「とまあ、前の話までが2年前に書いた物語なんだが」
プロットって言うの?
あらすじって言うの?
まあそんな感じのものを会話形式で。
「とまあ、前の話までが2年前に書いた物語なんだが」
闇に包まれた海底に、男の声が流れた。
日本海海底を、安いジャージを着た一人の男が歩いている。
彼は、空気が空になった肺と声帯を動かして、ゴボリと呟いた。
「所で、誰か俺をサーチしてる舟、いる?」
【何か御用ですか?】
「うん。これさあ、俺が徒歩で行くと中国まであと何日かかるんだろう?」
【さあ。時間に干渉すれば2秒以内ですし、半島に向かったほうが早いですが】
「いやあ。高速移動はおもむきに欠けると言いますか……」
【で、何か御用ですか?】
「…………あの、俺、追っかけるはずがこうして龍次郎君と別れちゃったから、今後龍二郎君がどうなるのか、ちょっと知りたいなあって」
【最初から大陸に向かう予定だったのですから、あまり前後の不備は気にしなくても宜しいかと】
「そ、そうかな?」
【何せ、2年前ですから】
「そうだね! じゃあ彼が今後どうなるのかの話、お願いできるかな」
【了解いたしました。どの時点からお話ししましょうか】
「えと、バイクの人と病院を出た辺りからお願いします」
「あ、あと、メタな話って嫌われるかな?」
【一度エタった作品ですし、最初のhackedナノの台詞でもうアウトだから大丈夫でしょう】
「……その名前も大概だよね」
【私は好きですよ? hackedナノ】
「君がつけた名称だからね~」
【氏が向かった先はさる地下神殿。そこで親米派実行勢力の頭目と会話をします。ここで得る情報は】
諸外国が教導船を調査する中、親中派が邪魔して日本だけはまともな調査が出来ていない。
親中派は人体実験してる悪い奴だ。
主人公や死神マスクのパワーアップも親中派の人体実験だ。
(社会不適合者に力を授けて調子に乗った順に狩り出すはずが地下に潜られた)
教導船は暴走が確実視されており、悪い中国はそれに合わせて日本に治安維持出動する。
【この4点です】
「中国悪い奴だなあ。あと龍二郎社会のゴミ認定だったんだなあ」
【そのような感想と共に親米派と別れた氏は神殿そばの自宅に向かいます】
「なあ、神殿って何?」
【『地下神殿』でググると出ますよ】
「俺、地球のネットには繋ぎたくなくって……」
【知りませんよ。兎に角氏は自宅に向かいます】
「何で?」
【『元の世界に戻った』時にお土産を持っていなかったでしょう? それが自宅にあるのではないかって推測したんです】
「成る程」
【行動自体は正解でしたが、そこで同じく何らかの勘でお土産に気づいた死神マスクが全部掻っ攫って行きます】
「うわあ」
【こうしてガッカリしながら病院に戻った氏は、今度は親中派の話を聞くことになります】
「悪の親中派か」
【西日本に降りた教導船の内部で親中派の中心人物と会話します。内容は】
先に調査妨害してきたのは親米派。
米国は教導船のテクノロジーを独り占めして世界を支配するつもりだ。
教導船の暴走タイミングは米国だけが知っていて、やっぱり治安維持出動する気だ。
日米間の条約を盾に米兵の命令にのみ従う大量の超兵器な無人機がすでに国内待機している
【この4点です】
「アメリカ悪い奴だなあ」
【素直なhackedナノちょろいです】
「俺は最後に会話した奴の思想に染まるんだ。でも、これで龍二郎君どっちにつくんだろう」
【貴方と同じでちょろい氏は『無人機より人間のほうが会話が成り立つはず』って親中派につきます】
「この日和見野郎が!」
【その後はちょこちょこと小競り合いをしたり死神マスク氏と殺しあったりして、崩壊前ラストステージは“東京湾教導船”です】
「待って、前話でそんな場所に教導船置いてない」
【2年前ですから。茨城と東京を間違えたのでしょう。海上決戦のほうが見栄えがよろしいですし】
「……なら仕方ないか」
【で、茨城……ではなく東京湾教導船にて中米の代弁者たちがバトルを繰り広げるのですが、その最中に氏は東京湾教導船の全権管理者を発見します】
「ほほう」
【それが、物語中にも出ていたカグヤさんの前身】
