46. 魔王を倒した勇者は最後に頭がぱーになりました
飼育係は女神を汚染させる事がある。
ミラが教えてくれた最大の情報は、そのことかもね。リーザちゃんが、滅びの女神になってしまわないように、私たちリーザ組は、もっと配慮するべきなのだわ。巫女のデスルーレットとか、させないようにしないと。
コルサちゃんがダモンに立った3日後、彼女の宣言した期限に合わせたかのように、リーザちゃんは起きた。今は、うちの訪問客の相手をしている。勝手に。
私が帰って来ていると聞いて、ターマの商人が相談に来ているのだ。もっとも、相談という体裁で、業務提携などの思惑があるのでしょうけど。
「お前は、独裁は良くないと思っておるのか?」
「ターマの国も、独裁者のせいで滅びかけたことがあるやないですか」
「おまえはあほか?」
「え?」
「独裁にも、メリットがあるのじゃ。それは何じゃと思う」
「…」
「もう帰れ、お前。ワワンサキに行って、善良な庶民になれ」
リーザちゃんに罵倒された相談客は、アンに追い立てられて帰って行った。
「独裁のメリットは分かるか?」
次に来た客にも同じ事を聞いている。リーザ組が独裁政治だと批判されて、むかついているのね。
「意思決定の速さ、です」
今度の客は即答した。ナニワ銀行の頭取にして、カステーラ帝国の初代女王、ヤード・バーズ。彼女は、カステーラ商会の丁稚だった。カステーラ商会も、独裁体制だった。
「致命的なデメリットは、無能がトップになると組織全体が死に至ること、です」
その通りだろう。カステーラ商会の黒歴史だ。
「さすがは、カステーラ商会の生え抜きじゃ。クリームちゃんがいじめ抜いただけの事はあるのう」
ヤードは、私には相談することなく帰って行った。何か、得るものがあったのかしら?
リーザちゃんは途中で飽きたのだろう、カステラに夢中で、ヤードの話を聞いてもいなかったと思うのだけど。
「引退したご老公ごっこも飽きたのじゃ」
国家の要職相手に遊ばないで欲しいのだけど。
「おやぶーん」
王女達が帰ってきた。コルサちゃんは部屋に入るなり、駆け出して、リーザちゃんの隣に座った。
「おねえちゃんだれ?」
「え?」
また始まった…。
リーザちゃんが起きた時、最初に言ったことが。
「あれ…?ヤキトリは…?」
この場に居ない者の名を口にするので、アンまでもが嫉妬した。私たちは殆ど寝ずに、面倒を見ていたのに。この子、すぐに布団を跳ね飛ばすのだもの。ドラちゃんとシズちゃんが来てからは、ずっと上に乗っかっていたので、やらなくなったけど。
「なんだ…夢か…食べりゃよかった…」
半分寝言で、食べ物の方だったのだけど。次に言ったのが。
「おばちゃん達だれ?」
だった。
「コルサちゃん。これは、エリアなにがしごっこだそうだから。叩いていいわよ」
「え?なのよ?」
壮絶な戦いの末、魔王を倒した勇者は、絶命寸前で助かるのだけど。勇者になってからの記憶を失っていた。そういうお話なんだそう。いいお話だと思うけど、このタイミングで、そういうごっこ遊びをするのは、実にたちが悪い。
「い、いたっ!痛いのじゃー」
「なのよ!」
やはり、リーザちゃんは弱くなっている。コルサちゃんに、すんなり叩かれている。
「ありゃ?おやびん弱くなってないですかー?」
「わしは0歳児じゃ。ダモン王女なぞに勝てるわけないじゃろ」
私では敵わないだろうけど、コルサちゃんが抑えられる内に、再教育をしなきゃね。
「あー、親分。早速なんだけど。神殿の女神像なんだが」
「コピーは無理なんじゃろ?」
「そうなんだよ。どうするかい?」
「オリジナルを作りぁあええ。ノヴィちゃんにお願いするのじゃ」
「あ、ああ。そうだな、そうしよう」
「がってんしょうちのすけー」
ハナちゃんもファズも、暗い顔して思いつめた様子だったのに、リーザちゃんの一言で解決してしまったようだ。リーザ組は、独裁かも知れなけれど、トップは異能だし、周りには黙っていう事を聞くような奴なんて居ないのだから。大丈夫よ。
「また適当なこといって。ノヴィちゃん、魔女教徒かも知れないじゃないの」
「おお、そうじゃった。あの紙芝居はそんな内容じゃったな」
「彼女なら、団子屋に居るから。行きましょ」
「そうじゃな!おしるこもうまいからの」
即断即決は、リーザちゃんの得意とするところよ。深く考えてないだけなんでしょうけど。




