第18話:SSR四枚抜きの神引《かみひ》きガチャ。曹操《そうそう》の至宝《しほう》と、義侠《ぎきょう》の英傑《えいけつ》たちの青田買《あおたが》い(中盤)
第18話:SSR四枚抜きの神引きガチャ。曹操の至宝と、義侠の英傑たちの青田買い(中盤)
洛陽から東へ向かう街道を外れ、俺――陳凌(字は子雲)の【人物鑑定】レーダーが示す光の源へと急行した俺たち劉備軍。
やがて前方に、小高い丘に囲まれた一つの農村が見えてきた。
「……野盗の群れか。黄巾の残党か、それとも董卓軍の脱走兵か。随分な数だぞ」
関羽が、馬上から目を細めて村の方角を睨みつけた。
数百人を下らない賊の群れが、村を包囲して略奪を行おうとしている。だが――村は全く陥落していなかった。それどころか、賊の方が悲鳴を上げて逃げ惑っているのだ。
「ひぃぃっ! なんだこいつら、人間じゃねえ!!」
村の入り口。
そこには、まるで地獄の門番のように立ち塞がる『二人の大男』がいた。
「オラァッ!! 村の飯を奪おうってんなら、俺の双鉄戟のサビにしてやるァ!!」
一人は、身の丈八尺(約184センチ)を超える筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》の巨漢。両手にそれぞれ重さ数十斤(十数キロ)はある巨大な鉄の戟を持ち、群がる賊を紙切れのように吹き飛ばしている。
「牛さんをいじめるなァ!!」
もう一人は、さらに一回り分厚い、熊のような体躯の男。なんと彼は、片手で巨大な『生きた牛』の尻尾を掴んで引きずりながら、もう片方の手で大岩を軽々と投げ飛ばし、賊の頭をスイカのように粉砕していた。
「な、なんだあいつら……!? あの馬鹿力、俺とタメ張るんじゃねえか!?」
天下無双の剛腕を誇る張飛ですら、目を丸くして驚愕している。
だが、異常なのは前衛の二人だけではなかった。
村の物見櫓の上。そこには、二人の青年が並んで立っていたのだ。
「ほらほら、右翼が薄くなってるよ。あそこの三人組、もっと右に弓を構えて。……あーあ、乱世ってのは面倒だねぇ。酒が不味くなる」
一人は、ひどく顔色の悪い、病弱そうな青年。彼は戦場のど真ん中だというのに、瓢箪から酒をあおりながら、どこか退屈そうに指先一つで村の自警団を指揮している。
「文句を言うな! 民の命がかかっているのだぞ! ……よし、今だ! 伏せていた丸太を落とせ!!」
もう一人は、粗末な着物ながらも鋭い眼光を放つ、腰に長剣を帯びた任侠肌の青年。彼の的確な指示により、村に侵入しようとした賊が丸太の下敷きになり、見事に撃退されていく。
(……前衛に物理のバケモノが二人、後衛にチート級の指揮官が二人。……まさか、ウソだろ!?)
俺は震える手で、【人物鑑定】を最大出力で起動した。
視界に、四つの黄金のウィンドウが滝のように展開される!
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【氏名】典韋
【武力】96(※主君防衛時に限界突破)
【隠し才能】『悪来の盾』:のちに曹操の筆頭護衛となり、絶体絶命の窮地で主君を逃がすために仁王立ちで絶命する忠義の猛将。
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【氏名】許褚(字:仲康)
【武力】96(※怪力無双)
【隠し才能】『虎痴』:虎をも素手で捻り殺すほどの怪力だが、普段は温厚。典韋亡き後、曹操を生涯守り抜く最強の親衛隊長。
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【氏名】郭嘉(字:奉孝)
【知力】98
【隠し才能】『天眼の鬼謀』:曹操が「私の意図を完全に理解しているのは郭嘉だけだ」と寵愛した、三国志最高峰の天才軍師。相手の心理の隙を突く神算を得意とするが、極度の酒好きで体が弱い。
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【氏名】徐庶(字:元直)
【知力】93(※剣術も嗜む)
【隠し才能】『王佐の義侠』:のちに劉備の最初の本格的な軍師となり、諸葛亮を推挙する男。元は剣客であり、不当に苦しめられる民を見過ごせない熱い義侠心の持ち主。
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「SSRの……四枚抜きの神引きガチャだぁぁぁぁッッ!!!」
俺は馬上から転げ落ちそうになるのを必死で堪えながら、歓喜の絶叫を上げた。
曹操の最強の盾である『典韋』と『許褚』! 曹操の最高頭脳である『郭嘉』! そして我が推しの初期の恩人『徐庶』!
この四人が、なぜか偶然同じ村に居合わせ、共闘している奇跡の空間! これぞ乱世のバグ、いや、天が俺の推し活プロデュースに与えた究極のボーナスステージだ!
