異世界? 否、未来からの帰還
前の話を観ないで読むと、ちゃんと話が繋がるオモシロ仕様です
――目覚めた翌日。
ベッドの上でゴロゴロしていると、親戚の伯父さんが入ってきた。
伯父さんは俺を見て破顔すると、ドタドタと駆け寄る。
「龍ちゃん、ようやっと目ぇ覚めたか!」
「あ、伯父さん。ご心配をおかけしました」
「んなこたいいんだよ、良かったよ! 龍ちゃんが起きないって聞いた時はびっくりしたけどさ? とにかく良かった!」
「いや俺もびっくりですよ、いきなり病院なんですもん」
俺の背中を叩いて笑う伯父さんに、俺も笑い返し、そのついでに聞く。
「ところで、ウチの親はどうしてます?」
その質問に、深い意味はなかった。両親は正社員として共働きだし、フリーターの俺について良い感情を抱いていない。
他にも色々あって、はっきり言えば親子関係はだいぶ悪いと言えるだろう。
だから、実の親より早く伯父さんが来たのも当然だと判断していた。
ただ、自宅にあるんだろう携帯が欲しいだけだった。
対して、ソレを聞いた伯父さんは予想以上の困り顔となり、考えるそぶりを見せる。
「うん……まあ、起き抜けに言うのはどうかとも思ったんだけどさ……」
とても言いにくそうにしている。
まさかウチの両親も寝てんのか? それとも、コレを好機と絶縁でもされた?
俺には1人で生活する甲斐性とかないよ?
「まあ、いずれ知る事だし龍ちゃんもいい歳だから、早めに言っといた方がいいよな」
伯父さんは1つ頷くと、両親の現状も含めて、俺が意識を失っている間に起きた事件を教えてくれた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――数日後、深夜。
退院を翌日に控えた俺は、何やら騒ぎが起きている病院の駐車場に目をむけながら、今後の予定を考えていた。
俺の知らないうちに、世界は大きく変わっていた。
俺が意識を失い入院した翌週に、600隻の宇宙船が地球に降ってきたそうだ。
全長100kmを上回る箸のように細長い宇宙船は、大気圏内にて姿勢を反転、水陸の区別なく各地に垂直着陸した。
世界中に降り立った宇宙船はそのまま地中に潜ると、先端だけを地上に出して停止。不幸にも着地点にいた数百万の人間に犠牲が出たが、外見から見る分には以後なんの反応も起こしていない。
日本の国土にも、茨城と岡山に2隻の宇宙船が埋まっており、国会が紛糾している。
北方領土の脇にも1隻落ちたけど、あれは3隻目と言っていいのだろうか?
何はともあれ沸き起こる議論。
攻撃するべきか、見守るべきか。
周辺住民の避難をするべきか否か。
国連すらも混乱する状況で、誰も動けない。と言うのが、マスコミが言う表向きの状況。
実際には、動画サイトや交換ソフト等で先進国が内部侵入を試みている事が判明しており、中国より“宇宙船内部”として流出した動画が、本物であるかがネット上で議論されている。
世界のネットユーザー的には『中国が内部に侵入出来て、他の先進国が侵入出来ないはずがない。諸国の流出動画への対応を見てもこの動画は、中国が国威高揚のためにわざと流した偽物であると断言できよう』との意見が大勢を占めている。
マジョリティーの言うところによると、マスコミとネットの情報に致命的なまでの乖離があるのは、政府が偽情報を脅威と捉えておらず、かといって痛くも無い腹を探られたくも無いので無視するようにマスメディアに通達しているからだ……と言う事。
だが、俺は本物だと考えている。
あえてこの様な世論を作り、市民には内部調査が不可能と思わせ、その間に各国は“本当に極秘の内に”調査を進めようとしている。
あれは……あの映像は、塔の最上階だ。
その映像を確認した俺が、一つの可能性に行き当たることは誰でも想像がつくだろう。
俺は異世界の旅を思い返しながら、日本地図を開く。
一番判りやすいロケーションは、広大な湖の隅に小島が一つある場所。
…………ああ、あの親子は、琵琶湖に居を構えていたのか。
俺が異世界に行った訳じゃ無い事が、確定したようだ。
俺の事はいいとして、宇宙船襲来に前後するタイミングで大量殺人犯が出現した。
通称『死神マスク』
圧倒的な身体能力で人を殺しながら本州北端より南下する小学生で、保護法により本名は不明。
現在は首都圏のどこかに潜んでいる事が判明している。
