勇士
「……ディエモス伯爵に斬られたと聞いていたが、ここに何の用だ」
《オニキス=ブラッド》の猛者たちに囲まれながらも悠然と剣を構える仮面の剣士を前に、ログが押し殺した声で訊ねる。
「斬られたわけではないさ。あの夢見がちな騎士殿に花を持たせただけでね。それにヒュールフォン殿下の負けも見えたからな」
「……エールス村の一件も罠にかける魂胆だったか」
「本来、あの魔剣を持つ資格はわたしにある。ついでに悪用していた連中の化けの皮を剥ぐつもりだったが、用心深い男だな、貴殿の主君は──おかげで余計な道化の振りをするはめになった」
仮面の剣士は肩をすくめて見せた。
「道化が主君を見限っていまさら何をするつもりだ」
ログは構えを解くことなく、さらに詰め寄る。
「貴殿との勝負にケリをつけたくてな。それにふさわしい理由もあるしな」
そう言うと仮面の剣士は足許に横たわる《戦乙女の槍》の前に立つ。
「その槍をどうする気だ」
「ユールヴィングの手に渡さないだけさ。“機神”に勝つなどできないだろうが、念を入れておくためにな」
ログは仮面の剣士の目的を理解した。
先代ルーヴェン=ユールヴィングが“機神”に勝てたのは、古代の強化鎧《アルゴ=アバス》と共に、この槍があったからだ。“機神”を倒した《アルゴ=アバス》最大の攻撃システム〈アトロポス=チャージ〉は爆発的な魔力を武器に付与するシステムだが、その負荷に耐えうる本来の武器は長い年月のなかで失われていた。ルーヴェンは自らが見いだした決して折れることのない《戦乙女の槍》を代用とすることで、ようやく発動できたのだ。
「貴様は分かっているのか。あの“機神”の暴走を止めなければ、世界は破滅するかもしれないのだぞ」
「分かっているさ。少なくとも貴殿らよりはな」
「てめえ! こんな時に──」
含みを持たせる言い方に部下たちが憤慨するが、ログはそれを手で制した。
「挑発に乗るな。奴はわたしが引き受ける」
「その間に槍を回収して男爵のところに持っていけ──か。確かにそれが得策だが、そう簡単に持って行かれては困るな。では、時間稼ぎに少しだけ貴殿らの疑問に答えようではないか。もちろん、いつでも斬りかかってくれても構わんよ」
頭に血が上った部下たちが何人か踏み出すが、仮面の剣士は剣を構えたまま動かない。
「……貴様は“機神”を止める策があるというのか」
ログは訊ねながらも、隙を探る。
「すでに対策はとられているさ」
仮面の剣士は答える。向こうもログに隙を見れば、いつでも斬りかかる姿勢だ。明らかにこの緊張感を楽しんでいるようだ。
「……ヒュールフォンの胸に埋められていた、あの黒の宝珠は何だ?」
「おや、知っていたのか。これはかなりのネタばらしになるかな……あれは“機神”と直結する端末だ。あれを持つ者は機神”の機能を制御をする権限を持つのさ」
ログは驚かなかった。《アルゴ=アバス》の“心臓”と同じような物だというのは予想がついていた。
「ヒュールフォンは死んで“機神”に取り込まれている。それでも“機神”を制御できているとでもいうのか」
「端末が一つではないとしたら?」
仮面の剣士が答えると同時に踏み込んだ。ログは逆手に構えた短剣で咄嗟に受け止める。
「さすがに驚いたようだな? だが、“機神”は本来、エンシア全体の施設を支える基盤だったのだ。制御端末がいくつあっても不思議ではないだろう?」
二人は離れると、再び隙の探り合いに入る。
「ヒュールフォン殿下は自分だけが“機神”を制御できると思っておられたが、上には上がいるということさ」
「ヒュールフォン以上の権限を持つ者が、貴様の後ろ盾ということか」
「フィルディング一族も、一族同士でしのぎを削っているということらしい」
