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三国志オタクの先読み鑑定録 〜桃園の誓い前から英傑たちを総取りして、推しの劉備に天下を獲らせます〜  作者: 盆ちゃん


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第14話:汜水関《しすいかん》の覇権。張遼《ちょうりょう》との密約、天才軍師の鹵獲《ろかく》、そして最強の鬼神《きじん》の影(後半)

第14話:汜水関しすいかんの覇権。張遼ちょうりょうとの密約、天才軍師の鹵獲ろかく、そして最強の鬼神きじんの影(後半)

 華雄かゆうが討ち取られた日の夜。

 連合軍が勝利の美酒に酔いしれ、各陣営から下品な馬鹿騒ぎの声が聞こえてくる中、俺たち劉備りゅうび軍の陣幕には、一切の音を立てずに一人の『客』が招き入れられていた。

「軍師殿。手紙のぬしを、誰の目にも触れずにお連れしやしたぜ」

 管亥かんがいが天幕の入り口をふさぐように立ち、中へ一人の武将を通した。

 身の丈八尺(約184センチ)。無駄のない引き締まった体躯たいくと、おおかみのように鋭くも、深い理知をたたえたひとみを持つ男。

 未来のの筆頭将軍にして、泣く子も黙る合肥がっぴの鬼神――張遼ちょうりょうあざな文遠ぶんえん)である。

「……夜分に失礼する。私が、密書を受け取った張遼だ」

 張遼は警戒を解かぬまま、天幕の奥に座る劉備、そして隣に立つ俺を鋭く見据みすえた。

陳子雲ちんしうんと名乗る軍師殿。あの密書……『董卓とうたく暴政ぼうせいに心を痛めながらも、主君を裏切れぬ不器用な義臣ぎしんよ』という一文。なぜ、一介いっかいの義勇軍が私の胸中をそこまで見透かしている?」

 俺はおうぎをたたみ、静かに頭を下げた。

「俺の『』には、天下のうねりと共に、あなたの持つ高潔こうけつな魂の輝きが見えるからです。張文遠ちょうぶんえん殿、董卓の沈みゆく泥船と運命を共にするのは、天下の損失に他ならない。……どうか、我が主・玄徳げんとく殿の元へ来てくださいませんか」

 張遼は俺の言葉にわずかにまゆを動かしたが、すぐに首を横に振った。

「……買いかぶりには感謝する。だが、私は今、呂布奉先りょふほうせん殿の客将きゃくしょうという身。いかに董卓がにくかろうと、私を拾ってくれた呂布殿を裏切って背を向けることは、己の『義』が許さぬ」

 やはり、義理堅ぎりがたい男だ。ここで簡単に寝返るようなら、のちの名将・張遼ではない。

 だが、ここで劉備りゅうびが静かに立ち上がり、張遼の前に進み出た。

「張遼殿。あなたのその『義』の重さ、痛いほどによくわかる。……無理に今すぐ来いとは言わぬ。だが、これだけは約束してほしい」

 劉備の【魅力:99】のオーラが、月明かりのように天幕を満たす。

「いずれ董卓が倒れ、あなたが真に己の命をけるべき『大義たいぎ』を見失った時。その時は迷わず、俺の元へ来てくれ。俺はいつでも、あなたという稀代きだいの英雄のために、この隣の席を空けて待っている」

 劉備の、あまりにも深く温かい『じん』の眼差まなざし。

 張遼の瞳が大きく揺らぎ、やがて彼は、その場に深く片膝かたひざをついた。

「……劉玄徳りゅうげんとく殿。この張文遠、あなたのその御心みこころ、生涯忘れません。いずれ必ず、この恩義にむくいる時が来るでしょう」

 固い握手を交わし、張遼は闇の中へと消えていった。

『ピコン!』

【システム通知:重要武将『張遼』との《未来の合流フラグ》が完全に成立しました! 天命ポイント2000Pを獲得!】

(よしッ! これで未来の最強騎兵隊長は俺たちのものだ!)

 俺は心の中でガッツポーズを決めながら、明日の行動に向けて思考を切り替えた。

 ――翌朝。

 華雄という絶対の壁を失い、さらに張遼が軍を退しりぞいたことで、董卓軍は汜水関しすいかんを放棄して撤退てったいした。

 もぬけのからとなった巨大な関所せきしょに、袁紹や袁術をはじめとする諸侯の軍勢が、我先にと雪崩なだれれ込む。彼らの目的はただ一つ、城内に残された「金銀財宝の略奪りゃくだつ」だ。

「見苦しいものだな。名門とやらが聞いてあきれるわ」

 関羽かんうが、略奪に走る他陣営の兵たちを見て不快げに鼻を鳴らす。

「兄者たち、俺たちはあんなはした金には目もくれませんよ。俺の【鑑定かんてい】で、本物の『宝』だけをピンポイントで総取そうどりさせてもらいます」

 俺は【物品鑑定】のレーダーを最大出力で展開し、城の地下深くにある隠し金庫を発見した。他陣営が気づかない精巧せいこうな隠し扉の奥には、董卓が洛陽から持ち出していた『宮中の美術品』や『純金の延べ棒』が山のように積まれていた。

