第36話:錦馬超《きんばちょう》の真・咆哮《ほうこう》。漢中《かんちゅう》の鬼卒《きそつ》を砕く銀の閃光と、魂の帰還(第五章・中盤)
第36話:錦馬超の真・咆哮。漢中の鬼卒を砕く銀の閃光と、魂の帰還(第五章・中盤)
益州の北方、険しい山々に囲まれた要衝――葭萌関。
劉璋が俺たちの提示した「近代兵器」の威圧と、法正たちの内部工作によって成都で震え上がっているまさにその時。北の漢中から、五斗米道の教主・張魯が率いる数万の「鬼卒」軍団が、火事場泥棒のごとく益州へと侵攻を開始した。
「……ふん。張魯の教えか。まじないで死なないと信じ込む狂信者の軍勢。厄介と言えば厄介だが、科学と圧倒的な武の前では、ただの案山子に過ぎないな」
本陣の高台で、俺――陳凌(字は子雲)は、システムウィンドウに映る敵軍の赤いドットの群れを見下ろしていた。
隣には、静かに羽扇を揺らす諸葛亮孔明。
「子雲殿。あちらには、かつてあの男が身を寄せていた『因縁』があります。ここは……彼にすべての華を預けてもよろしいのでは?」
「ええ、孔明先生。俺もそのつもりです。……行け、馬孟起!! お前の『真の居場所』を、奴らに見せつけてやれ!」
1. 銀の獅子、原野に降り立つ
地平線を埋め尽くす張魯軍の先鋒、数万。その中央で、張魯の弟・**張衛**が、宗教的な呪文が書かれた旗を掲げ、劉備軍をあざ笑うように叫んだ。
「愚かな劉備軍よ! 我が兄上が授けし『天師』の加護ある我が軍に、人の刃は通じぬ! ……ん? あ、あれは……馬超ではないか!?」
土煙を切り裂き、ただ一騎。
白銀の獅子を模した兜を被り、目も眩むような美しい銀の鎧を纏った男が、愛馬を駆って進み出た。
『錦馬超』――。かつて父を失い、行く宛をなくして張魯の元に身を寄せていた孤独な猛将が、今、全く異なる覇気を放ってかつての主君の前に立っていた。
「……張衛。久しぶりだな。相変わらず、薄汚いまじないに頼って戦をしているのか」
馬超の声は、低く、しかし戦場全体に響き渡るほどの重圧を伴っていた。
「黙れ、恩知らずの飼い犬が! 兄上に救われた恩を忘れ、劉備などという偽善者に尻尾を振るとはな! 貴様に帰る場所など、この中華のどこにもないわ!!」
「……帰る場所だと?」
馬超が、ゆっくりと白銀の長槍を水平に構えた。その瞬間、彼の背後から**「武力97」**のオーラが、物理的な衝撃波となって周囲の砂を巻き上げた。
「俺は、今までずっと探していた。己の武を、己の魂を、曇りなくぶつけられる真の『太陽』をな。……張魯、お前のような影に隠れる者に、俺を繋ぐ鎖など最初から存在しない!」
2. 西涼騎兵、蹂躙の極致
「西涼の勇士たちよ!! 聞けィッ!!」
馬超の咆哮が、背後に控える五千の西涼騎兵たちの魂に火をつけた。
「我が主・劉玄徳殿こそ、真に天下を統べる器! その隣を征く軍師・陳子雲こそ、俺たちの未来を照らす星! ……貴様ら、あの狂信者どものまじないが本物かどうか、その槍で確かめてやれェッ!!」
「「「オオオオオオオッッ!!!!」」」
激突は、わずか数瞬。
馬超が先頭に立ち、三角形の突撃陣形――『錐行の陣』が張魯軍の中央へと食い込んだ。
まじないで不死身だと信じ込んでいた鬼卒たちが、馬超の長槍の一突きで、鎧ごと三、四人まとめて串刺しにされ、宙を舞う。
「ひ、ひぃぃぃっ! 馬超だ! あの悪魔のような馬超が、以前より何倍も強くなって戻ってきたぞォッ!!」
【システム通知:特大イベント発生!】
馬超孟起:特性『西涼の神威』が覚醒!