「だったら、何でそいつは“機神”を止めないのよ! 大勢の人が犠牲になってるのよ! あんただって勇士の子孫じゃないの!?」
叫んだのはタニアだ。ごく普通の、そしてまっすぐな少女にとって、平然と命を見捨てる事態を理解することも、割り切ることもできないのだろう。
「“機神”の覚醒は誰の筋書きでもない、予想外の出来事だった。だが、復活した以上はそれを有効利用するつもりらしくてね。少なくともユールヴィングと、その息のかかった傭兵どもは一掃させるつもりらしい」
「あんたは何もしないの!? ご先祖様は人々のために戦ったっていうのに、同じ名前のあんたはただ冴えない顔に仮面かぶってふざけてるだけじゃないのよ!!」
タニアがこれ以上ない剣幕で叫ぶ。おそらく、それがいま“機神”の脅威に逃げ惑うしかない全ての人々の代弁だろう。
その声に仮面の奥でどう思ったかは分からないが、勇士と同じ名を持つ男は剣を肩に担いだ。
「当然、勇士の後継者として行動させてもらうさ。だからと言って“機神”と戦えなんて無茶を言われても困る。“神”ですら滅ぼせなかった“闇”をどうしろと言うのかね?」
「だからって──」
ログは踏む込み、右の剣を振り下ろす。仮面の剣士は後ろに翻ることで斬撃を躱しつつ、肩に背負っていた剣をログの懐に滑り込ませる。ログはそれを短剣で受け流すとそれに弾かれたかのように自身も翻り、振り向きざまに剣で薙ぎ払う。仮面の剣士はそれを剣の柄で受け流した。
「──これは危うかったな。両手で斬られてたら受けきれなかったところだ」
「無駄口はもういい」
これ以上、タニアが訴えたところでこの男は何も動じないだろう。いまの剣のやり取りでログにはそれがはっきりと手応えとして伝わった。
「こちらの言い分を聞かないのも人が悪いな。“機神”が滅ぼせない以上、“機神”を巡る争いは避けられない。それは誰かが“機神”を支配し、確固たる体制を作らなければ終わらないのだ。ユールヴィングのような、ただ監視し、現状を維持するだけの猿芝居を続けているだけでは、この世界は真に平定できんのだよ。ならばわたしは、わたしだけしかできぬ勇士の子孫としての役を、そのためにしようとしているのさ!」
仮面の剣士は身を低くし、突きの構えに入る。その気迫は口だけでなく、本気で雌雄を決するつもりの表れだった。
「“機神”を止め、世界を作り替えるにも“物語”が必要だ。勇士の末裔によって“機神”は封印され、混乱する世界を戦って人々を恐怖から救う──これ以上ない、筋書きだろう」
「勇士の末裔がフィルディング一族の操り人形に堕ちるか──」
「ほら吹き男爵の傀儡に甘んじる貴殿に断じる資格はない!」
二人の姿が重なり、剣と剣が重なった。
『……いいか、グーの字。俺の言うことができるなら、合図を寄越せ』
マークルフは音声を絞り、地中にいる《グノムス》に言った。“機神”はまだ混乱から回復していないが、それもいつまでも続かない。急がなくてはならないのだ。
足裏に地面が盛り上がる感触が伝わる。
『……頼むぜ、グーの字』
“機神”の懐にマークルフは再び、飛びかかった。触手がはたき落とそうと襲いかかるが、マークルフはそれをかいくぐり、両腕の双刃で切り落とす。
再び“機神”に取りつくと、マークルフは大声で叫んだ。
『グーの字! やれ!!』
マークルフの命令に応えた《グノムス》が攻撃に移った。辛うじて残った城壁の断面から幾つもの尖った石柱が伸び、城壁の跡に挟まれる場所にいる“機神”を両側から貫く。
同時に“機神”の胸をマークルフは再び切り裂いた。先ほどのような鋼糸の攻撃はこない。ヒュールフォンと同じだ。《グノムス》に受けた損傷の修復に力が割かれ、こちらへの対応が遅れている。
