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31. その道はどこかへと続いているのですか?

 私達、近衛騎士三銃士が発見した時、巫女達は瀕死の状態でした。


 山菜を採りに入った森の中に、かろうじて人の形に見えるものが転がっています。

 17歳の乙女とは思えない、ちょっと描写に困るような有様で、それでも尚、彼女はビクンビクンッと震えながらも、前に進もうとしています。

 山の獣達も、気味悪がって近付きませんね。

 私達、近衛騎士は、王女様をお守りするためなら、命を投げうつ覚悟ですが、ここまでは無理かも知れません。


「レタス、あなたはアン隊長を呼んできて」

「トメィトは、ここで待機よ」

「ベーコン、君はどうする?」

「他に居ないか、麓へ向かって探索してみるわ」


 巫女達は、全部で20人居た。ナマタ村の入り口から、1人づつ倒れていました。きっと、「ここは私に任せて、みんなは先に行くんだっ!」を、やったのですね。私達、近衛騎士は1人でも国を盗れる程なので、そんなのやったことありません。ちょっと、うらやましいです。


 巫女達は、運ぶと崩れそうな状態でしたけど、近衛騎士総出で、なんとか悪魔の湯まで運んで、風呂に沈めました。悪魔の湯の効能なら、心肺停止状態からでも蘇生できるはずです。


 悪魔の湯で奇跡の復活を遂げた巫女達は、熊の丸焼きを食べています。


「ああっ、なんておいしんだっ…」

「こんなに、おいしいご飯は、いつぶりだろうか」

「あぁ…神社のメシはまずかった…」

「あぁ…まずかった」


 彼女達が居たのは神社ではなく刑務所か病院だったのでしょうか?ハラハラと涙を流しながら、焼きたてジューシーな熊肉を食べています。近衛騎士に、まずいメシなんか食べさせたら殺されちゃいますよ。敬愛するアンお姉さまは「つぶあんのぜんざいが食べたい」という動機で、ターマに亡命した程です。それだけ、食事は大事なものです。リーザ様の教義にもあります。


・おいしいご飯

・あったかいお風呂

・ぬくぬくのオフトン


 それが、三大神器である、と。これをないがしろにする者は死ね、と。


 彼女達は、リーザ様に会うために来たと言っています。リーザ様に、ご挨拶していただかないと。


「えー、嫌じゃー。リーザちゃん、ここでご本読んでゆぅー」


 幼女に、このように拒否されては、難しいですね。何を読んでいるのかといえば、絵本です。絵本は印刷が出来ませんので、とても高価な一点ものです。魔法少女メルリ、だそうです。知りませんね、それ。


 その内、いらっしゃるでしょう。リーザ様は、臣下にだけは非常におやさしいお方です。巫女達の服も、ちゃんと用意されていました。まるで、彼女達がここへ来るのを知っていたかのように。いいえ、ご存じだったのでしょうね。だって、女神じゃもん、ね。


「なあ、なんであいつらの巫女服があったんだ?」

「…我らが、頼まれて、ここに来るときに、買ってきた…」


 リーザ様の依頼で、堕天使達をお迎えに行った時に、私も買い物に付き合いました。


「労働力が足りないから、ニートを雇うのじゃー、と言っていたわよ。口封じに攫うとも言っていたけど」

「あぁ、神社で何かやらかしたんだっけ」

「なんだ、偶然かい…女神に予知能力なんてあったら、困るからね…よかったよ」


 どうであれ、女神様の起こした奇跡には違いありません。


「命知らずの巫女共は、おまえらかー?命のを捨てる覚悟はできてるのかーーー!」

「うぉおおおおおおお」

「お前らの、命を神にささげろーーーーー!」

「いぇえええええ」


 ロックンロールクレイジーナイトのヤキトリちゃんです。彼女は広報担当なんだそうです。彼女の広報活動は、ロックステージにしか見えませんね。


「おやぶん、どぞー」


 リーザ様がやって来ました。


「もうおまえらは、人の世には戻れないのじゃ。ここで、ほどほどに働くのじゃ。風呂に入って、おいしいご飯を食べて、沢山寝ろ、週に3日は休むのじゃ」


「「「「はいっ」」」」


 狂信者共が、もっと騒ぐのかと思ったら、行儀よく返事をしています。意外ですね。おしりから尻尾のように内蔵をぶら下げながらも、リーザ様の名を呼ばれていたくらいなのに。

 騒いだ場合は、皆殺しにするのじゃ、と言われていたので、助かりました。同じ17歳の乙女達を手にかけたくはないですから。

 実際には、皆殺しにはしないと思いますけどね。飼い殺しにはしたでしょうけど。


「リーザちゃん、たこ焼きがいいのじゃあ」


 残念ですが、たこ焼きはありません。ここは山の中なので、熊や猪は現地調達出来ますが、たこは無理です。あきらめて、熊肉を食べて下さい、私が掘った山芋もあります。


「彼女達に何をして貰うつもりなんだ?」

「建築資材の手配とか、職人の手配とかかのう?この村に家を建ててもうらのじゃ。近衛騎士の建てる家は、前線基地みたいで、味気ないじゃろ?」


 それはそうです。私達は兵站は出来ても、建築は出来ません。大工ではありません。騎士です。もちはもちやです。


「くくっ…、設計は我らに任せるがよい…熊肉は高級珍味だ…代償として十分だ…」


 リーザ組の人材が充実して参りました。そろそろリーザ様が、抜け出していたずらを始める頃だから、注意するようにと、クリーム様から厳命されております。

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