*four times*
私はまたポカンとしてしまう。
『さらわれて』、なんてお願いされたのは初めてだった。
…というより、『さらわれて』なんてお願いされたのは私くらいじゃないのかな?
答えを返せずにいると、魔王様は言った。
「別に、深い意味はありません。
…ただ…。」
そうして、口ごもってしまう。
勇者様といい魔王様といい、どちらも"らしく"ない気がする。
そういう私も、"らしく"ないのだけど。
「…私は、魔王を倒したという勇者と戦ってみたいのです。」
……あ、なるほど…。
私は何となく理解した。
「勝手な考えで悪いのですが、王女様をさらえば必ず勇者は王女様を助けにくるものでしょう?」
うん。
…ってことは、私は囮なんだね。
「…悪い言い方をするなら囮ですね。」
魔王様はすまなさそうに言う。
私は、別にさらわれても良かった。
退屈だったし(疲れていたけど)、何より魔王様と勇者様が戦うのも面白そうだし、それで勇者様が勝てば、強さの照明にもなるものね。
私は、魔王様に向き直った。
「…判りました。」
「良いのですか?」
「うん。私も、戦いを見てみたいから…」
魔王様は、黙ってうなずいた。
「……ではまず、私の城に向かいましょう。」
そうだね。
……っていうか、魔王様のお城って此処からどれだけ遠いのかな?