表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志オタクの先読み鑑定録 〜桃園の誓い前から英傑たちを総取りして、推しの劉備に天下を獲らせます〜  作者: 盆ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/43

第31話:草船借箭《そうせんしゃくせん》の超絶改変。十万の矢より、敵の最新鋭艦隊《さいしんえいかんたい》を丸ごと強奪《ごうだつ》せよ!(第四章・赤壁謀略編)

第31話:草船借箭そうせんしゃくせんの超絶改変。十万の矢より、敵の最新鋭艦隊さいしんえいかんたいを丸ごと強奪ごうだつせよ!(第四章・赤壁謀略編)

 建安十三年、冬。長江ちょうこう赤壁せきへき

 中華の命運を分かつ大河をはさみ、ついに両軍は対峙たいじした。

 北岸の烏林うりんには、曹操そうそうが率いる八十万の超大軍と、荊州けいしゅうから接収せっしゅうした数千隻すうせんせきの軍船が、空をおおい尽くすほどの黒々とした陣容じんよういている。対する南岸の赤壁には、我ら劉備りゅうび軍と孫家そんけの連合軍、わずか十数万。

 兵力差は、およそ八対一。常識で考えれば絶望的な数字だが、南岸の連合軍本陣に悲壮感ひそうかん欠片かけらもなかった。なぜならここには、歴史のバグとしか思えない『神算鬼謀しんさんきぼうの怪物たち』が巣食すくっていたからだ。

「……孔明こうめい殿。我が軍は現在、矢が決定的に不足しております。水上戦において矢は命綱。……三日のうちに、十万本の矢を調達してはいただけまいか?」

 連合軍の軍議の席で、孫家の最高司令官・周瑜公瑾しゅうゆこうきんが、冷ややかな笑みを浮かべて切り出した。

 史実しじつにも名高い、周瑜による諸葛亮孔明しょかつりょうこうめいへの『無理難題(嫌がらせ)』である。劉備軍の頭脳である孔明の底知れぬ才能を恐れた周瑜が、軍法会議にかけて処刑するための口実を作ろうとしたのだ。

「……三日、ですか。造矢ぞうしの職人を総動員しても、通常は十日かかる数ですな」

 孔明は白羽しらはおうぎを静かに揺らし、全く動じることなく微笑ほほえんだ。

「ですが、曹操の首をるための大事ないくさ。三日も待っていては機をいっしましょう。……『三日後』の朝には、十万本の矢を陣前にそろえてご覧に入れます」

「ほう……! 軍中ぐんちゅう戯言たわごとはなし。できねば軍法により首をねますが、よろしいか?」

「ええ。誓約書せいやくしょを書きましょう」

 周瑜が内心で「勝った」とほくそ笑む中、俺――陳凌ちんりょうあざな子雲しうん)は、孔明の隣で必死に笑いをこらえていた。

(出たァ! 三国志屈指の名シーン『草船借箭そうせんしゃくせん』のフラグ成立! 霧の夜に藁人形わらにんぎょうを乗せた船を出して、曹操軍から矢を無料で撃ち込ませて回収するっていう、あの伝説の詐欺ペテン計略!)

 軍議が終わり、自陣の天幕に戻った俺は、さっそく孔明に語りかけた。

「先生。三日後の夜、長江に深い霧が立ち込める天候を読んだ上での確約ですね。藁人形を乗せた小舟を二十隻せきほど用意させましょう」

「……おや、子雲殿。私の策がすでに読まれているとは。さすがは未来を見通す軍師殿だ」

 孔明が楽しそうに目を細める。

「ですが、孔明先生」

 俺は扇をパチンと閉じ、悪魔的な笑みを浮かべた。

「俺とあなたの『二人のチート頭脳』がそろっているのに、史実通りに『ただ矢を十万本パクってくるだけ』じゃあ、あまりにも芸がないと思いませんか?」

「……ほう? 矢を借りる以上の、何か面白い盤面ばんめんが見えていると?」

「ええ。矢なんていう安い消耗品じゃありません。曹操が荊州から接収した、最新鋭の『大型突撃船(蒙衝もうしょう)』……あれを、藁人形の船をおとりにして、丸ごと強奪ごうだつしてやろうじゃありませんか」

