表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三国志オタクの先読み鑑定録 〜桃園の誓い前から英傑たちを総取りして、推しの劉備に天下を獲らせます〜  作者: 盆ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/43

第23話:【閑話】覇王《はおう》の嘆《なげ》きと西涼《せいりょう》の錦《にしき》。底引《そこび》き網《あみ》の如《ごと》き人材強奪《じんざいごうだつ》(第三章・前日譚)

第23話:【閑話】覇王はおうなげきと西涼せいりょうにしき底引そこびあみごと人材強奪じんざいごうだつ(第三章・前日譚)徐州じょしゅう彭城ほうじょう中枢ちゅうすうに新設された、劉備りゅうび軍の『情報戦略室』。

 壁一面にられた中華全土の巨大な地図を前に、俺――陳凌ちんりょうあざな子雲しうん)は、黄金色こがねいろに輝く【システム】のリストをながめて、思わず笑いをらしていた。

「……いやはや、恐ろしいことだよ。西の覇王はおう殿が、今頃血を吐いて倒れていないか心配になる」

 あきれたような声と共に、執務室しつむしつ長椅子ながいすで寝転がっていた郭嘉かくかあざな奉孝ほうこう)が、瓢箪ひょうたんの酒を一口あおった。

「俺の旧友であり、曹操そうそう軍の最高頭脳である荀彧じゅんいくの奴が、必死に主君しゅくんのために全国から隠れた有能な人材をリストアップしているらしいんだが……いざ使者を送ってみると、その全員が『すでに劉備殿の元へ向かいました』と答えるらしいからね」

「ふふっ、無理もありません。我らが子雲しうん殿の『』は、千里の先に埋もれたたますらも見逃さないのですから」

 書類のたばを整理しながら、毒舌軍師の賈詡かくあざな文和ぶんわ)が底意地そこいじの悪い笑みを浮かべる。

 彼らが言う通り、ここ数ヶ月の俺の「青田買あおたがい」は、もはや乱獲らんかくの域に達していた。

 史実しじつにおいて曹操の『五将軍ごしょうぐん』として活躍するはずだった小柄な猛将・楽進がくしんや、厳格なる統率者・于禁うきん。彼らが在野ざいや(無職)としてくすぶっているという情報を【人物鑑定じんぶつかんてい】の広域レーダーで察知するや否や、俺は趙雲ちょううん太史慈たいしじといった超一流の武将を持参金付きの使者として派遣し、劉備の『じん』の大義名分たいぎめいぶんで根こそぎ釣り上げてしまったのだ。

 現在、曹操の陣営に残っている有力な武将は、夏侯惇かこうとん曹仁そうじんといった『親戚しんせきの一族』しかいない。俺が外部のSSR武将をすべて底引き網で強奪ごうだつしてしまったため、曹操軍の人材プールは完全に枯渇こかつしていたのである。

(三国志を知らない読者のために解説すると、曹操の強さの源泉は『身分を問わない実力主義の登用』にある。その彼から有能な部下を奪い尽くすことは、覇王のつばさを物理的にもぎ取るに等しいのだ)

「……だが、あの曹操がこのまま黙って引き下がるはずがありません」

 俺が地図の『兗州えんしゅう』をおうぎで指し示すと、二人の天才軍師の顔からも笑みが消えた。

「ええ。人材を奪われた曹操は今、少数の精鋭せいえい莫大ばくだいな資金を注ぎ込み、一騎当千いっきとうせんの超・重装騎兵団じゅうそうきへいだん……通称『虎豹騎こひょうき』の創設を急ピッチで進めているという情報が入っています」

 賈詡が、冷ややかな声で報告する。

 虎豹騎。それは史実において、劉備を幾度いくども死のふちへと追いやった曹操軍の最強トラウマ部隊だ。兵士全員が「百人隊長」クラスの実力者で構成され、馬にまで分厚い鉄のよろいを着せた、当時の戦車のごと殺戮さつりく集団である。

「なるほど、しつで我々を押しつぶす気か。……厄介やっかいだね。いかに関羽かんう将軍や張飛ちょうひ将軍といえど、鉄のかたまりが数千騎で突撃してくれば、被害はまぬがれない」

 郭嘉がまゆをひそめた、その時。

「ご安心を、奉孝ほうこう殿。……騎兵の暴力には、それ以上の騎兵の暴力でふたをすればよいだけのこと」

 賈詡が、そでの中から一通の書状を取り出した。

「実は数ヶ月前より、子雲殿の指示を受け、私の故郷である『西涼せいりょう』の諸侯しょこう……馬騰ばとう将軍に、天子様(献帝けんてい)の勅命ちょくめいという形で密書を送っておりました。……どうやら、最高の『返礼の品』が届いたようですぞ」

