二輪目
2人の出会いはいつの日のことか。
始まりは何事においても意味をなす。
「おかぁさん!!さくらぁぁっ」
「大丈夫ですよ、あなたはこれから神に仕えるだけなのですから。」
「おねぇちゃぁぁあん」「ごめんねぇ、つばきぃ」
断片的に残る、あの日の記憶。それが私と家族との最初で最後の記憶。幼い妹と年老いた母。10になった私を優しくそれでいて強く腕をつかみ我が家から連れ去ったオトナ。父の姿は見えず、母親が一家の家計を担っていたのが見て取れる。ぼろぼろの我が家。ワガヤ?それすら怪しい。逃げて、隠れた家なのかもしれないし、もとはお屋敷だったかもしれない。
「ツバキ、あなたはこれからこの土地の神のために働くのです。」
「かみってかみさまの、こと?」
「そうですよ、あなたは死ぬまで神に守られ神に仕えるのです。」
一瞬寒気がした。そうか、私は一生カミサマに縛られていなきゃいけないのか。一生、死ぬまで、ずーっと。……永遠に、だけでないだけいいのかもしれない。それでも、自らの生き死にも神様に左右される――なにも知らなかったはずなのに、全てをこの時悟った。その時点で私は既に、神に仕えるべくして生まれてきた人間だと、そう決まっていたのだろうか。
「休んではなりません、神の怒りに触れてしまう。」
「もう、だめだよ、疲れたよ、ねぇ休ませてよ」
「神がそれを許してくださると思うのですか!?」
思わない。そう今も昔も言いきれる。カミサマはいつだって自分の思い通りに物事を進めようとする。だから私を自分のしもべとした。わがままなカミサマ。でもそれ以上に私はわがままだったのかもしれない。
「ねぇ、本当のカミサマ……どうか、どうか、私を自由に、」
そう祈ったのはいつの日のことだったか。本当の神様、なんているなんて思わなかった。思っていなかった。ただ、ただ誰かに私の願いを聞いてもらいたかっただけだった。叶う、だなんてそんなことこれっぽっちも――考えていなかった、と言ったらウソになる。それぐらいに、私は神様以外にだけはわがままだった。
「この子、俺が買うから」「な、何を行っているんですか!?」
「ツバキは神に仕える神聖なる子だ。貴様、身分をわきまえてものを言え!」
「じゃ、あんたらはその神聖な子をこきつかってていいわけ?」
「全ては神の言葉によって動いているのです」「――でどうだ、結構いい値段だと思うが?」
うっすらと聞こえてきた会話。
「さ、今日からてめぇは俺のものだ。」
言葉と表情がかみ合ってない。どう見たって、どう考えたって。
――こいつは、私を私として扱ってくれる。そう感じたんだ。
まとまりがない。
それが今作品の目標、というより作者の癖です。
温かい目で流してやってください。