モニターが魔力の流れを映像に重ねる。“機神”の内部は魔力に満ちていたが、目の前の先だけ、魔力レベルが薄い箇所があった。
マークルフはそこを目指して双刃を振り回す。鋼糸を切り裂き道を切り開く彼の前に、不意に空洞が姿を見せる。
『リーナ!!』
マークルフは空洞の中央に、鋼糸の蜘蛛の巣に捕らえられたリーナを見つけた。その長い金色の髪が、巣で力尽きた蝶の羽根のように下に垂れている。
『俺だ! 返事をしてくれ!!』
最悪の事態が頭をよぎり、マークルフが叫ぶ。もし、“機神”に与えたダメージがリーナにまで及んでいたとしたら──
だが、リーナは力を振り絞るように顔を上げると、マークルフに向けて笑みを浮かべる。だが、すぐに力を失い、首が下に向く。
『待ってろ! いま、助けて──』
間を遮る鋼糸を切り裂こうと振り上げた右腕に鋼糸が巻き付いた。動きを封じられたマークルフに次々と鋼糸が巻きつく。“機神”がようやく、こちらに力を入れ始めたようだ。
『邪魔すんじゃねえ!!』
マークルフは右の双刃で鋼糸の壁を貫くと、右腕部の装甲を丸ごと切り離し、自身の右腕を引き抜く。
“機神”の胎内に刺さった刃が真紅に輝き、破壊の魔力を放つ。それは猛毒のように“機神”の組織に広がり、破壊していく。マークルフを狙う鋼糸の群れが収束し、拘束していた鋼糸の力も緩む。
マークルフは残された左の《魔爪》でまとわりつく鋼糸を切り裂くと、リーナに向けて突き進む。
《アルゴ=アバス》の右腕部は攻撃に特化した武装だ。その右の《魔爪》からは破壊の魔力を放つことも出来る。それを直接、刺されて発動されては、周囲の鋼糸も再生に力を注がざるを得ないだろう。それに“機神”は生存本能(と呼ぶべきかは分からないが)を優先するのか、自身の受けた傷の再生を優先する傾向にあるようだった。
リーナの前に辿り着いたマークルフは彼女を拘束する鋼糸を左の刃で一気に切断した。
すぐに新たな鋼糸が飛び出すが、それよりも早くマークルフは右手で彼女の腕を掴み、一気に後ろに飛び退く。引き寄せた彼女の身体を左腕で覆うように抱えると、すぐにいま来た道を戻る。さすがに“機神”もリーナの奪還を優先したのか、外に出る道が塞がり始める。
『もう遅え!』
マークルフは壁に刺さっていた《アルゴ=アバス》の右腕部に再び腕を通した。
再接続と同時に、右腕に激痛に似た信号が一気に流れ、マークルフは苦痛に顔をしかめる。
“聖域”の制約に抗いながら破壊の力を強引に発動したために、搭載された動力ユニットの一つが稼働限界を超え、右腕部の内部機構もすでに半壊の状態だったのだ。
だが、それでも構わずにマークルフは右腕を“機神”の胎内に突き刺したまま、強引に前に振り抜いた。鋼糸の内壁を斬り裂き、破壊の刃から放たれる最後の魔力が、立ち塞がる鋼糸を破壊した。
同時に右の《魔爪》が砕け、右腕部の装甲の隙間から火花が散り、信号が途絶えた。
マークルフは外へと飛び出すと、背部のバーニアに残された魔力を注ぎ込む。
少しでも、リーナを遠くへ逃がさなければならない。
リーナが本当の戦乙女なのかは分からないが、再び“機神”の手に落ちれば、もはやその脅威を止める術はなくなるのだ。
『──そこまでだ!』
背中に強烈な一撃が加わり、マークルフはリーナを抱えたまま地上へと墜落していく。
いまの攻撃で推進システムが破壊され、空中で身動きがとれない。
咄嗟に背中を地面に向け、リーナを不時着から庇おうとする。
その目の前に先端が鋭く尖った鋼糸が迫っていた。
かろうじて首を傾けたが、その鋼糸がモニターの右半分を砕いた。