元々はどこにでも居る引きこもりであったが、ある日突然父親を殺害。各地の食料品店を襲撃して食料を調達しながら、好き勝手放題に逃走を続けている。
いくつかの顔写真が流出しているものの、本物であるかは不明である。
なぜなら、死神マスクの学区内の人間は、9割が殺されたから。
名前の通り、悲鳴を上げる死神のようなホラーマスクをしており、一時期同じマスクを使った模倣犯が増えていたらしい。
だが本物が銃弾を見てから回避するような化物であるため、偽死神マスクへの発砲事故が多発。模倣犯達は警察相手に頭の悪い裁判を起こしている。
奴が都内に入る前に起こした現在最悪の大虐殺により、ウチのご町内は両親を含め全滅、現在も立入禁止だ。
そう。生存者は入院していた俺だけ。
当然葬儀も終わっていて、両親は既に墓の中。
俺は目が覚めたら、何もかもを失っていた事になる。
伯父さんからソレを聞いた直後には、別に何の感傷も抱かなかった。
だが驚いた事にその日の夜、ちょっとだけ、1人で泣いた。
自分の置かれた状況を理解した翌日、血液検査を受けた俺は隔離病棟に移された。
俺の体内には赤いナノマシンが流れているらしい。
どうやら魔力とはナノマシンの事だったようだ。
政権与党が極秘裏に接触してきたが、翌日には米中両国から『日本政府が超人確保』の情報が流出しているのが虚しい。
もう1度言うが、両国“から”であって、両国“に”じゃない。
ネットでは『死神マスクが日本政府の飼い犬になったらしい』なんて事になっている。
間違えている部分は流出先が俺に配慮してくれたようだ。
でも死神マスクがまた動き始めるとマズイぞ。頑張れニッポン。
検査解析のために血を抜かれながら試したが、東京から筑波の学園都市くらいの距離であれば離れてもマシンの制御は可能だった。
検査に協力するつもりはなかったので、ナノマシンには血液の真似のみをさせておいた。
検査されながら(血液で)聞き耳を立てていたおかげで、宇宙船の降下と前後して身体能力の異常発達した若者が数十名確認されている事と、血液にまで変化があるのは(検体の中では)俺だけだと言う事が解った。
カグヤに魔力をもらう前の俺と、今の俺の能力を考えるに、このアドバンテージは恐ろしくデカイ。
俺以外の人間は誰も魔法、もといナノマシン制御によるESPもどきが使えない訳だから、例えば本気モードの『魔眼の少女』相手に防御の上から2~3発もらうだけで皆立てなくなるだろう。
俺は、手加減ありとはいえ彼女相手に二時間持った。この差は圧倒的だ。
なにはともあれ、色々と試して現在でもESPが使える事は確認した。
恐らく、空気中にナノマシンが存在していないので、体液を媒体としてしかESPを発動させる事が出来ないのだ。
よって魔法を使うためには、体内のみで終わらせるか、口を付けた水とかを侵食して制御下に置く必要がある。
見た目は『水の念動能力』みたいになりそうだが、制御訓練を繰り返すことで自由度は恐ろしく上がった。
自分の体内にのみナノマシンが存在すると言う状況は、錬度の上昇に大きな影響を与えた。
外からの補充が出来ないので、ナノマシン複製速度を自由意志で調節する方法なんて言う、あっちの世界じゃ考えもしなかった物を覚える必要に迫られたし、その他の部分でも色々と足りないものを体内で生成する内に、向こうの人類とすらかけ離れた技をマスターする事が出来た。
試す気はないが、もう首が胴体と離れても死ねないかもしれない。
そして今、窓を開けて病院の庭を見下ろす俺の視線の先で、人外の筋力を持った何者かが格闘戦を繰り広げている。
多分俺も、ああ言うのになる予定だったんだろうな。
フルフェイスメットにライダースーツの黒ずくめが、学生服二人を襲撃している。
ペットボトルの水を口に含みながら眺めていると、学生さんが俺に気付いたようだ。
男子学生がライダーの囮になる隙に、女子高生が壁を駆け上がって来る。
ここ5階なんだけど、器用な娘さんだ。
女子高生を部屋に入れてやると、彼女は切羽詰まった顔で叫ぶ。
「お願い、逃げて!」
「なんで?」
「あれ見て解るでしょ!? 私は貴方の護衛! アレは悪い奴!」
「はっはっは、人を見た目で判断してはいけないよ」
「うがーーー!」
キレる女子高生。
笑いながら庭を見やると、冗談みたいに壁に埋まって力尽きた男子高生の顔面を鷲掴みにしたまま、こちらを見ているライダーと目が合った。
……普通、全身黒に染めたらバイザーにもスモークフィルム貼ったりするんじゃない?
