文明衛星ユウ
「もうこの星には住めない」
あれから何回巡っただろうか。
あの子は星に。独りぼっちで。
いつか戻る日まで。
星は汚された。
もう誰も住めないほどに。
月は使われた。
人の生きる場所に。
星で作られた最後の船に乗せられた。
あの子は乗せてもらえなかった。
「いつか迎えにくるから。それまで待っていて、“アイ”」
あの子は「わかった。待ってる」と言っていた。
あの子は“人”じゃない“モノ”だからって、置いていかれた。
わたしは泣いた。
何年経っただろうか。
窮屈な安全ドームに閉じ込められたまま。
あの子のところに行けない。
何も変わらず、年だけが重なる。
いつしか子供が産まれた。
あの子はわたしを覚えているの?
わたしはずっと、覚えている。
「“アイ”のこと、絶対に忘れないから」
約束したから。
千回周りを巡っただろうか。
孫もひ孫もいた。
わたしはもう、あの子を迎えに行けそうにない。
いや、行ったところでわたしがわかるだろうか?
わからない。
ただ、最期に……
わたしは、最期にあの子の名前を呼んだ。