モニターが沈黙し、直視するしかなくなった右目が、新たに迫ってくる鋼糸の群れを捉える。
狙いはリーナだ。
『渡すか!』
マークルフはリーナを抱えたまま地上に背を向けると、左手甲から魔力の盾を展開して鋼糸からリーナを守る。
そのまま、地上と水平になるように軌道を修正しながら、マークルフは地上へと叩き付けられた。背中から地上に接触し、リーナを庇いながら地面を滑り続ける。摩擦で背中から火花を散らしながらかなりの距離を滑るが、ようやく勢いが止まると、リーナをゆっくりと地面に下ろした。
マークルフは自分の状態を確かめる。全身が重い。すでに自分の肉体に《アルゴ=アバス》の装甲と同調する力が残っていなかった。モニターでシステムの自己診断を確認することもできない。いや、もはやそれも役には立たないだろう。
『随分と手こずられてくれたな、ドブ犬』
頭上から二度と聞きたくはなかった声がする。
『……もう、復活しやがったか』
“機神”の顔面を覆う一際、大きな甲殻に下半身を融合させた鉄ミイラ──ヒュールフォンの声だ。ヒュールフォンを取り戻した“機神”は“悲鳴”も瞬く間に収まり、対消滅現象も消えた周囲は、甲殻の凶光が不気味に連なる静寂にとって変わっていた。
『グーの字!! リーナを連れて逃げろ!!』
マークルフは叫ぶと残った力を振り絞って立ち上がった。リーナを渡したら、もうお終いだ。
『させん! その鉄人形にはそろそろ退場してもらおう!!』
“機神”から放たれた幾本もの触手がマークルフの周囲に突き刺さった。やがて、その触手の群れが地面を割って地表に飛び出す。その先には触手に串刺しにされた《グノムス》の姿があった。触手の群れは《グノムス》の巨体を軽々と放り投げると、辛うじて残っていた城壁へと叩きつけた。
『グーの字!?』
マークルフは叫ぶが、城壁の残骸に埋もれた《グノムス》が動く気配はなかった。
『これで邪魔者は消えた』
“機神”の触手が空気を切り裂きながらマークルフに振り下ろされる。躱す力も残っていないマークルフに巨大な質量の鞭が叩きつけられた。
『──グアッ──』
マークルフは地面ごと装甲を砕かれながら苦悶の声を吐き出すが、外部音声機能はすでに死んでいた。
『どうした? 声が聞こえんとつまらんではないか? 最後ぐらい威勢良く吠えたらどうだ?』
触手がマークルフに巻き付き、持ち上げると地面に叩きつけた。だが、触手は離れず執拗に地面に叩きつけ、さらに他の触手が鞭の嵐となって半壊状態の《アルゴ=アバス》を容赦なく打ちつけていく。
「──って!」
猛攻に翻弄され、意識が混濁するなか、その声がはっきりと聞こえてた。
リーナの声だった。
攻撃が止んだ。触手が離れ、自分が地面にうつ伏せに倒れていることを知る。
自分の状態を確かめることもできないが、《アルゴ=アバス》がまだ機能停止していないことが奇跡的なのだけは分かった。
「……やめて」
今度ははっきりと聞こえた。
マークルフは声のする方に首を向けた。
リーナもまた、ままならない身体を引きずるようにしてマークルフに近づくと、“機神”から庇うようにその前に立とうとして、その場に崩れ落ちる。
「……大丈夫ですか、マークルフ……様──』
リーナが声を振り絞り、気遣うようにマークルフの剥き出しになっている右頬に触れた。
全身が激痛を襲うなか、その細く柔らかい指が、無性に心地よく感じられた。
『戦乙女よ、我が元へ戻ってもらおうか。その男の命を助けて欲しければな』
ヒュールフォンの声が響く。
マークルフは立ち上がろうとした。リーナを渡すわけにはいかない。しかし、上体を腕で支えるのが精一杯だった。
(……このまま……“機神”を……野放しに……は……できない)