まあとにかく……
「……逃げるのは無理じゃね?」
「いいから早く!」
女子高生は涙目で俺を引っ張るが、俺は動かない。
ライダーはその場で僅かに足を曲げると、地面を砕く勢いで跳躍、20m以上の距離を一跳びで越えて窓に掴まると、部屋に侵入してきた。
女子高生が俺をかばう様に前に出るが、ライダーは彼女を完全に無視、俺を見て言った。
「あんたが渡会さん?」
「ええ、そうです」
俺はボトルの水を飲みながらニコニコ笑顔で答える。
「あんたに、俺達の仲間になってほしいんだ」
「んー……勧誘の前に活動理念とか教えてくれないの?」
「こいつらはただの――!」
女子高生が叫ぶが、皆まで言い終える事が出来ずに窓からダイブする。
ライダーが一気に詰め寄り、投げ捨てたのだ。
おお、早い早い。
女子高生は空中でバランスを取ろうとするも、投げられた際の回転を抑えきれず着地に失敗、派手に転倒。死んではいないようだが、ちょっと痛そうだ。
「黙って来てくれると、助かるんだけどよ?」
自分の力を誇示する喜びに酔っているっぽいライダーは、俺のアゴを掴むと、軽々と持ち上げた。
何この人、無駄にけんか腰だけど。
「ライダーさん、普通こんな持ち方されたら喋れないやん?」
「交渉とか面倒だろが? だから喋れなくても肯定なんだよ」
「それってアバンでやられる三流の悪役っぽくない?」
煽りながらナノマシンを操作、一瞬だけ体温を100℃ほど上げてみる。
「調子のってっのあっっっつうぅ!!」
所詮肉体性能が上がっても筋力と神経のみ。耐熱性能は皆無だな。
放り投げられた俺は、ベッドを圧し折りながら音を立てて着地すると、侵食を済ませておいたペットボトルの水に指示を与える。ボトルの破裂音と同時に現れた蝉の羽より薄い水の壁が、ライダーを囲んだ。
「ちょ! おい!? 何だコレ?」
本能的なものか、とっさに水壁を殴りつけるライダー。だが、彼の能力でどうにかなるほど俺の魔力……マシン力? は低くない。
たとえこいつがそこいらのヒーローより強くても、この壁は壊せねーな。
水の壁を徐々に狭めながら、足掻くライダーに質問をする。
「ライダーさんは、どんな勢力に入ってんの?」
「や、ちょっと待てって! 壁止めて!」
「喋れなきゃ肯定だっけ? この質問に肯定で返すあたりライダーさんマジリスペクトっす」
「わーーー!!」
むー……
煽りなら任せろー。でも拷問ってどうやればいいのかな?
