*six times*
私は、しばらく眼下に広がる世界をただ見つめていた。
それから、何か会話が欲しくて言った。
「…あの…。」
「はい?」
魔王様は私へ目を向けて言う。
先ほどから胸につっかえていた疑問を口にする。
「…魔王様の住んでいるお城って、やっぱり不気味で、血まみれで、骸骨や死体が山積みだったりするんですか?」
魔王様は私の質問に対して、
「…正直言うと、そんな城には住みたくないですね…」
と苦笑いして答えた。
私は、少し驚いていた。
「……でも、私も一人暮らしですから、あまり綺麗な城だとは言えないのですが。」
そうなんだ…。
家来とかはいないんだ。
イメージしていたのと全然違って、私は本当にこの人は魔王なんだろうかと思う。
ただ羽とかが生えてるだけで、一般の人間と何も変わらないし、魔王らしい威厳だってない。
どちらかというなら、優男に羽をつけたらこうなった、そう言った方が当たっている。
私は思いながら、また下に広がる世界をただ眺めた。
そういえば、もうだいぶ飛んでいる気がするけれど、一向にお城と呼べそうな物がない。
まだなのかな?
心地いい夜風や綺麗な夜景にも飽きて、時間的に私は眠たくなってきた。
「…王女様?大丈夫ですか?」
…あ、いけないいけない。
お城につくまでは、起きてなくちゃ。
「……眠くなられましたか?
では、少し急ぎますが…構いませんか?」
急いでくれるの?
それなら目も覚めるかも。
やってみて。
「……はい。」
魔王様は、いったん空中で静止して、翼に力をためた(ように見えた。)。
それから、一気に翼を羽ばたかせる。
わぁ、早い。
でも逆に、夜風が冷たい。
寒いなぁ…。
でもこれ以上の文句は言えない。
私が我慢していると、というよりも、あんまり我慢しなかったんだけど、魔王様が言った。
「つきましたよ。」
え、もう?
私は実感が沸かず、魔王様の腕の中で縮めていた体を伸ばした。
「少し綺麗だとは言い難いですが…
ここが私の城です。」