「へっへっへ、こいつはすげぇ! 安喜県あんきけんくらがまたデカくなるぜ!」

 張飛ちょうひ青州兵せいしゅうへいたちが、音もなくそれらを自軍の馬車へと運び込んでいく。

 だが、俺の【人物鑑定】レーダーが、地下牢ちかろうのさらに奥の暗がりで、一つの異常な反応をとらえていた。

「……こんなところで、何を隠れているんですか?」

 俺が暗がりに向かって声をかけると、そこからヒョロリとした、ひどく無気力そうな中年男がい出してきた。

「いやぁ、見つかっちゃいましたか。華雄の馬鹿が死んだんで、巻き込まれる前に逃げようと思ったら、あなた方の軍勢が早すぎて隠れるしかなくてねぇ」

 男はヘラヘラと笑いながら頭をいているが、俺の網膜もうまくに映る彼のステータスは、冗談のように狂っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【氏名】賈詡かく(字:文和ぶんわ

【武力】34

【統率】78

【知力】97(天下最高峰の謀将ぼうしょう

【政治】85

【魅力】45

【深層情報・隠し才能】

冷徹れいてつなる毒牙どくが』:己の保身ほしんと生存のためならば、どれほど非道な策でも平然と実行する三国志最恐のダーク・タクト。現在は董卓軍の末端まったんの文官として適当に給料をもらってサボっていたが、董卓の敗北をいち早く予見して逃亡の機会をうかがっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(か、賈詡かく!? 郭嘉かくか諸葛亮しょかつりょうと並ぶ超絶天才・毒舌軍師の賈詡文和かくぶんわが、こんなところでサボってたのかよ!)

 俺は震える声をおさえつけ、彼に向かってとびきりの笑顔を向けた。

「……賈詡殿。あなたのその類稀たぐいまれなる知謀ちぼう、董卓のような豚の元でくさらせておくのはしい。我が劉備軍に来ませんか?」

「おや、私の名を知っているとは。ですが、私は命が惜しいのでね。最前線で戦うような危険な陣営はごめんこうむりたいのですが」

「ご安心を。我が軍は後方に強固な領地を持ち、兵糧へいろうは3年分。そして何より――」

 俺は、背後に控える関羽、張飛、趙雲を親指で指し示した。

「この天下最強の武将たちが、あなたをかすり傷一つ負わせず守り抜きます。……己の知略を、最も『安全な特等席』で振るってみたくはありませんか?」

 賈詡は、三人の武将の異常な殺気と覇気はきを見て、そして俺の目の中にある「同類(策士)の光」を見て、ニヤリと底意地そこいじの悪い笑みを浮かべた。

「……なるほど。生存確率を計算するなら、間違いなくあなた方の陣営が最高値だ。よろしい、この賈文和、少々お手伝いいたしましょう」

『ピコン!』

【システム通知:天才謀将『賈詡かく』を陣営に引き入れました。天命ポイント4000Pを獲得!】

(よしッ! 田豊でんぽう先生の内政チートに加えて、賈詡の毒の策まで手に入った! 軍師陣もこれで最強だ!)

 戦利品も人材も総取りし、俺が有頂天うちょうてんになっていた、その瞬間だった。

『ピィィィィィィィィンッ!!!!』

 突然、俺の脳内のシステムが、これまで聞いたこともないような甲高かんだか警告音アラートを鳴らし始めた。

 視界が真っ赤に染まり、警告のウィンドウが滝のように流れてくる。

【警告! 警告! 測定不能エラーの武力値を検知!】

【広域スキャン範囲内(虎牢関ころうかん方面)より、破格はかくの戦力が接近中!】

「……な、なんだこの反応は……!?」

 俺は思わずその場にくずれ落ちそうになり、あわてて城壁へと駆け上がった。

 関羽、張飛、趙雲、そして劉備も、ただならぬ空気を察して俺の後に続く。

 汜水関のさらに奥、洛陽の最終防衛線である『虎牢関ころうかん』。

 そこから、空を黒く染め上げるような、禍々《まがまが》しいまでのすさまじい『闘気とうき』が立ちのぼっているのが見えた。距離など関係ない。そこに『極限の死』が存在していることが、肌を刺すようなビリビリとした殺気となって伝わってくるのだ。

四弟してい……あれは、なんだ?」

 冷や汗を流しながら、張飛が蛇矛だぼうを握る手に力を込める。

 関羽も青龍偃月刀を構え、趙雲のすずしげな顔からも笑みが消え去っていた。

 俺は、震える声でシステムの【解析結果】を読み上げた。

「……来ます。華雄の死に激怒した董卓が、ついに『最強の鬼神』を解き放った」

 俺は、三人の無双の兄たちを振り返った。

「関羽兄者の武力99。張飛兄者の98。趙雲の96。……あなた方は間違いなく天下最強だ。だが、次に来る奴だけは次元が違う。システムの限界値【100】をブチ破る、文字通りのバケモノです」

 ――呂布奉先りょふほうせん

 人中に呂布あり、馬中に赤兎せきとあり。

 三国志において、ただ一人だけ別格の暴力として君臨くんりんする戦神いくさがみ

「兄者たち、趙雲。……ここから先が、本当の『死闘』になります」

 俺の言葉に、三人の豪傑ごうけつたちは顔を見合わせ――そして、同時に獰猛どうもうな笑みを浮かべた。

「上等だ! 俺の蛇矛が泣いて喜んでるぜ!」

「武力の限界値とやら……この青龍のやいばで測ってやろう」

「我がやり主君しゅくんの道をはばむ鬼神なれば、必ずやつらぬいてみせます」

 反董卓連合軍の真のクライマックス。

 歴史に名高い『虎牢関ころうかんの戦い』が、最悪の鬼神の咆哮ほうこうと共に幕を開けようとしていた。

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