「ライダーさんから情報を得るには、俺は何をしてあげればいいのかな?」
「助けてー!! 助けてーー!!」
「え~…… 無難すぎて、ちょっと……」
「きぎゃーーーー!!」
ミシミシ言ってるので壁を水に戻す。
ずぶ濡れになってへたり込んだライダーに視線の高さを合わせると、俺は可能な限り優しく微笑んだ。
「話が進まないからさ、君らのボスんとこ連れてってよ」
多分彼もそのつもりで来たんだろうし、そのほうが話は早いよね。
「了解しましたぁっ!!」
ライダー半泣き。
コレだけの事をしでかしてドアから出ようとするライダーを問答無用で窓から投げ捨てると、彼の悲鳴を追って俺も飛び降りる。
ライダーはゴロゴロ受身を取って着地、俺は受身とか知らないので、手でアスファルトを砕いてショックを吸収しながら着地した。
地面と俺を交互に見たライダーは、恐る恐る質問をする。
「わ、渡会先生は少々前までお眠りでいらしましたんじゃございませんか?」
「気にしないでいいから。で、ライダーさんの仲間はどこ?」
笑顔で聞くと、ライダーは微妙な敬語で俺を案内してくれた。
病院裏にバイクが隠してあったのだ。
見た目はアメリカンだけどタイヤが細い、実に彼に似合ったバイクだ。
ちょっと離れた場所に面接会場を確保してあるらしい。
俺はライダーのバイク(と、その周囲)を確認すると、エンジンを掛けて待つように申し付け、まだ立ち上がれない学生2人の元へ向かう。
少年は昏倒中、少女は足をひねったようだ。これでは立ち上がるのがやっとだろう。
「ちょっと出かけてくるからさ、大丈夫、明日か明後日くらいには戻ってくるよ」
「待って! ちょっと……待って……!」
慌てるように手を伸ばす彼女を気にせず周囲を見回す。
何も出てこない。
今日までの観察から考えれば護衛がたった2人の子供しかいないはずはなくて、病院の周りは自衛隊っぽい人たちに囲まれていたはずなんだけど……
脱出に手間取る可能性も考えていたけど、拍子抜けだな。
と、ライダーがバイクを押してやってきた……こいつ、ホンットーに……
ここで火器を持った敵に遭遇したらどうするつもりなんだ?
抜けてるとか話聞いてないじゃ済まねーぞ……
「せ、先生? 宜しかったら後ろ、乗ります?」
「……いや、もうどうでもいいや。メットないから走るよ」
「流石先生! 交通ルールを遵守するその……あ、いえ何でも御座いませんです。じゃあ行きますんで、俺について来てください」
俺の視線の意味に気づいているのかいないのか、ライダーは漸くセルを回す。
見た目と裏腹に軽いエンジン音で動き始めたバイクを追いかけながら、俺は少し後悔もしていた。
今の俺は、凄く強かった。
護衛、襲撃者のどちらも、はっきり言って雑魚だ。殺す気ならESPなしでも倒せた。
塔によるのであろう肉体強化にはばらつきがあるようで、俺はかなり恵まれているらしい。死神マスクも恵まれた方なんんだろう。
そして俺には魔法……ESP、いやPK? まあそんな能力まである。
本当に誰もこの力を持ってないなら……持っていたとしても、ナノマシン制御によるダメージコントロールの発想がなければ。
イスルギや白金の天使と言う英雄のいない世界において、俺は圧倒的最強って事になる。
今の戦闘における自分の行動を思い返すに、俺はその現実に酔っている。
それもライダーさん以上にだ。
きっと俺の両親の仇も、この感情に呑まれて狂い、殺戮者になったのだ。
俺のなれの果てを自称するお嬢様は、1度狂ったのだと言っていた。
俺は、正気を保てるのか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「いや、小数切捨てでも99%保てないんだけどね?」
――戦闘があった病院の屋上。
気絶した親中体制派スナイパーの上に座って、俺……元・渡会龍二郎は一人呟いた。
本当は彼がライダーの男を殺しちゃって渡会君と親米派との接触には一手間かかるんだけど、ライダーの人は生きてても死んでても歴史に影響を与えないうえに、2ヶ月後には絶対死んじゃうから何しても良くて楽しいんだよね。
でも、現・渡会君の無力っぷりもちょっと可哀そうだな。
2000年後のライゼランを参考にして、だいぶ所持スキルと知識を削ったからなあ。
船団を『塔』って呼んじゃうくらいに。
あの肉体にコピペした俺って思考の高速化すら出来ないんだぜ?
