第35話:天府《てんふ》への進撃。北天《ほくてん》の掃討《そうとう》と、成都《せいと》を震撼《しんかん》させる『震天動地《しんてんどうち》』の軍威《ぐんい》(第五章・前半)
第35話:天府への進撃。北天の掃討と、成都を震撼させる『震天動地』の軍威(第五章・前半)
建安十四年、秋。
長江を真っ赤に染め上げた赤壁の業火から数ヶ月。覇王・曹操という巨大な重石が取り除かれた中華の勢力図は、我ら劉備軍という『巨大な龍』によって、劇的な塗り替えが行われようとしていた。
現在、我ら劉備陣営は、史上類を見ない**『二正面同時制圧作戦』**を敢行している。
一つは、北方に残る袁紹の残党兵力を完全に掃討し、華北の憂いを断つこと。
そしてもう一つは、西の至宝――『天府の国』と呼ばれる益州(蜀)を無傷で手に入れることだ。
「……ふむ。北の掃討戦、予定より三日は早いですね。さすがは翼徳(張飛)将軍と元直(徐庶)殿だ」
俺――陳凌(字は子雲)は、益州へと続く険しい山道の途中で、網膜に展開された【広域戦況スキャン】のウィンドウを眺めていた。
1. 北天の断罪:張飛と徐庶の『圧倒的掃討』
その頃、遙か北方――かつての袁紹の本拠地、冀州の国境付近。
そこでは、もはや『戦』と呼ぶにはあまりに一方的な蹂躙が行われていた。
「ガッハッハッハ!! 逃げるなァッ! 袁家の亡霊どもめ! 俺の蛇矛が血を吸いたがってんだよォ!!」
漆黒の暴れ馬・烏騅に跨り、丈八蛇矛を風車のように振り回すのは、我らが三兄者・張飛翼徳。
曹操がいなくなった後の混乱に乗じて再起を図ろうとしていた袁尚・袁譚の残党数万の前に、張飛はわずか五千の精鋭騎兵と共に、まさに『黒い雷』となって突撃していた。
【人物鑑定:能力上昇確認】
張飛翼徳:武力99(限界突破中)。
特性『万夫不当の咆哮』:敵軍全体の士気を強制的に【絶望】状態まで叩き落とす。
「ひ、ひぃぃぃっ! 燕人張飛だ! 赤壁で曹操を追い詰めた悪魔が来たぞォッ!!」
袁紹軍の残党兵たちは、張飛の姿を見ただけで武器を捨て、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。だが、その逃げ道はすでに完璧に塞がれていた。
後方の高台から、一人の軍師が静かに羽扇を上げ、全軍に指示を出す。
「……逃がしませんよ。此度の任務は『掃討』。華北の火種を完全に消し去るのが、子雲殿と孔明殿との約束ですからね」
劉備軍・初期からの功臣、徐庶元直である。
彼の緻密な包囲網と、張飛の圧倒的な武。このコンビの前に、袁家の残党たちは文字通り『塵』となって消えていった。
これにより、劉備軍の背後――北方からの脅威は完全に消滅し、我々は全戦力を西の『蜀』へと注ぎ込めるようになったのだ。
2. 成都の暗闘:法正と張松の謀略
一方、俺と諸葛亮孔明率いる本隊は、益州の入り口である『涪関』へと迫っていた。
だが、ここは剣閣にも勝るとも劣らない難攻不落の要塞。普通に攻めれば万単位の犠牲が出る場所だが……俺たちには、すでに『内部の協力者』がいる。
「……法正殿。手筈は整っていますね?」
俺たちが潜入させた隠密を通じて届いた一通の書状。
そこには、蜀の太守・劉璋の政治に愛想を尽かした天才策士・法正と、益州の地図を丸暗記しているという奇才・張松からの、詳細な内応計画が記されていた。
「劉璋は臆病者だ。我らが成都で『劉備軍の圧倒的軍威』を説けば、奴は腰を抜かすだろう。だが、そのためには……物理的な『絶望』を見せつける必要がある」
法正たちが成都の宮廷で劉璋の心をへし折る準備を進める中、俺たちは涪関の城壁の前に、ある『巨大な怪物』を姿を現させた。
3. 絶望のデモンストレーション:近代兵器の顕現
「……あれは、何だ……?」
涪関を守る蜀の将兵たちが、城壁の上から震える声で呟いた。
彼らの視線の先。劉備軍の陣営から、数十人の兵士たちによって牽引されてきたのは、見たこともないほど巨大な**『黒鉄の攻城塔』と、不気味な光沢を放つ『巨砲』**の試作機であった。
「孔明先生。まずは挨拶代わりに、一発お見舞いしてやりましょうか」
「ええ、子雲殿。彼らに『時代が変わったこと』を教えてあげなさい」
俺はニヤリと笑い、点火の合図を送った。
俺が現代知識と黒色火薬の配合比率を極限まで高めて創り出した、この時代には存在し得ないオーバーテクノロジー――『震天動地砲』である。
『ドォォォォォォォォォンッッ!!!!』
鼓膜を突き破るような爆音と共に、巨大な鉄塊が火を噴いて放たれた。
それは涪関の分厚い城壁の角に直撃し、数トンの石材を一瞬にして粉砕、土煙と共に城壁の一部を跡形もなく吹き飛ばしたのだ。
「「「な、ななな……何だ今の音はァァッ!? 天が落ちたのかッ!?」」」
蜀の兵士たちは、ただの一撃で戦意を喪失した。
弓矢も槍も届かない距離から、城壁を豆腐のように砕く暴力。彼らにとって、それはもはや人間との戦いではなく、**『神罰』**に等しかった。
「……さて。これで劉璋の耳にも届くはずだ。……戦うか、それとも我らが『仁』の門を開くか。……法正殿、あとは頼みましたよ」
俺は、立ち昇る黒煙を見つめながら、次なる一手――北から迫る宗教集団・張魯軍の迎撃準備へと意識を切り替えた。
益州の無血開城まで、あとわずか。
だが、その『平和』を邪魔しようとする不埒な輩を、我らが無双の将たちが許しておくはずがなかった。