 俺の提案に、孔明のひとみの奥で、知性の炎が怪しく燃え上がった。

「……なるほど。霧と藁人形を『矢を射掛けさせるための囮』ではなく、『敵の視線と注意を完全に固定するためのデコイ』として使う。そのすきに、本命の部隊が敵の船団に横付けし、船ごと奪い取る……。えげつない。あまりにもえげつないが、最高に美しい盤面だ」

「俺の現代知識で作った『催涙煙幕さいるいえんまく(唐辛子や硫黄いおうを調合した特製手榴弾)』を使えば、船上の兵士を殺さずに無力化できます。あとは、我が軍のほこる水戦のプロたちに制圧させるだけです」

「くくっ……ははははっ! 素晴らしい! 周瑜殿が十万の矢で驚く顔を見るのも一興いっきょうですが、敵の最新鋭の軍船を丸ごと引き連れて帰ってきた時の顔は、さぞかし見物みせものでしょうな!」

 俺と孔明の、歴史のセオリーを最悪な形でぶち壊す『悪巧わるだくみ』が、長江の闇夜やみよに溶けていった。

 ――同じ頃。長江の北岸、曹操軍の本陣。

 北方の乾燥した大地で育った曹操軍の兵士たちは、船の揺れと長江特有の湿気にやられ、陣営のあちこちで激しい船酔いと疫病えきびょうに苦しんでいた。

「……丞相じょうしょう(曹操)。このままでは、いくさになる前に兵たちが疲弊ひへいしきってしまいますぞ」

 幕僚ばくりょうたちが頭を抱える中、曹操の前に、一人の薄汚れた風貌ふうぼうの男が進み出た。

 彼こそが、俺たちが事前に曹操陣営へと送り込んでいたUR軍師――鳳雛ほうすう龐統士元ほうとうしげんである。

「曹操様。北の兵が水に慣れぬのは道理。なればこそ、船と船を太い『鉄のくさり』でつなぎ合わせ、その上に板を渡せばよろしい。さすれば船の揺れは収まり、陸地と変わらぬ平らな陣地が長江の上に完成いたします。馬を走らせることも可能でしょう」

 龐統が、泥酔でいすいしたふりをしながらも、極めて論理的かつ魅力的な提案(致命的な毒)を口にした。

「おお……! 船を鎖で繋ぐ……世に言う『連環れんかんの計』か! 素晴らしい、まさに天啓てんけい! さすがは鳳雛とうたわれる天才よ!」

 船酔いに苦しむ現状を打破できる完璧な解決策を前に、あの疑い深い曹操ですら、ポンと手を打って即座に採用を決定してしまった。

(……馬鹿め。船を鎖で繋いじまったら、一隻に火がけば最後、全艦隊が逃げ場のない火薬庫に変わるってのによ。子雲と孔明の旦那だんなが用意した極上の火種で、丸焼きにしてやるぜ)

 龐統は、曹操にうやうやしく頭を下げながら、心の奥底でゲラゲラと腹を抱えて笑っていた。

 ――そして、運命の三日目の夜。

 孔明の神算が完全に的中し、長江は一寸先いっすんさきも見えないほどの、深い、深い濃霧のうむに包まれた。

「子雲殿。準備はよろしいですか?」

 藁人形をびっしりと並べた二十隻の小舟の上で、孔明が羽扇を静かに下ろす。

「ええ。魯粛ろしゅく殿と太史慈たいしじ将軍が率いる別働隊の『船泥棒部隊』も、霧にまぎれて完全な位置についています」

「では……派手に鳴らしなさい」

『ドンドンドンドンドンッ!!!!』

 濃霧の中、曹操軍の巨大な水上要塞すいじょうようさいのすぐ目の前で、俺たちが乗った藁人形の船から、すさまじい軍鼓ぐんこの音とときの声が響き渡った。

「な、なんだ!? 敵襲てきしゅうか!?」

 北岸の曹操軍陣営が、大パニックに陥る。

「霧が深くて敵の姿が見えん! だが音の距離は近い! 不用意に船を出すな、弓兵隊、音のする方角へ矢を雨霰あめあられ射掛いかけよ!!」

 曹操の命を受け、数万の弓兵が、霧の向こうの「太鼓の音がする場所」へ向けて、盲目的もうもくてきに矢を放ち始めた。

『ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!』

『ドスッ! バスッ!』

 雨のように降り注ぐ矢が、見事に藁人形の束に突き刺さっていく。

 小舟の中の安全な船室で、孔明と俺は酒をみ交わしながら、その音をBGMにして笑っていた。

「いやはや、曹操軍の矢は上等ですね。あっという間に十万本は超えたでしょう」

「ですが、ここからが本番です。……敵の注意が完全にこの『音』に集中している今こそ!」

 その頃。

 矢を射掛ける曹操軍の先鋒せんぽう艦隊の『側面』。

 霧と同化するように音もなく近づいていた数十隻の漆黒しっこくの小舟から、鉤縄かぎなわを持った江東の水戦のプロフェッショナルたち――太史慈と、彼に従う精鋭たちが、音もなく曹操軍の大型突撃船(蒙衝もうしょう)の外壁に取り付いていた。