「なんたること!」
【氏が驚愕したあたりで死神マスク氏が乱入、諸事情により教導船は無事崩壊します】
「無事、なんだ」
【そうです。この崩壊を引き金に全世界の教導船が米国の予定を裏切って暴走、米国の無人機も暴走、中国の人体実験兵士も暴走。おいふざけてんのか、やってられませんねって感じになって世界崩壊です】
「全部暴走って……ひどい」
【米中共に日本に構ってる場合じゃなくなります】
「うわあ……って米中以外の大国は?」
【先進国は似たような感じでアウト、途上国もやっぱりアウトですね】
「うわあ、これはひどい」
【ですが。そんな状況を救うため日本に勇者が現れるのです】
「おおっ! ここでか!」
【その名も、元死神マスクの『名称未設定』氏です】
「おおいぃっ!!」
【死神マスク氏は最初から『崩壊前は経験値稼ぎで皆殺し、崩壊後は犯罪歴も追えない世界で勇者になるよ』って言ってました。だからマスクで顔を隠していたわけですし、初志貫徹ですね】
「うわあ、龍二郎君に見せ場がない」
【ですね】
「フォローしてあげてよう」
【この辺りでメンタルやられちゃった氏はトドメに親中派の改造人間、未来において亜人と呼ばれる物の前身の製造工場を見てしまい『もうやめてよう、僕切り刻んで実験していいから』って言っちゃいます】
「悲壮だね」
【所詮氏なんて英雄譚の“ツマ”ですから。添え物ですから】
「ああ、だから題名が……でもフォローしてあげてよう」
【で、実験失敗して理性失って青い殺戮モンスターになって封印されて、封印が解けた直後にまた封印されて、以後それの繰り返しです。最初の失敗から千五百年経って漸く復活したら理性復活の代償として記憶9割消去で青肌の痴女にジョブチェンジしていたわけです】
「……いたたまれないと申しますか……何と言えばいいのか」
【青い怪物を最初に封印するのは勿論元死神マスクの勇者様です。こうして日本人は暴走兵器と亜人から身を守るため、勇者様の元一つになる訳です。その後の日本はまた別の物語ということで投げます】
「……もう、ね?」
【そういえば本編物語中に超強い化鳥さんがいましたけど、覚えてます?】
「流石に2年前の記憶は……」
【化鳥さんが仕えた唯一無二のご主人様が、元死神マスクの勇者様です】
「……もう、やめたげてよう……」
【彼もまた名称未設定ですが、勇者様のネーミングセンスが厨二過ぎて名前を封印したって設定が】
「ああ……元殺人鬼の勇者様マジ英雄してるんだな」
【まあ、勇者様の子孫が賢者となり、氏が青肌の痴女になってから報いを受けるのですが】
「子孫が居るってマジかよ」
【未設定故どうとでもなるのですが、勇者様はハーレムエンドで大往生したって確定しておきますか?】
「もう本当にやめたげてよう……」
【それは残念です】
「でもまあ子孫が報いを受けるんだよね。それって龍次郎君がバイクの人と出会ってから何年後?」
【千五百年後、くらいでしょうか】
「めっちゃ遠いなおい」
【だって勇者様本人は数字の上では殺害人数を遥かに超える大多数の人間を救うことになるのですから。むしろ功績から考えれば報いを受けてしまうのが可哀そうなくらいですよ】
「でも、勇者様龍次郎君の両親殺してんねんで?」
【知人も他人も数字でみれば等しく“1”ですよ】
「……うわあ」
【そして、この会話劇の後にもう2話載せるのですが、それが『青肌の痴女復活』と『本作第一部前後のhackedナノ』の短編となります】
「これも2年前に作った話だね」
【ですね。これで『英雄譚のツマ』として書かれた文章は全て吐き出されることとなります】
「いやあ、ご苦労ご苦労。でも何で今更若さゆえの過ちを披露するんだろう」
【簡単な事です。どんな酷い終わらせ方でもエタるよりまし……ではありませんか】
「成る程ね。コメントは控えておくよ」
そういえば、青い人が悪趣味なまでの光物好きな理由作り忘れてたな……
次話でも光物に固執してるんだよな……
まあ、発狂した時に知性が下がってガラス玉にも大喜びするようになって、ライゼランと名乗るようになってからは金銭的価値にも固執するようになったとか、そんな感じで。