「四弟!? どうした、いきなり大声を出して!」
「兄者たち! あの四人、絶対に絶対に逃がしちゃ駄目です! 全員、天下を揺るがすバケモノです!! 全軍、賊を蹴散らしてあの四人を援護しろ!!」
俺の狂ったような号令に、劉備軍四千五百が一斉に山を下りた。
「おおおおッ! 面白え! あの牛引きと双戟の男、俺とどっちが強いか試してやるぜ!」
張飛が嬉しそうに蛇矛を振り回し、関羽と趙雲が両翼から神速の突撃をかける。
天下最強の劉備軍の介入により、数百の賊など数十秒で塵芥のように消し飛んだ。
――戦闘終了後。
賊の残党が逃げ去った村の広場で、劉備軍と、村を守っていた四人の英雄たちが対峙した。
「……助太刀、感謝する。見事な軍の練度。それに、あの賊を一瞬で粉砕した三人の武将……ただ者ではないな」
徐庶が、剣を鞘に収めて劉備に一礼した。
「礼には及ばぬ。俺は劉備、字を玄徳。弱き民が虐げられているのを見過ごすわけにはいかないからな。……あなた方こそ、見事な義侠心と武勇であった」
劉備が温かく微笑むと、その【魅力:99】のオーラが、警戒していた四人をふわりと包み込んだ。
「へへっ、あんた、いい顔してるな! 俺は許褚だ。村の衆を守るために戦ってたんだが、あんたみたいな強い兵隊が来てくれて助かったべ!」
許褚が人懐っこく笑い、隣で典韋が腕を組んで深く頷く。
「俺は典韋だ。玄徳殿とやら、あんたのその真っ直ぐな目……本物の『将』の目だな。俺も嫌いじゃねえ」
(よしよし、武力バカ……いや、純粋な武人二人は、玄徳兄者のオーラで完全に落ちかかっている。問題は――後衛の天才二人だ!)
俺が進み出ると、瓢箪から酒を飲んでいた郭嘉が、ひんやりとした、しかし底なしに深い知性を秘めた目で俺を射抜いた。
「……へえ。反董卓連合軍で、諸侯の目を欺き、華雄を瞬殺し、あの呂布すら退けたという噂の『最強の義勇軍』。……その軍師殿が、こんな田舎で俺たちに何の用かな?」
さすがは郭嘉。すでに俺たちの素性を完全に見抜いている。
「俺は陳凌、字を子雲。……郭奉孝殿、そして徐元直殿。あなた方のような天を統べるほどの才能が、こんな村で燻っているのは世界の損失だ。我が陣営に来て、玄徳殿の大義を手伝っていただきたい」
俺が単刀直入に切り出すと、徐庶は驚いたように目を丸くし、郭嘉は「ふふっ」と薄く笑った。
「……大義、ねえ。天下には袁紹や曹操といった大物がいる。なぜ、俺たちが貴方方につかなければならない?」
「簡単なことです。郭嘉殿、あなたは『型に嵌った凡庸な主君』が大嫌いだろう? あなたのその神速の奇策、予測不能の鬼謀を、100%信じて命を預けられる主君は、天下に曹操か……我が玄徳殿しかいない」
俺は、曹操が後に郭嘉に与えたほどの『絶対の信頼』を、劉備陣営なら今すぐ提供できると提示したのだ。
「それに、徐庶殿。あなたのその剣に誓った『民を救う義侠の心』。……玄徳殿の目を見て、それが嘘だと思うなら、この場を立ち去っても構いません」
俺の言葉に、徐庶は劉備の瞳を真っ直ぐに見つめた。
そこには、私利私欲など一切ない。ただ、泣いている民を救うために命を燃やす、究極の『仁』の光だけが輝いていた。
「……負けたよ」
徐庶が、深々と頭を下げる。
「これほどまでに澄み切った志を持つ方に、出会ったことがない。陳子雲殿の言う通り、私の未熟な知恵でよければ、生涯、玄徳殿のために振るわせていただきたい!」
「あーあ、元直が落ちちゃったか。……まあいい。酒も美味そうだし、なにより、君たちの描く盤面は、曹操のそれよりも『面白そう』だからね」
郭嘉が瓢箪を揺らしながら、悪戯っぽく笑い、許褚と典韋も大声で笑って劉備の前に跪いた。
『ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!』
【システム通知:特大イベント『四星の降臨』を達成!!】
【SSR武将『典韋』『許褚』、SSR軍師『郭嘉』『徐庶』を陣営に引き入れました!】
【天命ポイント20000P(ボーナス限界突破)を獲得!!】
(……勝った。曹操の最強戦力と、劉備の恩人を全部総取りしてやった! これで軍師も武将も、向こう十年は絶対に負けない『最強のチート布陣』の完成だ!!)
俺は、あまりの嬉しさに天を仰ぎ、ガッツポーズを決めた。
天下無双の三将に、悪来と虎痴。
俺、田豊、賈詡に、郭嘉、徐庶の五大軍師。
さらに懐には『伝国璽』。
いよいよ、俺と劉備の本当の「覇道」が、ここから幕を開けるのだ――。