 ――その日の午後。

 徐州の練兵場れんぺいじょうは、これまでにない異様な熱気と歓声に包まれていた。

 砂埃すなぼこりを上げて整列しているのは、毛皮とはがねを組み合わせた独特の防具をまとう、数千の騎兵部隊。彼らこそ、荒涼こうりょうたる大地で異民族との死闘を繰り広げてきた中華最強の騎馬民族――『西涼騎兵せいりょうきへい』である。

 そして、その先頭に立つ二人の武将の姿を前に、張飛や許褚きょちょといった我が軍の猛将たちですら、武者震むしゃぶるいを隠せずにいた。

西涼せいりょうが太守・馬騰が長男! 馬超ばちょうあざな孟起もうき!! 天子様をお守りする劉玄徳殿の大義に感銘かんめいを受け、此度こたび、西涼の精鋭を率いてせ参じたッ!!」

 白銀の獅子ししかたどったかぶと、目もくらむような美しい白銀のよろい

 手には身の丈をはるかに超える長槍ながやりを持ち、その端正たんせいな顔立ちは趙雲にも引けを取らない。

 三国志における最強のイケメン暴走族……もとい、『錦馬超きんばちょう』の異名いみょうで恐れられる、西涼の最高傑作である。

 俺は練兵場の壇上だんじょうから、震える目で彼ら二人のステータスを読み取った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【氏名】馬超ばちょう(字:孟起もうき

【武力】97

【統率】88

【深層情報】『西涼のにしき』:その武力は張飛や関羽にも匹敵し、のちに曹操を「ひげを切り、上着を捨てて逃げ回る」ほどのトラウマ的敗北へと追い込む天下無双の猛将。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【氏名】龐徳ほうとく(字:令明れいめい

【武力】94

【統率】82

【深層情報】『白馬の特攻将』:馬超の右腕にして、関羽と互角の死闘を演じるほどの剛将。義理堅ぎりがたく、主君のために死を恐れぬ突撃を得意とする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(出たァァァッ!! 曹操の虎豹騎を完封できる最強のカウンター戦力!! 武力97と94のバケモノコンビが、向こうからやってきた!!)

「おお! よくぞ来てくれた、馬超殿、龐徳殿!」

 劉備が、壇上から駆け下りて二人の手を両手で固く握りしめた。

「西の果てより、幾千いくせん山河さんがを越えて来てくれたその忠義ちゅうぎ……この劉玄徳、生涯忘れはしない! どうか俺と共に、この天下の悲しみを終わらせてくれ!」

「ハッ……! 我がやり皇叔こうしゅく(劉備)殿の御為おんために!!」

 劉備の【魅力:99】の熱い抱擁ほうように、血の気は多いが純粋な馬超は、一瞬にして目をうるおませて忠誠をちかった。

 その光景を見ていた張飛が、ニヤニヤと笑いながら蛇矛だぼうを肩にかついで馬超に歩み寄る。

「へへっ、西涼のにしきだか何だか知らねえが、いい面構つらがまえしてんじゃねえか! どうだ新入り、俺たちの軍で生きていくための『挨拶あいさつ代わり』に、一本手合わせ願おうか!」

「……ふん。燕人えんひと・張飛将軍の武勇は西涼にもとどろいているが。俺の白銀の槍、重すぎて後悔こうかいするなよ?」

 馬超もまた、不敵な笑みを浮かべて長槍を構える。

『ガギィィィィンッ!!!!』

 練兵場のど真ん中で、武力98と97の絶大なる大激突が始まった。

 大地が割れ、衝撃波しょうげきはで周囲の兵士たちが吹き飛びそうになる。それを、関羽や趙雲、典韋たちが大声で笑いながら見守っているのだ。

「……いやはや、とんでもない暴力の集評エキシビションだね」

 壇上でその光景を見下ろしながら、郭嘉が肩をすくめた。

「子雲殿。君という男は、本当に天の采配さいはいすら手玉に取るバケモノだよ。……あちらの陣営では今頃、曹操が泣き叫んでいるだろうね」

「同感です。軍師として、これほど退屈しない主君と筆頭軍師(子雲)に出会えたこと、私の生涯の幸運と言わざるを得ませんな」

 賈詡もまた、愉快ゆかいそうに目を細めた。

 当代随一とうだいずいいちの天才軍師二人から畏怖いふ称賛しょうさんの目を向けられながら、俺は静かに笑った。

 これで、曹操の虎豹騎こひょうきに対する完璧な準備は整った。

 史実の悲劇をすべて塗りつぶし、有能な武将と文官を一つ残らず俺たちの「箱庭はこにわ」へと迎え入れる。俺の『し活』は、ついに天下の勢力図を完全に書き換えるところまで来たのだ。

「……さあ、役者はそろいました。あとは曹操がどう動くか、ですね」

 第三章。

 水上の大決戦か、それとも騎馬軍団の激突か。

 中華の覇権はけんけた真の頂上決戦が、いよいよ静かに幕を開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