周辺ユニットの攻撃速度を30%上昇、敵軍への【恐怖】デバフを極大付与!
戦場に咲く、血の華。
馬超の槍は、もはや肉眼では捉えられない。銀色の閃光が走るたび、敵の将軍たちの首が空を舞う。かつての同僚であった張魯軍の武将たちが必死に防ごうとするが、馬超の圧倒的なステータス値と、**「俺には主君がいる」**という精神的なバフの前では、赤子同然であった。
「龐徳!! 右翼を回れ! 一兵たりとも漢中へ逃すな!!」
「承知ッ!! 若君、いや……馬超将軍! 参る!!」
馬超の右腕、龐徳もまた【武力94】の重い一撃を叩き込み、張魯軍の横腹を食い破る。もはやこれは戦いではなく、『錦馬超』という芸術的な蹂躙劇であった。
3. 覇道の終わり、王道の始まり
「ま、待て! 馬超! 話せばわかる! また兄上の元へ戻れば、将軍の地位を……!」
落馬し、泥に塗れた張衛が、馬上の馬超に命乞いをする。
馬超は、その喉元に白銀の槍の先を突きつけ、冷徹に言い放った。
「……将軍の地位? そんなもの、俺は求めていない。……俺が欲しかったのは、俺の武を『誇り』に変えてくれる主君だ。劉備殿は、俺を『西涼の錦』と呼び、対等に酒を酌み交わしてくれた。……お前たちには一生理解できぬだろうよ」
『閃――!!』
一閃。張衛の言葉は、その首と共に平原に散った。
数万を誇った張魯軍は、馬超たった一人の武勇と、陳凌が授けた「騎兵用改良蹄鉄」による異常な機動力の前に、完全に瓦解したのである。
4. 凱旋、そして劉備の抱擁
戦いののち。返り血を浴び、銀の鎧を赤く染めながら、馬超が本陣の劉備の前に膝を突いた。
「皇叔殿。……北の塵ども、すべて片付けました。俺の『過去の因縁』、これで完全に断ち切りました」
劉備は、その【魅力:99】のオーラを最大放出しながら、馬超の肩を力強く抱き寄せた。
「よくやった、孟起! お前のその槍が、これからの蜀の民を守る最大の盾となる。……お前を味方に迎えられたこと、俺は生涯の誇りに思うぞ!」
「……劉備殿……」
馬超の瞳に、わずかに潤みが走る。
かつて孤独だった「西涼の獅子」は、今、劉備という最強の家族と、陳凌という最高の理解者を得て、真の**『五虎大将軍』**の一人へと昇華したのだ。
5. 終盤への布石:成都、陥落の秒読み
本陣の隅で、俺は郭嘉と賈詡と共に、その光景を眺めていた。
「いやはや。馬超殿のあの強さ。……子雲殿、君が彼に与えた『特製プロテイン』と『科学的筋力トレーニング』の成果が、少し出すぎたんじゃないかな?」
郭嘉が、瓢箪の酒を煽りながら笑う。
「ふん。だがこれで、劉璋の退路は完全に断たれた。北の張魯が敗れ、背後には法正がいる。……さあ、いよいよ『最終段階』だ」
賈詡が、冷徹な瞳で地図を指差す。
成都の城壁まで、あとわずか。
だが、俺たちの計画は、単なる制圧では終わらない。
劉璋を『官軍の臣』として、いかに屈辱を感じさせずに取り込み、益州の全戦力と富をそっくりそのまま劉備軍の血肉とするか。
「孔明先生、行きましょう。……俺たちの、ハッピーエンドを創りに」




