18. お前の命の価値は、お前が決めろ
堕天使達の家で、うだうだしている内に、すっかり晩御飯の時間になったので、今日もみんなで鍋なのじゃー。マンション1階の定食屋だと、住人の分の食事代は家賃に込みなのじゃが、4人分までじゃそうで、支払いが必要じゃった。
どうとでも誤魔化せそうな気がするが、女将さんが客の顔をすべて覚えているので、不正は出来ないのじゃった。原始的なキャッシュレス決済なのじゃ。
どのみち7人であの部屋は狭い。うち5人が幼女とはいえ、子供部屋のベッドは2段ベッドが2つなので、ひとつ足りない。クリームちゃんがわしと一緒に寝るとか言い出したので、別の空き部屋に越した。
同じく、家具も調度品も揃っていたので、ぱんつひとつで引っ越せた。前の部屋の家賃は、5か月分前払いじゃったので、2部屋使える。やっていることは丸っきり貴族なのじゃ。貴族成りが嫌で、抵抗しておるというのにね。
コルサ王女の言う事は意味不明なので、キナコが通訳してくれる。
「姉さんは、殿下の言葉が理解できるのですか?」
アンが当然の疑問を口にする。王女様は、はい、いいえくらいしか発言の意図が読み取れない。ぽやーっと喋るからね。
「私にもさっぱり分かりませんよ。こんな、ぽんこつ幼女の言葉なんて」
コルサちゃんにとってキナコは、姉か母親同然らしく、主君に対する言葉とは、とても思えないことを言う従者を、一切責めたりはしない。クリームとアンもそうじゃが、主従には本人達にしか分からない絆があるようじゃ。
「近衛騎士隊長である私の言葉は、王女の発言を代理出来ますので」
本当に必要な時には、王女様もすらすらと喋るらしい。挙動は、ぽんこつ気味だが、人類最強の戦闘力を持ち、王女としての帝王学も叩きこまれた才女なのだ。
キナコとアンは、2年前に生き別れになったそうで、そこには壮大な物語があったりなかったりするらしい。その内、暇な時にでも聞いてみよう。
食事中に他に分かった事は、コルサちゃんも、白菜はくたくた派、ということだけじゃった。
食事後は、みんなでお風呂へ。そこで、やっと財宝の処遇について、会話が出来た。
「財宝は、すべて女神様に献上するそうです。復活の代償だそうです」
「なのよー」
コルサちゃんは、復活出来たのが、女神であるわしの力じゃと言って、譲らない。さっき、堕天使の話聞いてたよね?
「ダモン王国では、女神リーザ様は、復活の象徴ともされていますので。無理もないかと」
「財宝が、王女様の復活の代償なのは分かったわ。でも、従者の分は?それもセットなのかしら?」
クリームちゃんが、何やら恐ろしい事を言い始めた。
「えー、え?」
「王女様の命の値段なのよ?1人復活させたら、もう1人は無料です!みたいなので、いいの?」
「いくらなのよ?」
「あなたの命の値段は、あなたが決めなさい」
ターマの女怪獣、ダモンの王女様を追い詰めるなよ。
「まあ、待つのじゃ。わしが値段を決めるのはどうじゃろうか?」
「女神様の言い値で買うと、おっしゃっています」
「なのよー」
で、あれば。こいつらは今のわしらの作戦の切り札なのじゃ。どうしても差し押さえねばならぬ。
「王女様と近衛騎士隊長の命の値段は同じ。どちらも財宝13個分じゃ」
「なのよ」
「リーザ様、あれの市場価値は2億円程ですかね。今すぐは無理ですが、いつか必ずお支払いします」
「姉さんの分は、私も払います!」
「あー、待つのじゃ。財宝13個は、キナコの分として受け取ったのじゃ。先にわしに会ったのがキナコじゃからな、先入れ後出しになってしもうたが」
「わたしのぶんはー、からだでおしはらいしますー」
「いずれにしても、私もお金を作りますので」
よし、商談、いや奴隷契約成立じゃ。なにせ、女神のやることじゃからなあ。すまんのう。
「あんた達、ほんとにいいの?あの財宝は300億円の値がついたのよ」
クリームちゃん、タイミングを見計らっておったな。ターマの女天使と二つ名を変えるがよかろう。
「な、なのよ?」
「メイドの平均年収は、この国では125万円じゃ。300億円払い終わるまで、2万4千年かかるのう。2人居るから半分にして1万2千年間、わしのお世話を頼むのじゃ」
「この子達は悪魔の湯と、悪魔の実の果汁に漬け込まれたんでしょ?きっともう不老不死になっているわね。1万2千年間付き合ってくれるわよ。リーザちゃんの飼育係は、王女様だったのね」
「なのよー?」
キナコはショックでのぼせたが、コルサ王女は耐えた。さすが、王女様なのじゃ。くたくた派なのじゃ。




