表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/53

30. 狂信者共が見た光

 私達は、神社の境内で途方に暮れていた。


 テロリストにコルサ王女様を誘拐され、神社の神馬を奪われてしまったのだ。

 配属先のエタナル学園は消失し、再建も不可能だと言う。神社には、お金がないのだ。こういうときは、私達若い巫女から切られていく。この失態で、失業は確定的だ。


 この国では、失業補償も就労支援も充実している。でも、私達の信ずる女神リーザ様は、この国では邪神扱い。リーザ様にお仕えする巫女である私達には、その恩恵は無い。邪教の経営する学園が、トップの教育機関であるような、このヘンテコな国。私達は、生まれる国を間違えたのかも。


 リーザ様を国神として崇めるダモン王国に生まれていれば…、革命戦争で、死んでいたかも知れないのね…。この世はままならない。ああ、リーザ様、はやく人類をふたたび滅ぼして下さい。

 

 私達は、リーザ様の加護の元にあった。奇跡が起きたのだ。

 2日後の朝、神馬が神社に帰ってきた。車内には、古代ドラゴン金貨と、謎の書き置き。そして「りーざちゃんのしんわ」と書かれた紙切れが1枚。


 あのテロリストは、地上に顕現されたリーザ様だったのだ。

 神社の伝承にある「紺色の衣、黄色い帽子、黄色い鞄」の通りの、ぱっとしない貧相な幼女だったもの。それに、わしはリーザなのじゃ、と名乗られていた。


 リーザ様、あなたは、一体どこに居られるのですか。


 ラジオが緊急生放送で、神聖ダモン王国の誕生を告げていた。

 ダモンの地に、女神リーザ様が御光臨遊ばされて、国の騒動を治めたのだと言う。

 はやく、リーザ様のもとに駆けつけなければ。


 ああ、でも困ったわ。ダモンに行くには、悪魔の山を越えなければならない。悪魔ですら越えられぬ、あの山を。

 ああ、リーザ様、私達迷える巫女達に、どうかお導きを。


 天啓が下った。

 ラジオを使って、コルサ王女様から、その天啓は告げられた。


「りーざぐみはー、りーざやまにー、くにをー、つくったー、のじゃー…ガタガタ、ゴトッ…ちょっと、かわりなさい、あんたがやると日が暮れるわよっ…あー、ちんのちんちんがー…ブツッ」


 国を作った?リーザ山?どういうこと!?私達、失業間近の巫女達は、ラジオに釘付けになった。


「へーい!ラジオの前のみんな、今日もロックしてるかーい?リーザ組は最高にロックンロールだぜ!命の惜しい子猫ちゃんは、ダモンの光溢れる城には近づくんじゃないぜ?ベイビー、じゃあ、まったねー…ブツッ…以上で、女神リーザ様の玉音放送を終わります」


 一体、何が起きているの?最後に喋っていた巻き舌の軽薄そうな女は誰なの?


「死んでもいいやつは、ここに集まれやーーーー!!」

「おおおーーーー!!」


 私達巫女は、リーザ様の下僕。リーザ様が地上に居られるのであれば、命を投げうってでも、その元に行かねばならない。


「死にたい奴はこれだけかーー!!」


 失業確定の若い巫女達が、20人集まった。全員17歳だ。この先の人生の方がずっと長いけれども。女神様に仕えずして、何が巫女か!


「悪魔の森へ行きたいかーー!」

「おおおおーーーーー!!」


 リーザ様は悪魔の山に居られる。いいえ、リーザ山だったわね。あの山の悪魔の森と言われる場所に城を建て、そこをドラゴン組という国にされたそうだ。悪魔ですら入る事は叶わぬと言われる森へ、私達は行く。


 オタマ市のノボルトンまでは、ニャンブー線で向かった。貨物車両しか走っていない、その鉄道に人は乗れない。私達は、「私は、豚です!ぶひー!」と自ら申請して、家畜として積んでもらった。人としての尊厳など捨てた。私達は、リーザ様の下僕なのだから。


 牛の方が良かったかしら?もー!でも、私達みんなすっとんとんだし。


 ノボルトンからは、山の麓の宿場町であるナマタ村まで乗り合い馬車で進んだ。


 さあ、ここからは、命がけよ。


 たとえ、死んでも辿り着く。


 女神様に仕えずして、何が巫女か!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