「よし……敵の目は完全に正面の太鼓に向いている。子雲殿の作ってくれた『煙幕弾えんまくだん』、放り込め!」

 太史慈の合図と共に、甲板の上の敵兵たちの足元へ、導火線に火のついた陶器の壺が転がり込む。

『プシューーーッ!!』

 強烈な刺激臭を持った唐辛子と硫黄の煙が、甲板上に一気に充満じゅうまんした。

「ゲホッ、ガハッ!? な、なんだこの煙、目が、目がァァッ!?」

「息が、できな、ゲホォォッ!」

 船上の曹操兵たちが、涙と鼻水を流して次々と昏倒こんとうしていく。

「今だ! 船を制圧し、いかりを上げろ! このまま南岸へ持ち帰るぞ!!」

 太史慈たちが甲板に雪崩なだれれ込み、無力化された敵兵をあっという間にしばり上げ、船の操舵そうだを奪い取る。

 曹操軍が正面の「藁人形」に必死で矢を射ち込み続けている間に、彼らの自慢の最新鋭の軍船が、十隻、二十隻と、音もなく背後から切り離され、濃霧の長江へと消えていったのだ。

 ――翌朝。霧が晴れた長江の南岸、連合軍本陣。

「……孔明殿。約束の三日目の朝だが。……矢は、十万本揃そろったのだろうな?」

 周瑜が、孔明を処刑する気満々の冷たい笑みを浮かべて、港へとやってきた。

「ええ、周瑜殿。曹操殿が大変気前よく貸してくださり、およそ十五万本は下らないかと。……ただ、少しばかり『オマケ』がつきすぎましてな」

 孔明が羽扇で長江の港を指し示す。

 そこには、ハリネズミのように矢が突き刺さった二十隻の藁人形の船……の後ろに。

 曹操軍の軍旗がかかげられたままの、ピカピカの巨大な『最新鋭・突撃軍船(蒙衝)』が、なんと五十隻もずらりと並んで停泊ていはくしていたのである。

 甲板の上では、太史慈や魯粛たちが「大漁だ大漁だ!」と笑いながら、縛り上げた曹操軍の捕虜ほりょと、山積みの兵糧へいろうを降ろしている最中だった。

「なっ…………!?」

 周瑜の美しい顔が、これ以上ないほどに引きり、信じられないものを見るように目をいた。

「や、矢だけではなく……敵の軍船を、五十隻も丸ごと強奪してきたというのか!? たった一夜で、しかも無傷で!?」

「ええ。矢だけでは、子雲殿の創り上げた『大楼船だいろうせん』に積む物資としては心許こころもとないですからね。船と、兵糧と、捕虜。まとめて頂戴ちょうだいしてまいりました」

 孔明の涼しすぎる笑顔と、隣でドヤ顔を決める俺(陳凌)を見て、天下の奇才・周瑜公瑾は、ついにひざからくずれ落ちた。

「……化け物だ。諸葛孔明、そして陳子雲。貴様らの底知れぬ悪知恵を敵に回せば、江東は一晩でほろぼされる……!」

 周瑜が完全に白旗しらはたを上げ、我々劉備軍への畏怖いふと服従を魂レベルで刻み込まれた瞬間であった。

 一方、北岸の曹操軍では。

「……矢を十五万本無駄撃ちさせられた上に、最新鋭の軍船を五十隻もぬすまれただとォォォォッ!!??」

 曹操の激怒の咆哮ほうこうが、長江の対岸まで響き渡らんばかりにとどろいていた。

 だが、彼の悲劇はまだ始まったばかりである。

 龐統の『連環の計』によって鎖でつながれ、逃げ場を失った巨大なまきの束となった八十万の艦隊。

 赤壁の戦い、究極の「大炎上」のカウントダウンは、すでに最終フェーズへと突入していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