治らないんだね。」
一応、遼平の様子を見に行って無事なのを確認し呟くと、真波ちゃんが涙目で駆け寄ってきた。
「どういうことなの、サクヤちゃん!なんで遼平くんは、キャラ解除をしたの?生身の遼平くんに思いっきり技をかましちゃったぁ〜。どうしよう、大丈夫かな!?」
「平気平気!調子に乗った遼平が悪い!」
私は笑顔で即答した。
神聖なる均衡の武具を消すためには、キャラを解除しなくてはならない。つまり、先程の遼平の手から幻想なる絶対の神器が消えたということは、遼平が戦闘中にも関わらず、キャラ解除をしたということになる。
涙目な真波ちゃんにどう説明しようか迷っていると、体育館の扉が唐突に開かれ、1人の人が入ってきた。
「げ!お母さん!」
真波ちゃんが心底嫌そうな顔をして叫んだ。この親子って仲悪いんだっけ?
「全く、さっきの遼平たちの様子から、こうなることは予想がついたんだがねぇ。ちょっとばかり遅かったようだよ。初めての学校に嬉しくなるのは分かるんだけど、ユウナと似たというか、遼平は無鉄砲だ。」
突然の来訪者、真澄さんは、倒れている遼平を見て呟いた。