マークルフは自分ができうる最後の選択を迫られた。
このままでは、リーナは自分を助けるために再び“機神”の虜囚となる道を選ぶだろう。
(……それだけは……何としても……)
マークルフは何とか動く左腕を持ち上げた。左の《魔爪》も根元から折れていたが、その欠けた先を、リーナの喉元へとふらふらと持ち上げた。
『……すまない……俺は……』
マークルフは自分の不甲斐なさを呪った。自分は結局、リーナを助けることができなかった。リーナを護る誓いを果たせずに倒れていくことは、このまま死ぬよりも残酷だったが、いまこここで、“機神“を止めることができるのは自分しかいないのだ。
リーナは動かなかった。その表情はいつものように穏やかだった。
その表情に胸が張り裂けそうになる。切っ先がすぐ目の前に迫っているのに、彼女はただマークルフに身を委ねるように、側に座っている。
腕が震えた。力が出ない。それとも躊躇いなのか──逡巡するように揺れる切っ先が、やがて地面へと落ち、自身も仰向けに倒れた。
《アルゴ=アバス》が完全に機能を停止したのだ。
自分の死に装束となるであろう鎧の重みが、逆にマークルフの背負った重責からの解放を告げるようだった。
(……祖父様……止めてくれたんだな……ありがとう……ごめん……よ)
マークルフの無念に追い打ちをかけるように、ヒュールフォンのあざ笑う声が空に響き渡せる。
『それが貴様の末路よ! くだらぬ使命を守れず、先代の骸を利用してまで手にいれた鎧も破壊され、わたしの前に屈し! 最後には守るはずの姫をも害しようとして、それすらもできなかった! それがわたしから祖国を、戦乙女を、そして名誉を奪ったドブ犬に相応しい運命よ!』
ヒュールフォンは完全に勝ちを確信したのか、腕組をしてマークルフを見下ろす。
『あの世で傭兵どもを従えて、好きな猿芝居を存分にするといい』
リーナの前に一本の鋼糸が舞い降りた。
『さあ、その男の正体がようやく分かっただろう。我が元に戻るといい。結局、自分が英雄になりたいだけの口先だけの男だったのだ』
だが、リーナはそれに背を向け、覗き込むようにマークルフの顔を見つめる。
「……ありがとう、マークルフ様──」
破壊された兜の中で、マークルフはかろうじて首を横に振った。
「違う……俺は……おまえを……」
だが、その悔恨の言葉はリーナの屈託のない笑顔に遮られた。
「あなたを勇士に選べたこと、私はとても誇りに思います。これで思い残すことなく、あなたに私を委ねることができます。ご存じでしたか。私、こう見えて戦乙女だったんですよ」
あまりに普通に、悪戯っぽく語りかける姿に、マークルフは途惑う。
「これから、私はあなたを護る武器になります。正直、どうなるか分かりませんが、あなたの盾として、先代様の遺したものを今度は私が受け継ぎます」
マークルフはその言葉を説明できる可能性に一つだけ気づいた。
「……まさか……そんなことが……」
「やっぱり、マークルフ様には分かっちゃいましたか。驚かせようと思ったんですけどね」
神の娘とは思えない少女は顔を近づけると、その唇でマークルフの剥き出しの右頬に触れた。
「これは“リーナ”としての最後の気持ちとお礼です……一緒に“機神”を止めましょう」
リーナの身体から光の粒子が放たれる。それはリーナ自身の姿を薄めながら、マークルフの周囲を風に舞うように散らばっていく。
『何をする気だ、戦乙女!』
ヒュールフォンが叫ぶと、リーナに向けていた鋼糸を彼女に巻き付けようとするが、彼女の姿はそれよりも先に散った。
「リーナぁああーー!?」
周囲の光の粒子が弾け、絶叫するマークルフを目映い光が包んだ。