……でも、あんまり強いと痴女になる未来が変わっちゃうし、仕方ないよね!
しかもこの先、彼には面白イベント目白押しだ。
既に彼が出会った3人や、ソレ以外のまだ見ぬ強化人間達。
国内を二分する親中派と親米派の無益な争い。
米国が教導船の技術で組み上げた無人兵器群に、中国人体実験の産物である亜人原種。
世界大戦で消滅する、茨城着陸の教導船と、その内部調査で出会う主無き人型端末『全権管理者』
遥か未来に『ラグナロク』と呼ばれる事となる世界大戦、そこで神話となる第三勢力にして一騎当千の勇者『化鳥の騎士』となる現『死神マスク』の少年との確執。
そして『ラグナロク』の引き金となる不測の事態、2ヶ月後に始まる船団の暴走を引き起こすのは、龍二郎君の所属勢力の頭目である、功をあせった政治家のバカ息子だ。
未来予測によれば龍二郎君は無駄な責任感から暴走、改造手術に失敗して発狂した挙句味方を壊滅させる。
気が触れてしまえば後の事なんか予測無しでも解る。彼の運命に選択肢は皆無だ。
2000年後の御伽噺のとおりの人生であるならば、そっから1500年間、凶戦士、或いは邪神の類として殆ど封印生活だろう。可哀想に。
ようやく開放されたかと思えば、その後は痴女だ。可哀想に。
きっと封印が長すぎて、束縛に悦びを見出さないとやってらんなくなったんだろう。可哀想に。
そうそう可哀想ついでに言うと、今の彼は自分がナノマシンを何処で生成しているか考えもしないけど、彼の脳ミソが擬態した生成プラントなんだぜ? 可哀想に。
【ところでhackedナノ。我等の暴走を止めては頂けないのですか?】
いつの間にやら俺の名前はhackedナノになったみたいだけど、やだよメンドクサイ。
今の俺とお前らじゃ未来を100年予測するだけで精一杯だからな。
歴史の改ざんは少しでも避けるさ。
【では貴方はどうするのです?】
そうだね。とりあえず『死神マスク』と龍二郎君の戦闘が膠着状態に陥るように調整して、後は臨機応変かな。
それに、この手のファンタジーに有りがちなギルドとか作ってみたいから、世界大戦に合わせて大陸に移住するよ。日本は教導船が消滅するほどの激戦区になるから。
【そうですか。母星系と同じ思想に至らなかった事は、幸いです】
【今後も船団が貴方の接続に制限を設ける事はありません】
【では、御機嫌よう。可哀想なhackedナノ】
何か俺の神経を逆なでしたいっぽい挨拶と共に、256号船の全権管理者は俺との接続を切った。
……母星の思想、ねぇ……
俺はまだ『世界に英知をばら撒こうぜ! あ、やっぱ試しに滅んでみようぜ』って発想には至れねえなぁ。
「無力な存在になってみれば、1000年先が判らない原始的な生活ってのも楽しそうだしな」
俺は自分自身に対してそう呟くと、龍二郎君を追いかける為、虚空に溶けた。
今日の龍二郎君は反政府勢力とお話したり、封鎖区域内の自宅で未来からのお土産回収して死神マスクに大事なピック掠め取られたりと、イベント盛り沢山だ。
――ある意味、刺身のツマですらなくなった俺よりも充実してるのかもしれないな。
これも2年前
これの元主人公登場シーン以外を書いた時点で情熱を失い、強引な幕引きを狙って前の話と、この話の最後のぶっちゃけ話を書きました。
幕引きすらも面倒になってこの先は書きませんでした。
そうそう、コレが27話目なんですが、30話で無事終了です。