20. 女神の流儀でテロを起こすのじゃ
露天風呂は、テロの被害を受けておらず、営業しておった。テロリストと言えども、お風呂は破壊できなかったのじゃ。
風呂の脱衣所には、巫女さんの服が大量にある。
今、露天風呂には、大量の巫女さんが全裸でひしめき合っているのだな。
ここには、露天風呂以外に、サウナや水風呂もある。スーパー銭湯じゃな。エタナル教は、オフロスキーなのじゃ。
「ひやいー、のよー」
なんで、いきなり水風呂入ってるんだ、コルサちゃんは。
「いやー、まじ焦ったわー。焼き討ちの時、ここに居てよかったわー」
「だねー。外道神父のやつは、ほんとにくたばってればいいのに」
「それな。あいつまじごみかす」
「でも、うちらの職場なくなっちゃったねー」
「うちら全員巫女に戻ったけど、この神社もう金ないぞ?」
「腐れ神父が、ガラクタ国王と組んで、経費を使い込んでいたという噂だ」
「え?まじでー?学園再建も無理ぽんぽん?」
「うちらニートまっしぐらじゃん」
「うんこ神父に学園の理事まで任せるからだよ」
「噂と言えば、初代巫女様が御光臨遊ばれたって、まじ?」
「まじまじ。私見たもん」
「はんぱねーっすわー初代様ー」
「まじっくやばす」
うるさいし、口悪いな、この巫女共。
こいつらエタナル学園の元職員のようじゃな。エタナル学園は、その名の通り、エタナル神社が経営しておったからな。
やつらの会話を聞く限り、神父と国王は殺されて当然のクズのようじゃが。テロの動機と関係あるんかのう。
「とんでもなく、うるさかったのう。」
巫女共が上がって行ったので、やっと会話出来るわ。
「なのよー」
コルサちゃんは、巫女共が上がるのと入れ替わりで水風呂から移動してきた。さすがのダモン最強生物も、唇がちょっと色変わってるぞ。
「学園には、殿下と内偵に来たことがありまして」
「しょこくまんゆうなのよー」
内偵という建前で公費を使って遊びに来たのじゃな。そして、何かやらかして、巫女から隠れておったのか。
「テロの背景らしい話をしていましたね」
キナコの言う通り、収穫っぽいものはあった。あったのじゃがー。
「行く学校が無くなったじゃろ?」
「もう調査する必要ないですかね」
「なのよー」
「撤収しようか?」
「じゃのー」
学校に行くためにアレコレやっておったのだ。それが無くなったのなら仕切り直しじゃろ?
というわけで、わしらは風呂から上がって帰ろうとしたのじゃがー。
「コルサ様だー!コルサ様が出たぞー!捕獲しろー!」
風呂上がりの牛乳を飲んでいたら、巫女共が騒ぎ出した。
「生け捕りだぞっ!殺すなよっ!」
「がってんしょうちのすけー」
「コルサ様ー!!」
「コルサ様って、誰さ?」
「あんた新人?とにかく、追って」
「やっちまいなー!」
コルサちゃん、何かやらかしたんだ。
「にげ、るのよー、うーわー」
コルサちゃんが珍しく焦ってるな。逃げるのじゃー。
わしも2代目とはいえ、ここの祭り神じゃし。コルサとキノコも、同じ女神を推す巫女相手に暴れるわけにもいかず、あっさり捕まってしもうた。
宴会場みたいな大広間で、コルサちゃんが、巫女共に取り囲まれている。何が始まったのかと言えば、宴会だ。おでんパーティだ。
「あ、あちゅ、ぅわっちゅいっ」
コルサちゃんは、熱々のちくわを押し付けられて、泣いている。
「なんてかわいいの」
「おぬしも、わかるか?」
「もう逃がすなよ」
「メイド服も、かわいいね」
「一生、飼い殺せ」
大人気じゃのー。
ダモン王国では、王女様はダモン国民のスーパーアイドルだというが、なんで、ここでもアイドルになっておるのじゃ?
「コルサ様の、あの一撃、今思い出しても震えますわ」
「あれな。あれは、やばかった」
「まじっくやばす」
「何があったの?」
「神父を一発でのした。殺せばよかったのに」
「はんぱねーっすわー王女様ー」
王女様って、ここでも身バレしとんな。
「あの腐れ神父。あいつが来てからメシがマズくなった」
「あれは、むしょのめしよりひどかった」
「ああ、まずかった」
「病院食の方が、遥かにうまい」
食べ物の恨みか。そりゃ殺されても仕方ないのう。神父は国王と組んで経費を使い込んでおったそうじゃが、巫女の食費にまで手をつけておったのか。
コルサちゃんは、神父に一撃を食らわせた事で、巫女共のアイドルとなったんじゃろうな。少々、可愛がりが過ぎるようじゃが。
「おやぶーん、たすけてー」
わしの従者が助けを求めておる。やっちまうか。女神の流儀で。
わしらは、神社の神馬を強奪して逃げた。
神馬と言っても、痛車じゃ。ユニコーンと巫女のイラストの痛車。
わし、この神社の祭り神じゃろ?2代目じゃけど。
じゃったら、この神社のものは、わしのもんじゃろ。決して、これは強盗ではない。
「テロリストが、王女様を攫って逃げたぞー!」
あれ?