*five times*
私は、翼を羽ばたかせている魔王様に訪ねてみた。
「…その…お城って、遠いんですか?」
「いえ。遠いと言えば遠いですし、近いと言えば近いです。」
よく判らない返答をされて、私は質問を変えた。
「えっと……どうやってお城に向かうんですか?」
馬車とかで行くのかな?
私はそんなふうに思っていた。
「…いえ、私が飛んでいきます。」
へぇ、魔王様が飛んでいくのね。
だからさっきから翼を羽ばたかせていたんだ……。
……じゃなくて。
魔王様は飛べるけど、私はどうするの?
「こうすれば良いのです。」
わっ!!
私の体が宙に浮く。
え、これって……お姫様抱っこ…?
「このまま飛んでいこうと思うのですが……怖いでしょうか?」
ううん、大丈夫。
このまま飛んでいくなんて面白そう。
私はわくわくしていた。
魔王様は窓の鍵を開けて、窓を開けた。
開いた窓から、冷たい夜風が吹き込んで、私と魔王様の髪を舞わせた。
「………では。」
魔王様の体が窓を通過して、重力を全く無視してふわりと宙に浮いた。
すごい。
魔王様はただ私を抱いて、翼は一定のタイミングで羽ばたいている。
下を見れば、明かりやランプで飾り付けられた城下町が広がっていた。
きれい……。
こんなふうに、真上から町を見たのは初めてで、感動してしまった。
「怖くはないでしょうか?」
ふと、私を気にしたのか魔王様が口を開いた。
「あ、大丈夫です。」
私は大して怖くなかったから、答えた。
「それは良かった。もし王女様を怖がらせているのではと、心配でした。」
心配させて、ごめんなさい。
でも、私は高い所は好きだから大丈夫。
「良かったです。
王女様を怖がらせてなくて。」
そうして、安心したみたいに笑う。
…なんか魔王様なのに、優しいな…。